俺はワルポンだっ!

ちょいワルおやじを卒業したワルポンの斜め下から見た現代社会

『一枚の羽毛』

2013-03-01 16:34:08 | 写真
小学生の頃、“ウソ”という小鳥をカナリヤカゴに入れて飼っていました。
くちばしと頭と尾羽は黒、喉周りは紅色で、体は灰色とシックでおしゃれな装いです。
口笛を吹いたように“フィー、フィー”と澄んだ声で啼くのです。
“ピー、ピー”とも聞こえるので、“ピーコ”と呼んでいました。

“ウソ”は「麻の種」が大好物です。
麻の種は餌の中では高いのですが、少ない小遣いの中から奮発して買い与えていました。
くちばしで麻の種をくわえ、舌先で種を回しながら外皮を器用に剥いて中身だけ食べる仕草がかわいいので、飽かず眺めていたものです。

鳥かごを掃除する時など、風呂場で放しても一人でかごに戻るほど懐いていたのでした。
そんな可愛い“ピーコ”を、ある夜、猫が襲ったのです。

・・・このとき以来、猫は大嫌いです。

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真っ黒の野良猫が我が庭の芝生からデッキを通ってゆうゆう散歩です。
良く見ると黒毛に所々茶色が混じっていて、かなりのデブ、尻尾が根元で少し曲がっていて、見るからにふてぶてしいノラで、かわいげのかけらもありません。

10軒ほど先のお婆が庭先に皿を並べて5,6匹の猫共に餌やりをしているのを何度か見ています。
餌やりの非常識さに、いつも苦々しく思っていました。ですから、出会っても挨拶をしません。
あいつらが遠征してくるのです。

愛犬のモンジロウが居たころは、四六時中見張りをしていて闖入者にはすぐにスクランブルして追っ払っていたのですが、彼が逝ってから3年も経つと猫共も状況が判って、勝手にどこからでも入ってきます。
時に糞なぞ土産に置いてくなど不届き千万です。

出くわした時は、見つけるや追っかけるのですが、柵をすり抜けてお隣へ移動して、アッカンベーらしき態度で振り向いては悠然としています。
憎々しいのですが、隣国の治外法権なので石ころを投げつけるわけにもいかず、地団駄を踏んでいます。

ワルポンが完全リタイヤの年金生活者で、いくらヒマがあるとは云え、モンジロウみたいに常時見張っている訳には行きませんから、仕方無しに通るにまかせています。

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うちの隣は空き地なのですが、借りて家庭菜園として使わせて貰っています。
この畑と我が庭に、この冬、毎日のように飛び切りかわいい小鳥がやって来ます。

ポケット図鑑で調べたら「ジョウビタキ」のメスでした。
スズメ目、ツグミ科、全長14cm、冬鳥として全国に渡来、越冬中は雌雄に別々に縄張りをつくって、3月頃まで過ごすそうです。
主に昆虫類やクモ類を捕食、草木の実も食べるとのこと。



ウグイス色のまるい頭に真っ黒の円い目と華奢な体つきで尾羽が橙色、清廉無垢で本当にかわいいのです。
高校時代に毎日の通学路で、あの女子高生とすれ違った時の、あの“ときめき”を感じる可愛さなのです。
          ♪いつもの小径で 目と目があった
            いつものように 目と目をそらせた
             通りすぎるだけの 二人のデート♪
思わず永六輔作詞、中村八大作曲、田辺靖雄と梓みちよが歌う「いつもの小径で」を思い出しました。もっとも彼女は、足駄をカラコロ引っ掛けて薄汚れた白いズックの肩掛けカバンをぶら下げたちょっと不良っぽい男などには一瞥もくれませんでしたから、目と目が合うことはありませんで、本当に“通りすぎるだけ”のことでした。

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ところが、この2,3日彼女の姿が見えません。
そう云えば、最後に出会った次の日にデッキの床に一枚の羽毛が落ちていたのを思い出しました。
まさか、あのノラ猫の毒牙にかかってしまったのでは・・・ふと、悪い予感が・・・

いえいえ、大分春めいてきたので、生まれ故郷の北国へ帰って行ったのです、彼氏と共に・・・
きっとそうです!

あの“一枚の羽毛”は、きっと、お別れに置いていったのです・・・