NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

NHKスペシャル「世界ゲーム革命」

2010-12-13 | 仕事
久しぶりにテレビゲームが主題になったドキュメンタリーということで、しかも水口哲也さんなどが出演される、それも長期取材だったと聞いて、期待していましたが…


「NHKスペシャル」(NHK)


結論から言って、とって微妙な出来のドキュメンタリーでした。ゲームエンジンの採用やテスターの使用で効率化を推し進める西洋のゲーム産業と職人芸の日本のゲーム産業っていう二項対立も非常に恣意的だし、いまや欧米のゲームと日本のゲームはそういうパラダイムは通り越してしまったんじゃないでしょうか。

また何で欧米のゲーム業界が2000年代以降急速に市場を拡大し、日本のゲーム産業が置いてけぼりになってしまったかということを説明するのかと思いきや、「効率化」という言葉でお茶を濁してしまっていた。結局欧米のゲーム産業に人材や資本が流れてきたのはITバブルがいったんはじけたからで…


「(レベル5の)日野の辞書に妥協という言葉は無い。納得できるまでどこまでも時間を掛け考え抜く。ゲームエンジンやテスターに頼り、効率優先の欧米勢とは対極にある。」


このナレーションには心底あきれたというか。まさかこんな認識の日本のクリエーターはいないでしょうが、少なくとも日本の公共放送の認識はこんなものなんですね。クール・ジャパン室なんていう失笑な部署を設けている経済産業省も似たようなものなのかしら。

そもそも欧米が「職人技」(笑)に勝る「効率化」を推し進めることが出来たのはゲーム産業に優秀な人材と資金が流入してきたからで、そしてそもそも20年近くゲームの基礎研究という下地があったからこそ欧米のゲーム産業は跳躍したわけです。一方人材も資金も、基礎研究も無い日本では実体の無い、口頭伝承の「職人技」という不確かなものに頼らざるを得ないわけです。

そこを説明しないのはどうなのかと。このわけのわかっら無いストーリーを維持するためなのか、明らかに恣意的に任天堂の存在を無視したVTR作りにも辟易します。ドキュメンタリーなんだから製作者の恣意で作られるのは当たり前のことですが、それにしてもてめえのストーリーを描こうとするあまり枝葉末節に走りすぎている感が否めません。


つうか、KAOSスタジオなんて微妙すぎるです。ぶっちゃけあんなキワモノソフト、NHKくらいしか注目してません。そしてエンザイムとかロシアの脳科学者とかもとっても極端で、瑣末なケレンな話題でしかないなぁと思いました。別にこれは最先端かもしれないけど決してメジャーじゃないだろ。


「電源を切るまでゲームは続く」


またこの言葉に代表されるような、VTRから見え隠れする製作者のゲームに対する偏見も気にかかった。ゲームテスト会社に勤める青年が如何にゲームに取り付かれているかを強調したり、テスターが脱落した後の説明には悪意しか感じられないよ。



期待していただけにとっても気分が悪くなりました。今日の夜中に再放送もありますが、こんな認識でNHKは作り、ゲームをしない人たちにそんな認識を共有されてしまうのかと思うと悲しくなります。