奥田英朗さんの「伊良部一郎」シリーズはそれなりに好きなので、一家言あるわけで。
―「Dr.伊良部一郎」(テレビ朝日)
「伊良部一郎」シリーズは奥田英朗さんの小説、『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』、『町長選挙』。この作品群に登場する主人公?が精神科医、伊良部一郎。医師学会の実力者の御曹司でお坊ちゃまながら、常人離れした風貌と行動で治療とも付かない治療を行い、結果的に患者の問題を緩和していく痛快さが魅力のシリーズです。
一応の主人公である伊良部の魅力と話の筋の面白さからか、これまで何度も映像化されてきています。松尾スズキさん主演の映画版『イン・ザ・プール』、阿部寛さん主演の2時間ドラマ版『空中ブランコ』。舞台版では同じく『空中ブランコ』を雨上がり決死隊の宮迫博之さんが演じていたそう。(舞台版は未見)そしてノイタミナ枠でアニメ版『空中ブランコ』も製作されています。
切り口や俳優さんや監督などは異なるものの、たび重なる映像化で共通しているのは主人公である伊良部の容姿の変更です。異形のものとして描くことは共通していたものの、見た目に関しては松尾さん、阿部さん、宮迫さん、アニメ版揃って原作の小太りで色白の実年齢よりも老けている中年男ではなく、痩せ型であり、むしろ男前になっていたりします。
そして今回の連続ドラマ版です。主演は21世紀の石原裕次郎こと徳重聡さん。ミステリアスな看護婦、マユミちゃんは余貴美子さん。伊良部の元嫁は原幹枝さんというキャスティングです。(伊良部の元嫁の映像化ってはじめてかも)伊良部を思い切って男前な徳重さんにしたり、若い看護婦という設定のマユミちゃんを熟年な余さんにするなどかなり大胆です。
で、この大胆なキャスティングはある程度成功しているように思えます。原作通りの伊良部を再現する必要は無いし、再現したところで見栄えは良くないですし。(でも個人的には昔の岡田斗司夫さんやガリガリガリクソンさんなんかは理想的かと。現実的に言えば、少し年齢は上過ぎるけど、中村梅雀さん辺りがしっくり来るような気がしますが。)
見た目が男前であろうが、子供っぽい内面や仕草で気持ち悪くもなります。原作では肥満体型にぺたっとした髪、派手でダサいファッションが伊良部を形作っていましたが、本作では男前の徳重さんらしく今風のさわやかな髪型に派手ながらも流行を取り入れたおしゃれなスタイルで、「グフフ…」と笑みを浮かべたりしてそれらしくしています。
意図としてはアニメ版『空中ブランコ』に近いです。でも徳重さんの演技力がその意図に付いていっていない印象です。「グフフ…」といった笑い方も引きつった笑顔も、少なくとも主役の演技ではないですし、気持ち悪いというか残念な感じになっています。『相棒9』の時も思いましたが、徳重さんは顔は作れるけれどお芝居は…コメディだとそれが余計に際立ってしまいます。
それに加えて、テレビ朝日のナイトドラマ特有の淡白というかありきたりというかつまらないというか、下手な演出のせいで、「Dr.伊良部一郎」は決して面白くなりそうに無いのも残念です。第2話で義父のかつらを剥ぎ取りたくて仕方ない強迫神経症の患者が、義父のかつらを背後から剥ぎ取ろうとするシーンでは何故か首を絞めようとしているようにしか見えません。もったいない!
けれど、結果的にそれなりに面白く見れてしまうのは、ほぼ原作に忠実に脚本化しているためなんだと思います。もっと意欲的な監督や脚本家で、中村梅雀さん主演で再ドラマ化してくれないでしょうか。余さんとかのキャスティングとかいろいろ良いところはあるのに、これではもったいないです。(でもマユミちゃんは菊池凛子さんあたりが良いなぁ)
―「Dr.伊良部一郎」(テレビ朝日)
「伊良部一郎」シリーズは奥田英朗さんの小説、『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』、『町長選挙』。この作品群に登場する主人公?が精神科医、伊良部一郎。医師学会の実力者の御曹司でお坊ちゃまながら、常人離れした風貌と行動で治療とも付かない治療を行い、結果的に患者の問題を緩和していく痛快さが魅力のシリーズです。
一応の主人公である伊良部の魅力と話の筋の面白さからか、これまで何度も映像化されてきています。松尾スズキさん主演の映画版『イン・ザ・プール』、阿部寛さん主演の2時間ドラマ版『空中ブランコ』。舞台版では同じく『空中ブランコ』を雨上がり決死隊の宮迫博之さんが演じていたそう。(舞台版は未見)そしてノイタミナ枠でアニメ版『空中ブランコ』も製作されています。
切り口や俳優さんや監督などは異なるものの、たび重なる映像化で共通しているのは主人公である伊良部の容姿の変更です。異形のものとして描くことは共通していたものの、見た目に関しては松尾さん、阿部さん、宮迫さん、アニメ版揃って原作の小太りで色白の実年齢よりも老けている中年男ではなく、痩せ型であり、むしろ男前になっていたりします。
そして今回の連続ドラマ版です。主演は21世紀の石原裕次郎こと徳重聡さん。ミステリアスな看護婦、マユミちゃんは余貴美子さん。伊良部の元嫁は原幹枝さんというキャスティングです。(伊良部の元嫁の映像化ってはじめてかも)伊良部を思い切って男前な徳重さんにしたり、若い看護婦という設定のマユミちゃんを熟年な余さんにするなどかなり大胆です。
で、この大胆なキャスティングはある程度成功しているように思えます。原作通りの伊良部を再現する必要は無いし、再現したところで見栄えは良くないですし。(でも個人的には昔の岡田斗司夫さんやガリガリガリクソンさんなんかは理想的かと。現実的に言えば、少し年齢は上過ぎるけど、中村梅雀さん辺りがしっくり来るような気がしますが。)
見た目が男前であろうが、子供っぽい内面や仕草で気持ち悪くもなります。原作では肥満体型にぺたっとした髪、派手でダサいファッションが伊良部を形作っていましたが、本作では男前の徳重さんらしく今風のさわやかな髪型に派手ながらも流行を取り入れたおしゃれなスタイルで、「グフフ…」と笑みを浮かべたりしてそれらしくしています。
意図としてはアニメ版『空中ブランコ』に近いです。でも徳重さんの演技力がその意図に付いていっていない印象です。「グフフ…」といった笑い方も引きつった笑顔も、少なくとも主役の演技ではないですし、気持ち悪いというか残念な感じになっています。『相棒9』の時も思いましたが、徳重さんは顔は作れるけれどお芝居は…コメディだとそれが余計に際立ってしまいます。
それに加えて、テレビ朝日のナイトドラマ特有の淡白というかありきたりというかつまらないというか、下手な演出のせいで、「Dr.伊良部一郎」は決して面白くなりそうに無いのも残念です。第2話で義父のかつらを剥ぎ取りたくて仕方ない強迫神経症の患者が、義父のかつらを背後から剥ぎ取ろうとするシーンでは何故か首を絞めようとしているようにしか見えません。もったいない!
けれど、結果的にそれなりに面白く見れてしまうのは、ほぼ原作に忠実に脚本化しているためなんだと思います。もっと意欲的な監督や脚本家で、中村梅雀さん主演で再ドラマ化してくれないでしょうか。余さんとかのキャスティングとかいろいろ良いところはあるのに、これではもったいないです。(でもマユミちゃんは菊池凛子さんあたりが良いなぁ)