夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

コロナ危機「世界各国のワクチン接種は、その国の政治的経済的な力を見せつける」

2021-02-21 10:58:21 | 社会
 ワクチン接種の加速
世界でコロナワクチン接種が加速している。
NHK 2月18日
 しかし今のところ、接種が上図が示すように、進んでいるのは、欧米、中国、ロシア、インド、中東の一部だけである。これらは、イスラエルを除き、ワクチン製造国(地域)であるので、自国に先に供給するのは自然なこととも思われる(インドも自前でワクチンを製造している)。また、これらの国では、中国を除き、あまりに多くの犠牲者を出し、今も感染の脅威が続き、ロックダウン等の行動制限が厳しく行われているので、ワクチン投与により、いち早く感染を抑え込むためだと考えられる。しかし、一見して分かるのは、これらの国は、所謂、国力の大きな国、つまり経済的、政治的、軍事的な力の大きな国でもある。

 イスラエルが世界で5番目の速さで接種を実施しているのが、その典型である。イスラエルは、悪く言えば、カネの力でワクチンを買い溜めし、ネタヤエフ政権の権力基盤の強さからの方針即決と、欧米のユダヤ人ネットワークから大手製薬会社への強力なコネクションを使うという政治力が実を結んだ形だ。

Our World in Data 2月19日
 上の表は2月18日現在の100万人当たりの死者数である。概して、死者数が多い国が、ワクチン接種を急いでいるのが分かる。表にはないが、イスラエルも、100万人当たり619人の死者数を出しており、日本の10倍である。

ワクチン争奪戦
しかし、世界各国での接種状況はかなり偏っている。  
 国連のアントニオ・グテーレス事務総長 が2月18日、「世界で供給されている新型コロナウイルスワクチンのうち、75%がわずか10カ国で接種されていて、130カ国以上は1回目の接種も受けられない状況にある 」(CNN)と言ったとおり、アフリカや東南アジア、南米では供給が遅れている。


 BBC2月14日
 上図は供給されている国の数である。ワクチンは、中・ロ製は僅かであり、ファースなど欧米製薬会社が9割以上の供給を行っているのが分かる。明らかに、供給は、アメリカファースト、EU・英国ファーストであり、それにアラブの裕福な国などが買い溜めに走っているという状況が見える。

中国の「ワクチン外交」 
 そこで、遅れているアフリカ、東南アジア、南米に対して、中国はワクチンを無償供与を始めた。それを、西側メディアは「ワクチン外交」と呼ぶが、それは、有名人が貧困層に多大な寄付をすることを「売名行為」と非難することに等しい。自分は何もしないで、困っている人を支援する人たちを非難する、その時に使われるものである。
 
 最近、供給不足のEUも、ロシアのスプートニクVを使い始めた。また、中国シノ  ヴァックは、ブラジルで数十万人に投与されたが、大きな問題はない。西側は、中・ロのワクチンは安全性・有効性に問題があると叫んできたが、最近では、問題がないことがだんだん証明されてきた形だ。
 
 2月20日になってG7は、国際的な接種事業「COVAX」 にワクチン供与を表明したが、自国が供給不足なのに、他国に大量供給することなどできそうもなく、「かっこつけ」だけで終わるだろう。

日本は政治力弱小国なので、遅れるしかない
 逆に、OECD加盟国で比較的裕福な国で、ワクチン接種が遅れている国がある。日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドである。韓国、オーストラリアは、死者数が人口比で日本の半分、ニュージーランドは、日本の10分の1であり、対策としてワクチンへの取り組みの優先順位が低かったと思われるが、それでも韓国では、この遅れが政治問題化し、政権批判が大きくなっている。
 
 問題なのは、日本である。日本は死者数も東アジア・オセアニアと比較して多く、感染確認数も減少したとはいえ、すぐに拡大する恐れは大きいからだ。そもそも、日本政府は、GoToなど感染拡大策を選択し、予防策は後回しにしてきたのだ。感染を抑え込む「政治力」は極めて貧弱なのである。
 
 過去に、テレビは「日本は凄い」という番組を数多く流してきたが、コロナワクチンすら自国で製造できないでいる。「日本は凄い」のは、はるか昔なのである。科学の基礎研究をないがしろにし、公的研究部門と医薬品メーカーを弱体化してきたせいである。ワクチン争奪戦が起きている世界で、日本政府の政治力では、欧米の「お流れを」待つしかないだろう。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする