ハーグ・グループ
グローバル・サウスの代表9ヶ国が、1月31日、パレスチナ人を守るため、オランダのハーグで、グループを設立した。その名もハーグ・グループである。その目的は、国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)の判決を擁護し支持する ことである。
それらの国は、ベリーズ、ボリビア、コロンビア、キューバ、ホンジュラス、マレーシア、ナミビア、セネガル及び南アフリカで、アフリカ4か国、中・南米4か国、アジア1か国からなる。かねてから、欧米に異を唱えてきたアフリカや中・南米の国々に加え、全方位外交を主軸とするASEANの中で、成長著しいマレーシアが加わったことの意義は大きい。
ハーグ・グループの共同声明は「国際連合憲章に定められた目的及び原則、並びに国際連合憲章が全ての人々に保障する自己決定権を含む不可侵の権利を擁護する全ての国の責任に基づき、イスラエル、占領国によるガザ及びパレスチナ占領地の残りの地域におけるパレスチナ人に対する大量虐殺行為により失われた生命、生計、コミュニティ及び文化遺産を深く悲しみ、このような国際犯罪を前にして受動的であり続けることを拒否し、イスラエルによるパレスチナ国家の占領を終わらせる義務を遵守することを決意し、パレスチナの独立国家パレスチナの権利を含む、パレスチナ人民の奪うことのできない自己決定権の実現を支持する」としている。
言うまでもなく、この9ヶ国は、西側の二重基準を批判したもので、西側にとって「都合の悪い」ものに属する。したがって、ほとんどの西側メディアは、これが設立されたこと自体をニュースにせず、例外的に報じたのは英紙ガーディアンぐらいである。
崩壊寸前の国際秩序
第二次世界大戦後、戦勝国である欧米とソ連は、国連を軸とした国際秩序を形成してきた。国際法の概念も、欧米で作られたと言ってもいい。国連本部がアメリカのニューヨークにあり、スイスのジュネーブに国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの多くの国連機関が置かれているのも、それを明らかにしている。
しかし、パレスチナ問題に関する限り、その後の欧米の国連と国際法への無視・違反は目に余る。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、パレスチナ人民連帯国際デー(11月29日)にメッセージを寄せ、「国際司法裁判所と総会で確認されたように、パレスチナ領域の違法な占領に終止符を打つこと。そして、国際法と関連する国連決議に沿って、イスラエルとパレスチナが平和と安全の内に共存し、エルサレムを両国家の首都とする2国家共存による解決に向けた不可逆的な前進」を、加盟各国に求めた。
ネタニヤフのイスラエル政府は、2国家共存を拒否し、パレスチナ人へのジェノサイドを続け、この地でのパレスチナ人を退去させ、イスラエル国家のみの繁栄を目指している。 グレーテスは、上記のメッセージで、「1年余りが経過する中でガザは廃墟と化し、4万3,000人を超えるパレスチナ人が死亡したと伝えられ、その大半が女性や子どもたちです。そして人道危機が日増しに悪化しています。これは恐ろしいことであり、許しがたいことです。一方で、東エルサレムを含むヨルダン川西岸被占領地区では、イスラエルによる軍事作戦、入植地の拡大、立ち退き、建物破壊、入植者による暴力や併合の脅しが、さらなる苦痛と不公正をもたらしている。」と述べている
この国際法も国連決議も無視し続けるイスラエルを、欧米諸国の政府、多くの主要マスメディア、一部の左派(フランス「不服従のフランス」、ドイツ左派党、英国元労働党党首ジェルミー・コービンを中心とした労働党を除名された左派、アメリカ民主党左派・民主社会党など)を除いた極右から中道左派勢力のすべてが無条件に擁護しているのである。欧米政府は、イスラエルの蛮行を黙認するどころか、軍事支援によって虐殺に使用される兵器を未だに供与し続けているのである。
イスラエル政府を批判すれば、反ユダヤ主義と非難される。現に、欧米では若者、左派系労組を中心に大規模な親パレスチナデモがたびたび行われるが、それらは禁止され、警察権力によって弾圧される。ホロコーストを行ったドイツでは、イスラエル政府によるジェノサイドは見てみないふりをし、それはフランスでも英国でも同様で、、かつてのユダヤ人への迫害から、イスラエル政府が何をしようとイスラエル政府への批判はタブーであり、一切封印されている。アメリカにいたっては、バイデン政権ですら、イスラエル擁護を基本としていたが、共和党のトランプ政権は、国連パレスチナ救援機関UNRWAへの資金を停止し、 アメリカ議会下院は9日、国際刑事裁判所 ICCに制裁を科す法案を可決した(1月30日に、民主党左派が多い上院で否決)ほどである。
多くの欧米人にとっては、極右勢力を除き、移民への人権は、最大限重視されるが、パレスチナ人の人権は、まったくないに等しい。
このような状況の中で、9ヶ国は国連中心の国際秩序の維持を訴えたのである。それは、ソ連なきロシアや資本主義システムを導入した中国が極めて恣意的な国際法の運用を行う状況で、国連中心の国際秩序を築き上げてきた欧米自らが、その秩序を破壊しようとしているからである。
愚かにも、アメリカ追随の外交方針しか持たない自公政権の首相の石破茂が、イスラエルのネタニヤフの次にトランプと首脳会談を行い、その会談を自慢げに発表する姿は、あたかも尻尾を振って小躍りする犬のようである。日本がアジアの一員としての認識が少しでもあれば、マレーシア政府のように行動すべきであるのは、当然の論理なのだが。
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