夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

コロナ危機「インド、集団免疫獲得へ向かう。インド流コロナ克服」

2021-02-04 11:45:03 | 政治
「56.13% people in Delhi have antibodies against Covid-19: Sero-survey」(Indian Express)



 1月25日、複数のメディアによれば、インド、デリー首都圏政府(州に相当する。人口4,600万人)のジャイン保健相は、1月に市内で行われた最新の血清学的調査の対象となった人々の56.13パーセントがコロナウイルスに対する抗体を持ったと発表したという。これは、平均的な国の人口に匹敵するほどの大都市で、Covid-19に対する集団免疫を獲得した可能性を示唆している。また、人々はマスクも不要な以前の日常生活に戻っているとも報道されている。
 インドのコロナ対策は、昨年3月からの全土封鎖という厳重なロックダウンから始まった。しかし、人口密集と収入を日々の活動から得る多くの民衆による経済困窮に阻まれ、成果を上げることはできなかった。数ヶ月、ロックダウンと解除を繰り返したが、その結果、2月現在で感染確認数が1,000万人を超え、死者数も15万人以上(実際には、公式の数字よりはるかに多いと推定されるが)と世界で4番目に多い犠牲者を出すことになった。
 しかし、インドの新規感染確認数は、昨年9月中旬がピークで、1日9万人を超えていたが、1月31日の段階で13,000人と大幅に減っている。その理由として、国立免疫学研究所のラト氏は「人口が集中する都市の一部地域とその周辺に感染が急速に広がった結果、局地的な集団免疫が確立された 」。米国の疾病動向経済政策センターのラクシュミナラヤン氏は「インドの人口の65%を占める35歳以下の年齢層が伝染を鈍化させている」(PTI通信、1月7日ヤフーニュースから)と分析している。要するに、先進諸国に比べて若年層が多いので、軽症者が多く、感染は蔓延したが、その結果として集団免疫を獲得しつつあるというのだ。これは上記の記事とも整合しており、納得できる説明である。
 その後、インド政府は昨年10月、では、政府が「世界最大規模」と豪語する国民へのワクチン接種計画も展開(ロイター1月31日)しており、2月1日段階で395万人(人口の0.29%)が接種がなされている(Our World in Data)。これは世界でも5番目、アジア地域では、中国に次いで早い。つまり、感染による自然免疫獲得と合わせ、ワクチン接種により、なるべく早い段階での国民全体への集団免疫獲得し、コロナ危機を克服しようとする試みである。
 インドは15万人以上の死者を出したが、人口比で比べると多いものではない。100万人当たりの死者数は、ベルギー1,822、英国1,606、アメリカ1,391、ブラジル1,066、メキシコ1,230に対し、インドは111人である。(日本は55人だが、東アジア・オセアニア地域では突出して多い。ニュージーランド5人、シンガポール5人、韓国28人、データは以下すべてWorldometer2月2日)先進国と比べて、医療体制は脆弱な国としては、特に、同様の医療体制と推測される南米に比べ、相対的には被害はかなり少なかったと言ってよい。また、PCR検査数も、100万人当たりインド142,978人で、日本55,299人で日本の2倍をはるかに超える。
 インドのコロナ対策の特徴は、方針の徹底ぶりにある。ロックダウンは、具体的には、官公庁をはじめとする公的機関、民間企業、店舗、工場、学校などは原則としてすべて閉鎖され、飛行機・鉄道・道路での移動も停止された。これは「世界最大のロックダウン」評されたが、他の国では見られない徹底ぶりだった。 マスメディアにもたびたび報道されたが、従わないものには容赦なく、警察が暴力をふるうというものだった。
 インド政府は、ロックダウン方針をやめると、今度はワクチン作戦に全面的に切り替えた。インドでは現行接種は、アストラゼネカ・オックスフォードワクチンとインド開発のバーラト・バイオテックの2種類を主に使用されているが、世界最大のジェネリック医薬品製造国としてメリットを生かし、他の欧米開発ワクチンとインド開発ワクチンの大量製造する方針を固めている。周辺諸国への供給とWHO主導のCOVAXファシリティに11億回分の大量供給を約束している。世界の相対的貧困国へのワクチン供給は、欧米が熱心とは言えない中で、中国・ロシアよりもはるかに大量になるだろう。 
 翻って考えると、日本政府のコロナ対策はインドとは正反対の、方針がまったく定まらない、その場しのぎの「後手後手」対策であることが、明瞭に分かる。ワクチンもG7の中で最も遅いどころか、アジア地域でも最も遅い国なりかねない。恐らく、国民の生活の正常化も、最も遅い国になるだろう。





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