琵琶湖のイラガ

 今年の夏は、滋賀県守山市の烏丸半島にある蓮の群生地を見に行った。その規模の大きさは圧倒的であると聞いていたから、前々から一度見てみたいと思っていたのである。
 冬に半島の横を通ったときには、寒々とした湖面に、立ち枯れたような蓮の残骸が点々としているだけであったのに、それがいつしか、半島の北側すべてを多い尽くすように青々と盛り上がった蓮の葉が命あふれる緑の大地のようになっていて、湖面がちっとも見えなくなっている。
 無数の蓮の花が、その緑の茂みにかかる淡いピンク色の靄のように、どこまでも朧朧と続いている。大きな花弁が、琵琶湖を渡る風にそよがれてはらはらと揺れる。
 朝の早い時間に来れば、蓮の花が開く瞬間を見ることができるらしいが、そんなに早い時間には来られないので、着いたのは、お昼前である。8月はじめの頃だから、暑い。しかも、蓮を鑑賞するのに好都合な半島の北側にある遊歩道は、日陰がちっともない。
 暑いさなかを歩いて行って、ようやく向こうに、二本のクスノキが木陰をつくっているのが見えた。一息つけると思って足取りも速くなり、木の下へ入ろうとしたところ、毒々しいほど鮮やかな黄緑色に青い縦縞の入った棘棘のイラガが、木の幹にもまわりの地面にもいっぱい散らばっているのに気づいた。
 イラガの棘は、中が注射針のようになっていて、刺すと同時に毒液を注入するそうであり、刺されるとものすごく痛い。
 毒毛虫がいるのを知ってか知らないでか、気にせず木の下でくつろいでいる人たちもいたが、私はとうていイラガの木陰には入る気になれなかったので、暑いのを我慢して、岸の近くの水底を漁るカモの群れや、長く伸びた蓮の茎の根元を泳ぐ魚たちを見ていた。
 空気のひんやりする今朝、庭木に小さなイラガがついているのを見たので、そんなことを思い出した。


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