さて、前回のコンセプト発表に続きまして、
今回は実際の工作を交えて紹介しようと思います。
まず、設計のベースになるのが小型バスレフ箱です。
この段階で、様々なダクト径や箱容量をテストしました。
その中で、以下のようなインピーダンス特性が得られたのが、箱容量1.2L、ダクト直径15mm、ダクト長さ7.5cmの状態でした。
この注目ポイントは、左側のピーク。
しっかりとしたピークがありながら、十分に低い周波数(65Hz)に出現しています。
ちなみに、このバスレフ箱での周波数特性はこんな感じ。
この段階では、何の変哲もない、低域ダラ下がり特性ですね。
-------------------------------------------------------
さて、ここからが今回のスピーカーの見どころです。
この小型バスレフ箱の先に、共鳴管を装着した構造として、エンクロージュアを製作します。
(小さな穴が、ダクトの代わりです。)
ここで、構造に収めるために、少々設計変更をしています。
先ほどのバスレフ箱が、
容量1.2L、ダクト径15mm、ダクト長さ7.5cm だったのに対し、
共鳴管構造を含んだ箱では、
容量0.6L、ダクト径12mm、ダクト長さ7.2cm に変更しました。
この変化で、ダクトの共鳴周波数は73Hzから83Hzに上がりますが、
今回の設計では誤差範囲内です。
さて、この箱でのインピーダンス特性を見てみましょう。
共鳴管に由来する50Hzと100Hzのディップが新たに確認されます。
前段となるバスレフ箱と、後段となる共鳴管の双方が機能している状態だといえますね。
周波数特性はこんな感じ。
共鳴管が効率よく動作し、40Hz~200Hzの低音域に十分な音圧が確保できたことが分かります。
この特性を見ると、5cmフルレンジとは信じられないですね!
実際に聴いても、
バスドラムのズシッとくる沈み込み感、ベースギターの開放的かつ深みのある鳴りっぷりなど、
非常に満足度の高い低音を得ることができました♪
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さて、この箱の低音増幅を簡単にまとめると、こんな感じでしょうか。
今回の製作では、「小容量のバスレフ箱を共鳴管の前段に設ける」ことで、
幅広い帯域の低音を、非常に効率よく増幅できることが分かりました。
方式としては、以前にスピーカー再生技術研究会で小沢氏が2012年に「多重共鳴管」として発表していたものや、
私、カノン5Dが、同年に「共鳴管付きバスレフ」として挑戦したものに酷似しています。
小沢氏の発表(2012/02/06):
http://rilsrt.web.fc2.com/documents/RILSRT009-1_MPR_howto.pdf
カノン5Dのブログ(2012年05月05日):
http://blog.goo.ne.jp/4g1g4g0/e/955d9d0ae41c7c83192872e186bd490d
ただ、今回の方式は、バスレフ×共鳴管という動作に加え、
「ハイブリッドレゾナンスチューブ」として、複雑な共鳴を1本で実現していることも特徴だと考えています。
そんなことから、新たに
「多段共鳴管方式」と命名したいと思います。
設計図面の詳細や、実際の音を聴きたい方は、
ぜひ「ミューズの方舟主催 自作スピーカーコンテスト2017」へご来場ください! (宣伝しておこう)
次回は、仕上げに関する試行錯誤です。
今回は実際の工作を交えて紹介しようと思います。
まず、設計のベースになるのが小型バスレフ箱です。
この段階で、様々なダクト径や箱容量をテストしました。
その中で、以下のようなインピーダンス特性が得られたのが、箱容量1.2L、ダクト直径15mm、ダクト長さ7.5cmの状態でした。
この注目ポイントは、左側のピーク。
しっかりとしたピークがありながら、十分に低い周波数(65Hz)に出現しています。
ちなみに、このバスレフ箱での周波数特性はこんな感じ。
この段階では、何の変哲もない、低域ダラ下がり特性ですね。
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さて、ここからが今回のスピーカーの見どころです。
この小型バスレフ箱の先に、共鳴管を装着した構造として、エンクロージュアを製作します。
(小さな穴が、ダクトの代わりです。)
ここで、構造に収めるために、少々設計変更をしています。
先ほどのバスレフ箱が、
容量1.2L、ダクト径15mm、ダクト長さ7.5cm だったのに対し、
共鳴管構造を含んだ箱では、
容量0.6L、ダクト径12mm、ダクト長さ7.2cm に変更しました。
この変化で、ダクトの共鳴周波数は73Hzから83Hzに上がりますが、
今回の設計では誤差範囲内です。
さて、この箱でのインピーダンス特性を見てみましょう。
共鳴管に由来する50Hzと100Hzのディップが新たに確認されます。
前段となるバスレフ箱と、後段となる共鳴管の双方が機能している状態だといえますね。
周波数特性はこんな感じ。
共鳴管が効率よく動作し、40Hz~200Hzの低音域に十分な音圧が確保できたことが分かります。
この特性を見ると、5cmフルレンジとは信じられないですね!
実際に聴いても、
バスドラムのズシッとくる沈み込み感、ベースギターの開放的かつ深みのある鳴りっぷりなど、
非常に満足度の高い低音を得ることができました♪
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さて、この箱の低音増幅を簡単にまとめると、こんな感じでしょうか。
今回の製作では、「小容量のバスレフ箱を共鳴管の前段に設ける」ことで、
幅広い帯域の低音を、非常に効率よく増幅できることが分かりました。
方式としては、以前にスピーカー再生技術研究会で小沢氏が2012年に「多重共鳴管」として発表していたものや、
私、カノン5Dが、同年に「共鳴管付きバスレフ」として挑戦したものに酷似しています。
小沢氏の発表(2012/02/06):
http://rilsrt.web.fc2.com/documents/RILSRT009-1_MPR_howto.pdf
カノン5Dのブログ(2012年05月05日):
http://blog.goo.ne.jp/4g1g4g0/e/955d9d0ae41c7c83192872e186bd490d
ただ、今回の方式は、バスレフ×共鳴管という動作に加え、
「ハイブリッドレゾナンスチューブ」として、複雑な共鳴を1本で実現していることも特徴だと考えています。
そんなことから、新たに
「多段共鳴管方式」と命名したいと思います。
設計図面の詳細や、実際の音を聴きたい方は、
ぜひ「ミューズの方舟主催 自作スピーカーコンテスト2017」へご来場ください! (宣伝しておこう)
次回は、仕上げに関する試行錯誤です。
大変興味深い設計手法ですね。ところで、一つ質問があります。「ここで、構造に収めるために、少々設計変更します。」とありますが…、製作中の写真を拝見すると、バスレフ箱の上下に多数の板が詰め込まれています。これをなくして、ダクトもエンビ管にすれば、容量1.2Lは可能なのではないでしょうか?
あるいは「バスレフ箱は小さいに越したことはない」…、小さくてもいけるということを実証するための実験装置として、今回はあえてこうしたということなのでしょうか。
こんにちは。ご質問ありがとうございます。
設計上は、実はバスレフ部分は「小さいほうが若干良い」ということも分かっています。
バスレフ箱容量が小さいことで、Q0cが高くなり、また、ダクト共振がブロードに(インピーダンスの凹が広く、下側の凸が高く)なります。Q0cの上昇は中低域量感に有利ですし、後者のダクト共振については共鳴管に幅広い帯域増幅を担わせようとするには好都合なものでした。
とはいっても、0.6Lと1.2Lでは、(ダクト径15mmで)インピーダンスグラフを重ねても微小な差しかありませんでした。また、ダクト径12mmのデータは1.2Lしか収集していなく0.6Lverの掲載ができなかったという問題もありました(汗)
製作箱では、空気室上部に多数の板が詰まっていますが、当初箱上部を大きく45°で切り落とす予定だったためです。
また、箱下部の板積層については、適当なサイズの塩ビ管が手元になかったための処置、といったところでしょうか。
これだけ小さな空気室は久々だったのですが、空気室が小さいために定在波の周波数がかなり高く(気づきにくい所に)なったのは結果的に良かったですね。
ダクト長さを調整して共振周波数をそろえた場合についてです。
流石に、共振周波数が変わってしまうと、同じ動作にはならないですね…
丁寧で分かりやすいご回答、さらに追加情報、ありがとうございます。お手数とは思いますが、もう一つ質問させて下さい。
吸音材を使用する目的は、不用な中高音をカットするため、3倍、5倍の共振を抑えるためだと思いますが…、バスレフのダクトにはフィルター効果があり、中高音の多くはそこで減衰するのではないでしょうか。だとすれば、その後に続く共鳴管では吸音材は不用、あるいは不用ではないにせよ、従来よりその量を減らせるのではないかと期待をいだいてしまうのですが、そう上手くはいかないものでしょうか。
コメントありがとうございます♪
吸音材ですが、この位の量を共鳴管の中間より前側に充填するぐらいでは、5倍音も3倍音もあまり変化しないことが分かっています。ちなみに、小澤先生はこの倍ぐらい、管が満たされるぐらいの吸音材を使っていたかと思います。
バックロードの場合は、スロート近辺は音圧(流速?)が高く、そこに吸音材を設置すると低音が無くなってしまう経験があります。また、開口部付近への吸音材設置も、低音量感が下がり無難な大人しい音になるイメージです。
バックロードも共鳴管も完成前、蓋を閉める前にどう吸音材を入れるかが勝負だと考えています。バックロードの場合は、ある種の暴れるような低音も持ち味なので、可能な限り吸音材を少なくする方向もありかと思います。
今回の方式では、ダクトの効果で、たしかに中高域の漏れは少ないと思います。それでも、管の内部のフラッターエコーは限りなく少なくしたいので、吸音材は悪影響が出ない範囲でしっかり入れました。
開口部からフラッターエコー成分が出ると、音の重心が高くなるように感じることがありますね。