対カラス作戦

 夏のあいだ、どこかへ行っていたカラスたちが戻ってきたようである。これから実りの秋本番で、野山にはいろいろと美味しいものがあると思うのだけれど、なぜか人間の出したごみに集まってくるので困る。表でかあかあ、ばさばさと騒がしいから、みゆちゃんは朝から窓辺に張りついてカラスの監視に忙しいが、みゆちゃんがガラス越しに睨んだくらいでは、カラスはなんとも思わないから、肝心のところでは、人間が出て行って追っ払わなければならない。安穏な家猫の地位に甘んじるばかりでなく、たまには、カラスが恐れをなすくらいの猛獣的な霊気を放ってくれればいいのだが、ちっとも役に立たない。もっとも、カラスにもなめられる、そのちょっと抜けたようなところがまた、みゆちゃんのかわいいところなので、仕方ない。
 それで、あんまり趣味がいいとは思われないが、カラスの死体らしきものを作って吊っておこうと考えた。ホームセンターの園芸用品売り場で、カラス除けの小道具としてそういうものが置いてあったのを思い出したのである。
 カラスは、仲間の死体を見ると、なんかあそこはヤバイ、と思ってそこには近づかないらしい。実際にカラスの頭のなかで、どのように情報が処理されているのかはわからないけれど、仲間の死骸をみて、ひどい目にあっている状況を自分に置き換えて想像しているのだとしたら、まったく賢い鳥だと思う。
 黒いゴミ袋を、切ったり貼ったり、ねじって留めたりして、憐れなカラスの死体らしきものを作った。これをゴミのそばにぶら下げておくのである。いくら偽物でも、見せしめというのはなんとなく残酷な感じで気が引ける。どこにぶら下げけようかと考えながら窓の外を覗いたら、すでに表は静かになっている。お腹が膨れたのか、別の餌場へ移ったのか、もうカラスたちが退散したあとらしかった。
 いないとわかったら、気が引けるなどと言っていた気持ちはどこかへいって、せっかくつくったカラスの死体を試せないのが残念になった。
 来週のごみの日が、早く来ないかと思う。


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