【猫マンガ】脱走猫回収後









※自分の顔をちょっと美化しすぎました。

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夜の脱走

 夜の11時を回った頃に、みゆちゃんが脱走してしまった。
 家の庭は周囲を高い塀に囲まれていて、外へは出られないようになっているのだが、塀ぎわに百日紅が植わっているから、その木を伝ってみゆちゃんはこれまでに何度か、塀の向こうへ出て行ってしまったことがある。いつも数時間ほど外で遊ぶと、塀の上まで戻ってきてうろうろしているので、そこを捕まえて連れ戻すのだが、やはり外へ出るのは心配なので、百日紅の木にはみゆちゃんが登れないように、古くなった傘をくくりつけて猫返しにしていた。
 その猫返しに、いつのまにか隙間が出来ていたようである。庭でがしゃがしゃと物音がしたので、いけないと思って急いで窓から見たら、ちょうど木の上に登ったみゆちゃんが、塀の上へ飛び移り、その向こうへ姿を消すところであった。
 今までに何度か脱走したのはいずれも昼間の明るいうちのことであって、夜に出て行ってしまったのはこれがはじめてなので、心配になった。そうならないように、これまであまり夜は庭に出さないようにしていたのだけれど、近ごろは塀の外には全然興味がなさそうであったし、夜の庭で虫などを追いかけて遊ぶのをとても喜んでいたから、つい油断していた。
 塀に梯子を掛けてよじ登り、みゆちゃんの白い姿を探したが、夜闇のなかに隣家の屋根が続くばかりで、気配すらも感じられない。見上げると、街の明かりで白々しくなった狭い夜空に、秋の星がいくつか瞬いていた。
 午前1時頃に、遠くで猫のぎゃあと鳴く声が聞こえたような気がして、ますます心配になった。よその猫と鉢合わせてけんかになり、追いかけられて、帰って来られなくなったのではないか。木賊の茂みのあいだを抜けて出かけていったきり戻ってこなかった百のノラのことを思い出し、よからぬことをいろいろと連想して、暗い気持ちになった。
 それからしばらく経って、塀の上にみゆちゃんがひょっこり現れたが、まだ戻る気はないらしくて、また塀を伝ってどこかへ行ってしまった。ともかくみゆちゃんが無事で、この近くにいることがわかったのでほっとしたら、今度はこちらの気も知らずにふたたび遊びに行ってしまったことに腹が立ってきたが、戻ってきたときに気がつかなかったら可哀相なので、起きて待っていた。
 午前3時半になって、ようやくにゃあというみゆちゃんの訴えるような鳴き声が外から聞こえてきた。自分で塀を降りられないのである。
 急いで梯子を登って手を差し伸べたが、こちらの手の届くか届かないかというあたりでうろうろしたり寝転がったりするばかりで、この期に及んでまだ自分からは帰ってこようとしない。じれったく思いながらなだめたりすかしたりして、ようやく首根っこを押さえて捕まえた。
 自分からは来ないが、本心は寂しかったらしく、梯子を降りながら片手で抱えたみゆちゃんの柔らかいお腹がごろごろと鳴り出したから、叱る気はすっかり失せてしまった。









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