②本当にイタイ話
よく、本番前の役者さんに、
「体調に気をつけて、ベストの状態で本番に臨んでね」
なんて、メールの最後に付け加えます。
でもね。
わかってるんです。
そんなこと、できっこないって。
本番にベストの体調で臨む。
・・・当たり前のように思われるでしょうけど、
実は、うっそ、うっそ、うっそ
少なくとも、小劇場の世界では、
本番前が疲労のピーク。
いや、
・・・ピークを超えちゃってる状態なんです。
夜遅くまで稽古して、
そのあとで、小道具や衣裳の直しやチェックをしたり、
チケットの手配や、メールの連絡。
肝心の演技のことも、まだまだラストスパートで、
上げていかねばなりません。
(最後のあがきともいう)
朝も早くから、雑用や稽古に追われ、
睡眠時間はマトモに取れず、
心身ともにボロボロで、
・・・本番・・・
になるんですね~。
といっても、それをグチるつもりはありません。
(嫌だったら、とっくにやめてます)
いや、まぁ、ねぇ。
そりゃぁ、芝居だけに集中して、
体力温存して舞台に立ちたいとは、思いますけどねぇ。
でも、舞台ってそういうものなんですよ。
かなり名の通った役者さんでも
本当によく働いてビックリしますから。
・・・だから、それはいいんですが、
・・・ただ、そういう状態なだけに、
怖いのが、病気とケガなんです
役者っていうのは不思議な生き物で、
限界を超えていても、
たいがい、本番中は何とかなっちゃいます。
きっとアドレナリンが異常分泌してるんでしょう。
でも、
それでも、
体は正直なもので、
ふっと気のゆるんだスキをついて、
足元をすくわれることがあります。
これもかなり前の話になりますが・・・、
今日が初日だっ! という日の、
明け方のことでした。
たまたまふと目が覚めて、
トイレに行きました。
・・・6時か・・・。
あと1時間は眠れるな。
起きたらまず洗濯だけ済ませて、と。
・・・あ、あのシーン、
もう少しテンポよくしないとな。
・・・あ、そういえば、
あの人のメールに返信したっけ。
と・・・まるっきりまとまらないことを、
まとまらない頭でウダウダ考えながら、
トイレを出ようと、ドアノブに手をかけて、
・
・
・
・
・
それから、何があったのか。
・
・
・
気がつくと、目の前に、
トイレの床がありました。
「・・・ん???
・・・転んだ???」
ボーっとした頭で起き上がり、
床にぺたりと座り込み、
大きなため息をつきつつ、
触るともなく、顔に手をふれると・・・、
ほっぺたも鼻も、ヌメヌメ、ネトネト。
「ん??」
と、その手には・・・、
「血だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
一気に目が醒め、
あわてて洗面所の鏡を見てみると・・・、
どこで、ぶつけたのか
ちょうど眉間(みけん)のあたりがパックリと割れて、
顔の半分以上が赤黒く染まっています
時間を見ると、6時35分。
30分近く倒れていたようでした。
あ、あ、あ、
ま、まず、顔を洗わなきゃ。
ぼーっと起きだしてきた家族の前に、
「ヌッ」
と、この顔を見せたら、
今度は家族が心臓マヒで倒れかねません。
あちこちについた血を拭き、
(なんか、2時間ドラマみたい・・・)
と、みょ~に呑気な感想を持ちながら、
傷の消毒まで終えて、
あらためて顔を見てみました。
ざっくり切れた眉間の傷に、血がにじんで・・・。
ハタモトタイクツオトコ・・・だわぁ。
・
・
・
って、
・
・
そんな呑気なこと、言ってる場合じゃないでしょーっ!
どうするのよ!
今日、初日よ!
いくら「元気のいい奥さん」役だからって、
眉間にバンドエイドはやりすぎでしょーーっ
でも、よほどザックリやったらしく、
押さえておかないと、血が止まりません。
劇場に行き、演出家と共演者にあやまり、
結局、肌色のバンドエイドの絆創膏部分だけを、
できる限り細く切って傷に貼り、
そこに厚めにドーランを塗って出ました。
え~え、そりゃバレますよ。
前の方のお客様には、絶対に。
でも、これ以上の方法は思いつかなかったんです。
でも・・・、
ただ、ひとつ、誤算がありました。
・・・と、また長すぎました~。
今日はここまで。
また明日続けます~
よく、本番前の役者さんに、
「体調に気をつけて、ベストの状態で本番に臨んでね」
なんて、メールの最後に付け加えます。
でもね。
わかってるんです。
そんなこと、できっこないって。
本番にベストの体調で臨む。
・・・当たり前のように思われるでしょうけど、
実は、うっそ、うっそ、うっそ
少なくとも、小劇場の世界では、
本番前が疲労のピーク。
いや、
・・・ピークを超えちゃってる状態なんです。
夜遅くまで稽古して、
そのあとで、小道具や衣裳の直しやチェックをしたり、
チケットの手配や、メールの連絡。
肝心の演技のことも、まだまだラストスパートで、
上げていかねばなりません。
(最後のあがきともいう)
朝も早くから、雑用や稽古に追われ、
睡眠時間はマトモに取れず、
心身ともにボロボロで、
・・・本番・・・
になるんですね~。
といっても、それをグチるつもりはありません。
(嫌だったら、とっくにやめてます)
いや、まぁ、ねぇ。
そりゃぁ、芝居だけに集中して、
体力温存して舞台に立ちたいとは、思いますけどねぇ。
でも、舞台ってそういうものなんですよ。
かなり名の通った役者さんでも
本当によく働いてビックリしますから。
・・・だから、それはいいんですが、
・・・ただ、そういう状態なだけに、
怖いのが、病気とケガなんです
役者っていうのは不思議な生き物で、
限界を超えていても、
たいがい、本番中は何とかなっちゃいます。
きっとアドレナリンが異常分泌してるんでしょう。
でも、
それでも、
体は正直なもので、
ふっと気のゆるんだスキをついて、
足元をすくわれることがあります。
これもかなり前の話になりますが・・・、
今日が初日だっ! という日の、
明け方のことでした。
たまたまふと目が覚めて、
トイレに行きました。
・・・6時か・・・。
あと1時間は眠れるな。
起きたらまず洗濯だけ済ませて、と。
・・・あ、あのシーン、
もう少しテンポよくしないとな。
・・・あ、そういえば、
あの人のメールに返信したっけ。
と・・・まるっきりまとまらないことを、
まとまらない頭でウダウダ考えながら、
トイレを出ようと、ドアノブに手をかけて、
・
・
・
・
・
それから、何があったのか。
・
・
・
気がつくと、目の前に、
トイレの床がありました。
「・・・ん???
・・・転んだ???」
ボーっとした頭で起き上がり、
床にぺたりと座り込み、
大きなため息をつきつつ、
触るともなく、顔に手をふれると・・・、
ほっぺたも鼻も、ヌメヌメ、ネトネト。
「ん??」
と、その手には・・・、
「血だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
一気に目が醒め、
あわてて洗面所の鏡を見てみると・・・、
どこで、ぶつけたのか
ちょうど眉間(みけん)のあたりがパックリと割れて、
顔の半分以上が赤黒く染まっています
時間を見ると、6時35分。
30分近く倒れていたようでした。
あ、あ、あ、
ま、まず、顔を洗わなきゃ。
ぼーっと起きだしてきた家族の前に、
「ヌッ」
と、この顔を見せたら、
今度は家族が心臓マヒで倒れかねません。
あちこちについた血を拭き、
(なんか、2時間ドラマみたい・・・)
と、みょ~に呑気な感想を持ちながら、
傷の消毒まで終えて、
あらためて顔を見てみました。
ざっくり切れた眉間の傷に、血がにじんで・・・。
ハタモトタイクツオトコ・・・だわぁ。
・
・
・
って、
・
・
そんな呑気なこと、言ってる場合じゃないでしょーっ!
どうするのよ!
今日、初日よ!
いくら「元気のいい奥さん」役だからって、
眉間にバンドエイドはやりすぎでしょーーっ
でも、よほどザックリやったらしく、
押さえておかないと、血が止まりません。
劇場に行き、演出家と共演者にあやまり、
結局、肌色のバンドエイドの絆創膏部分だけを、
できる限り細く切って傷に貼り、
そこに厚めにドーランを塗って出ました。
え~え、そりゃバレますよ。
前の方のお客様には、絶対に。
でも、これ以上の方法は思いつかなかったんです。
でも・・・、
ただ、ひとつ、誤算がありました。
・・・と、また長すぎました~。
今日はここまで。
また明日続けます~