狐は、人に憑(つ)いて狐憑きにするとか、人を化かすとか、昔から云われていますけれど、キタキツネなどを写真などで見たりすると、そのしぐさなど、可愛いところがあります。
昨日、野田の清水公園へ、つつじを見物に行ったのですが、広い公園をひとしきり歩いて、のどが渇いたので、茶店((ちゃみせ)に寄りました。
お店は、お婆さんが一人で留守番をしていました。
茶店は、立派な庭付きの家屋につながっていて、清水公園の中にあるので不思議に思い、「ここにお住まいですか?」と聞くと、代々住んでいるとのこと。
「瓦屋根の立派なお宅ですねェ」と言うと、「地震が来たら重くてつぶれちゃうよ」と、謙遜とも、本気とも付かぬ返事。
客は我々だけだったせいか、ちょっと話しかけただけなのに、問わず語りにいろいろと話をしてくれた。
公園が出来た当時から先祖は住んでいたこと。
戦後間もなく、すぐ近くの村から嫁いで来たこと。
当時のこのあたりは淋しくて、夜は深閑として、「昔は狐が居たのよ」と言う。
ある夜、村の会合があって、会議の時間になっても来ない人がいたので、外に出てみると、林の向こうで灯かりが行ったり来たりで、さっぱりこっちへ来ない。
当時は、灯かりといえば提灯で、木の葉隠れに、うろうろ、ゆらゆら・・・していて・・・
大声をかけると、やっとこちらへ駆けて来て、「狐に化かされて木の周りをぐるぐる回っていた」そうだ。声をかけてくれなかったら、狐は開放してくれなかったかもと・・・
今の公園の「花のファンタジー」のある辺りから江戸川の堤防までは、当時、大きな沼になっていて、貸しボートが浮かんでおりました。
休日などの日中には、ボートはいつも出払って、乗り場は沢山の人出で賑わっていました。
ところがある日、陽が西に沈んでも、一艘のボートが帰って来ませんでした。
盗まれたか!
翌朝、向こう岸で転覆したボートが発見され、人も浮かんでいた・・・
狐は悪さをしても、人懐っこい、いたずらの範囲内でのこと。
事件は単なる酔っ払いの事故だったらしい。
お婆さんの話は更に続きそうだったが、もっと怖い話になりそうだったので退散した。
☆ ☆ ☆ ☆
狐に扮した装束で、結婚すると幸せになるという「きつねの嫁入り」の風習は全国各地にあるようです。
昔、夕餉(ゆうげ)の支度で煮物や御御御付け(おみおつけ)を作る時など、つるの付いた鉄の鍋を使いました。
夕暮れ時の薄暗がりの中で、囲炉裏の自在鉤(じざいかぎ)に鍋を掛け、薪を焚きながら真っ黒の鉄鍋を見つめていると、一瞬、星屑のようにピカッと光るのです。鍋の外側に付いた煤(すす)が燃え尽きる瞬間に、ほんとに小さく輝くのです。
ピカッ、ピカッ、ピカッ・・・
光る時間の長さは、「ピカッ」では長すぎる、「チカッ」かな、それでも長すぎで、「チッ」ぐらいの瞬間的な輝きです。
まるで小さな提灯行列をしているように、次から次と光るのです。
「きつねの嫁入りよ」と母の声・・・
何か良いことがありそうな・・・子供心に思いました。
翌日は晴天です。
昨日、野田の清水公園へ、つつじを見物に行ったのですが、広い公園をひとしきり歩いて、のどが渇いたので、茶店((ちゃみせ)に寄りました。
お店は、お婆さんが一人で留守番をしていました。
茶店は、立派な庭付きの家屋につながっていて、清水公園の中にあるので不思議に思い、「ここにお住まいですか?」と聞くと、代々住んでいるとのこと。
「瓦屋根の立派なお宅ですねェ」と言うと、「地震が来たら重くてつぶれちゃうよ」と、謙遜とも、本気とも付かぬ返事。
客は我々だけだったせいか、ちょっと話しかけただけなのに、問わず語りにいろいろと話をしてくれた。
公園が出来た当時から先祖は住んでいたこと。
戦後間もなく、すぐ近くの村から嫁いで来たこと。
当時のこのあたりは淋しくて、夜は深閑として、「昔は狐が居たのよ」と言う。
ある夜、村の会合があって、会議の時間になっても来ない人がいたので、外に出てみると、林の向こうで灯かりが行ったり来たりで、さっぱりこっちへ来ない。
当時は、灯かりといえば提灯で、木の葉隠れに、うろうろ、ゆらゆら・・・していて・・・
大声をかけると、やっとこちらへ駆けて来て、「狐に化かされて木の周りをぐるぐる回っていた」そうだ。声をかけてくれなかったら、狐は開放してくれなかったかもと・・・
今の公園の「花のファンタジー」のある辺りから江戸川の堤防までは、当時、大きな沼になっていて、貸しボートが浮かんでおりました。
休日などの日中には、ボートはいつも出払って、乗り場は沢山の人出で賑わっていました。
ところがある日、陽が西に沈んでも、一艘のボートが帰って来ませんでした。
盗まれたか!
翌朝、向こう岸で転覆したボートが発見され、人も浮かんでいた・・・
狐は悪さをしても、人懐っこい、いたずらの範囲内でのこと。
事件は単なる酔っ払いの事故だったらしい。
お婆さんの話は更に続きそうだったが、もっと怖い話になりそうだったので退散した。
☆ ☆ ☆ ☆
狐に扮した装束で、結婚すると幸せになるという「きつねの嫁入り」の風習は全国各地にあるようです。
昔、夕餉(ゆうげ)の支度で煮物や御御御付け(おみおつけ)を作る時など、つるの付いた鉄の鍋を使いました。
夕暮れ時の薄暗がりの中で、囲炉裏の自在鉤(じざいかぎ)に鍋を掛け、薪を焚きながら真っ黒の鉄鍋を見つめていると、一瞬、星屑のようにピカッと光るのです。鍋の外側に付いた煤(すす)が燃え尽きる瞬間に、ほんとに小さく輝くのです。
ピカッ、ピカッ、ピカッ・・・
光る時間の長さは、「ピカッ」では長すぎる、「チカッ」かな、それでも長すぎで、「チッ」ぐらいの瞬間的な輝きです。
まるで小さな提灯行列をしているように、次から次と光るのです。
「きつねの嫁入りよ」と母の声・・・
何か良いことがありそうな・・・子供心に思いました。
翌日は晴天です。