カッキーYAMA   akihiko tange

手始めに、日常的なことを気の向いたときに載せていくつもり。

「茶房」の家具

2011-05-02 | エッセイ

早稲田に「茶房」という店があった。私は今はアジア人街と成った(ちなみに私はそういう場所が感覚に合う・・)新大久保の辺をうろうろしたり高田馬場駅近くを練り歩いたり、といった状態だったので、早稲田の本部校舎の方はあまり行かず、従って、あの有名な茶房にも一度入ったか入らなかったかという程度だったと思う。学生という何も考えないことを旨とする人種に属していた私は、茶房の名前だけは知っていてもあまり思い出すこともなく過ごした。
 卒業して少し経った頃、1980年を数年超えた頃だった。弟がまだ在籍していて茶房にはよく出入りしていたらしく、長い歴史を閉じ、やむなく閉店になる、ということを店の人から聞きつけてきた。そして、それまで店で使っていたユニークで、かつ、いろいろな人が座ったであろう椅子、テーブルなどを、やはり大切にしてくれる人に引き取ってもらえないだろうかということだったらしく、確か、くじ引きのようなものが行われたらしい。弟がそれに参加して見事に椅子とテーブルのセットを当てたようだった。ご存じの人も多いように、ごつくて重たい光沢のある黒塗りの手作り感覚あふれる家具である。
 学生とは、とかくそういった謂れのある、あるいは出そうなものに関心がなく薄情なもので、物好きと言えなくもない参加者はその時それほどはいなかったのかも知れない。が、とにかく幸運にも当たったということで家に電話してきた。無償で分けるものであり、取りに来られる方、が条件ででもあったのだと思う。運送はしてくれなかった。それでその日時間の空いている私が取りに行くことになったのである。暇だからといって私に白羽の矢を立てたようなものであった。重いのでまさか担いで電車に乗るわけにもいかず、貴重なものと分かっているので当たったのを断る気はさらさらなく、丸太のごつく重い、拭き掃除などしなくてもなんともないような、それでいて誰にとっても愛着の湧くであろうその椅子、テーブルを、ある一日、車を飛ばして受け取りに行ったのである、私が・・・。
 この2脚の椅子とテーブルは、今も家で使っている。テーブルの上は小積んだCDやら訳の分からぬどこかの店のマッチ、ウォークマンの壊れたやつ、あまり使わないゲーム機などなど、そんなものが山のように乗っている。今でもとても有効に激しく使われているといってよいだろう。当時そこを知り、その店の思い出を大切にしている方々もいると思う。ご安心ください。激しく無造作に今でも使われています。使ってこそといった趣の家具である。






コメント
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