共産主義後の世界を描くときだ
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」47/通算479 2022/5/27/金】今朝は台風みたいな風雨、春の嵐というのか、雨降って地固まる?か・・・運を天に任すのではなく、固める努力をしないと何事も進まないということだ。這ってでも前進、死ぬまで前進、なかなかヨサゲである。
保守派論客の西尾幹二先生は、小生がアカの残滓をきれいに掃除する上でとてもお世話になった。先生は1935年生まれ、御年86歳だが、久し振りに産経「正論」に寄稿、切れ味は相変わらず抜群だった。その全文が「西尾幹二のインターネット日録」にあったのでキモを転載する。「領土欲の露骨なロシアの時代遅れ」(令和4/2022/5/24)から。
<ロシアのウクライナ侵攻から日本人が得た最大の教訓は何だろうか。重要な教訓は単純な形をしているのが常だ。もし日本が侵攻されたら、日本人はウクライナ人のように勇猛果敢に戦えるだろうか。そのような疑問が私の心を離れない。
【「平和主義」を振りかざすだけ】5月1日のNHK朝の各党党首出演の政治討論会を聴いていて驚いた。自民党から共産党までまったく同じ論調なのである。日本列島がウクライナのようになったらどうしようという国民が抱いたに違いない不安を予感させる言葉はだれの口からも出てこない。
それどころか日本は輝かしい平和主義の国、平和主義を振りかざしていれば無敵、不安なし、平和主義こそが強さの根拠、と居並ぶ各党党首が口を揃えてそう語っているのだ。
私は心底たまげた。ここまで口裏を合わせたかのような一本調子の同一論調、ロシアが再び北海道侵攻を言い出している時代だというのに、首相以下我が国を代表する政治家たちのこんな無防備、不用意な討論会を公共放送が放映する必要があるのだろうか。
雑誌や新聞にロシアに好意的な見方が予想外に数多く見られることにも驚いている。北大西洋条約機構(NATO)が壁をつくったことにも責任があり、ロシアの反発もやむを得ないという同情論である。たしかに孤立したロシアを一方的に追い込むのは危険だという指摘はジョージ・ケナンやキッシンジャーの警告でもあり、人類が歴史に学ぶことがいかに少ないかの例証の一つではある。
けれども現在のロシアが旧ソ連とどれほど違った新しい国に生まれ変わったかにはむしろ大きな疑問がある。スターリンとヒトラーは気脈を通じ合った同時代人であった。ネオナチは今のロシアを指す言葉だと言った方がいい。
【19世紀型植民地帝国主義】今度の侵略で目立つのはロシアの領土欲である。クリミアを手始めに露骨だった。同じことは公海に囲いをつくった中国にも言える。この両国は体制の転換期(1990年前後)に何も学習していない。
世界の覇権には軍事力と経済力以外に独自の文明の力を必要とする。科学技術や人文社会系の学問に秀で、映画など娯楽やスポーツ、農業生産力でも世界をリードすることが求められる。アメリカはそれをやってのけた。戦後世界を支配したのは当然である。
今、覇権の交替を求めている中国には世界を納得させる新しい文明の型を打ち出す力はない。核大国・為替の支配・宇宙進出などアメリカの模倣である。ロシアはそれにさえ及ばない。かくて共産主義の過去に呪われた両国は今では「領土」にこだわる。19世紀型植民地帝国主義を再び演出する以外に手はないようだ。
勿論アメリカの独自路線も少しずつ後退し、誇らしかった月面初到達も今や昔話だ。そして地球の問題を決めるのに少しずつ国際的民主化が進んでいる。
【いわれのない妄想捨てよ】民主化は良いことのようにみえるが、それは自由の幅を広げ、その分だけ不決断ないし無秩序が広がることを意味する。だからバイデン大統領はプーチン大統領が核に一寸でも手をつけたら、アメリカは断固モスクワを核攻撃しますよ、とは決して明言しない。ただ独裁国家の悪を道徳的に非難するばかりで、ロシアへの経済制裁とウクライナへの追加支援を積み重ねていくばかりである。
誰しもが全体の状況を読み切れず一般的不安の中にいる。もし大戦争に拡大したら「貴方がこうすれば私もこうします」とはっきり言わないアメリカ大統領に半ば以上の責任がある。世界の政治はだんだん日本の政治に似てきている。「バイデン」は「岸田」に似てきている。
日本は被爆国であるからこそ同じ体験を二度と味わわないためにハリネズミのように外敵が手を出したら直ちに同程度の報復をする準備体制を完備することがノーモア・ヒロシマの意味ではないか。今のままでいけば日本が3度目の被爆をする可能性は決して小さくはない>
・・・・・・・・・・・
「人気次第で任期が決まる」政治家はTV視聴者に嫌われないように当たり障りのないことを言わざるを得ない、それは西尾先生も承知していながらあえて「こいつらバカか」と嘆いてみせたのは、「すでに有事、危機の時代だ、国民にきちんと説明し、覚悟を促せ」と政治家のケツを蹴飛ばしたということだ。
この論稿が掲載された産経に最新の産経・FNN合同世論調査(そこそこ信頼できそうなRDD方式)があったが、国民は「落選」を恐れるボンクラ政治家よりも「戦争」に危機感を持っているようだ。「敵基地攻撃能力『必要』64% 防衛費6割が増額要求」(2022/5/24)から。
<産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は21、22両日に合同世論調査を実施した。政府が検討を進める敵基地攻撃能力の保有の是非を尋ねたところ「必要」とする回答が64.7%に上った。自民党が提言する防衛費の国内総生産(GDP)比2%以上への引き上げに関しては「2%以上に増やすべきだ」(15.1%)と「2%以上でなくてよいが増やすべきだ」(46.9%)の増額を求める回答が6割以上となった。
ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮の相次ぐミサイル発射による安全保障環境の深刻さが背景にあるとみられる。
岸田文雄内閣の支持率は、前回調査(4月16、17両日)比3.0ポイント増の68.9%で昨年10月の政権発足後最高となった。60%台の支持率は政権発足後8カ月連続。政府の新型コロナウイルス対策やウクライナ危機への対応についていずれも6割以上が評価していることが要因に挙げられる。
対露制裁について日本経済や国民の生活に影響が出る場合も行うべきかを聞いたところ、「行うべきだ」が73.6%に上り、「行わなくてよい」は20.0%だった。
夏の参院選比例代表の投票先を尋ねたところ、自民党39.2%▽立憲民主党7.1%▽日本維新の会5.7%▽公明党3.2%▽国民民主党2.0%▽共産党3.2%-などが続いた。「わからない・言えない」は35.4%だった>
小生の偏見では、立民=革マル中心の新左翼系と日共を合わせると有権者の10%ほどがリベラルを装うアカ≒共産主義独裁の「露中北支持派」である。Japan In-depth 2022/5/25に「清谷信一(防衛ジャーナリスト)安倍元総理の軍拡に対する反論」があり、以下の冒頭を読んでがっかりした。
<・自衛隊の継戦能力の欠如は自衛隊、安倍元首相、自民党政権の当事者意識の欠如が招いたもの。・高コスト組織の予算を増やしても濫費するだけ。NATO諸国、中国は経済成長にあわせ、国防費を増額している。・「借金による軍拡」は自ら危機を招く自殺行為。アベノミクスの失敗を糊塗して国民の目をそらすためではないか>
アベノミクス云々以前に「アベニクシ」、読む気が失せた。調べたら「清谷信一(きよたに しんいち、1962年 - )はジャーナリスト、仮想戦記作家。日本ペンクラブ会員」とあった。日本ペンクラブと言えば似非リベラル≒アカモドキのようだが、まだ生きていたのか!? 日本ペンクラブ2022/4/4から。
<3月20日に行われた日本ペンクラブ主催のシンポジウムに副会長の沼野充義さん(ロシア・スラブ文化専門家/日本ペンクラブ副会長)から貴重なメッセージが寄せられた。沼野氏は現在、病気療養中のためメッセージ「ウクライナで、ロシアで、何が起きているのか?」はロシア文学者の沼野恭子さんに(以下)代読いただいた。
・・・・・・・・
人間を虐殺することは恐ろしいことだが、私にとってもっと恐ろしく思えるのは、今回の戦争を正当化しようとするためにプーチンの発している言葉が最初から最後までほとんどすべてウソだということだ。
相手に批判されるとそれを相手に返す、相手の責任になすりつける。つまり言葉そのものが虐殺されているということである。これは「ロシア文学が大事にしてきた言葉」を殺すということであり、ロシア文学に長らくたずさわってきた者として私はとても悲しい。
ウソの言葉の中でもひどいのは、ウクライナのことを執拗に「ファシスト政権」だの「ネオナチ」だのといった言葉で呼んでいること、ネオナチから解放してやるんだというとんでもないウソをつき続けていることだ。
なぜこうした言葉が繰り返されるのかというと、歴史的な背景があるので、私たちはそれを知っておくべきである。
ソ連は、第二次世界大戦で甚大な被害をこうむり、大変な犠牲を払って戦争を勝利に導いたが、そのことを、歴史的な貢献であり人類の救済であるとして非常に誇りに思っている。だから「ファシスト」「ナチ」というのは最大級の罵り言葉であり、他の国には見られない特別な罵詈雑言である。
そうした言葉を執拗に持ち出してウクライナを攻撃しているのである。ウクライナにもネオナチがまったくいないわけではないが、プーチンは自分のやっていることを棚に上げて、ありもしない罪を人になすりつけている。・・・・
今回の侵攻はプーチンが悪いのは明らかであるが、これはロシアのすべてが悪いということを意味するものではないということを強調しておきたい。ロシア文学は、こういった逆境のなかで、圧政にもかかわらず書かれてきたものである。
プーチンを一つの極端な「極」であるとするなら、本当のロシアというのはロシアの文化や文学であり、こういう機会だからこそ、そうした本当のよき文化・文学を深く理解するべきではないだろうか。ロシア語を学び、ロシア芸術の素晴らしさを認識すべきである。
ここは議論の分かれるところだが、ひょっとしたら、プーチンはロシアではないのではないか。ロシアが生みだした怪物にすぎないのではなかろうか。ロシアのまともな人の中にはプーチン批判をする人がたくさんいる。
選挙でプーチンを選び長く独裁を許してきたのはロシアの国民ではないかという人もいるし、ウクライナ人の中にもそう考える人がいることはたしかだ。しかしこれは簡単に判断できる問題ではないし、日本も選挙で選んだ政権がずっと長く続いていることに国民の責任があると考えられる。
プーチン個人がどの範囲まで悪いのかはここでは深入りして詮索するのを控えるが、少なくとも、そうしたプーチンの蛮行を見れば見るほど、その対極にある文化・芸術・文学の素晴らしさが浮き彫りになってくる。ロシア文学はずっと、野蛮なロシア・暴虐のロシアのもとにあるにもかかわらず生まれ書かれてきたのである>
・・・・・・・・・・・
ロシア文学、芸術、ボリショイサーカス、ロシア人は素晴らしい、悪いのはプーチン一派だ、彼らは自民党と一緒だ、プーチン、安倍晋三、それを支持した両方の国民にも責任がある・・・ということか?
小生は共産主義独裁が諸悪の根源と思っているし、ソ連とヒトラー・ナチスの独ソ不可侵条約(秘密協定)が第二次世界大戦を招いたと解釈しているが・・・自由のないソ連がなぜ「ロシア文学、芸術、ボリショイサーカス」を世界で広めたか、ソ連の宣伝に有効だからだ。「沼野先生、あなたもスターリン・ソ連、プーチン・ロシアのプロパガンダに利用されてきたんですよ」と言いたい。
2000年にプーチンがなぜ、ソ連独裁下で収容所送りとなったソルジェニーツィンに会いに行ったのか? 小生はソルジェニーツィンの代表作「イワン・デニーソヴィチの一日」をしばしば読むのだが、どんな逆境にあっても抵抗しないという「諦観」だけは理解できなかった。
最近、小生が分かったのは、「1940年代に入ると、独ソ戦におけるドイツの侵攻に対して国民の士気を鼓舞する必要に駆られたスターリンは、それまでの物理的破壊を伴った正教会への迫害を方向転換して教会活動の一定の復興を認めた」(WIKI)ということ。
スターリン・ソ連は「運命を従容として受け入れる」ロシア正教会を人民統治に利用してきた。だからソルジェニーツィンも“祖国”の過酷な仕打ちを憎み、恨むことがなかったわけだ。
ロシア人の多くは洗脳されてズブズブ、あるいは普段は羊を装い、戦場では強盗殺人強姦魔。文学の中のロシア人、戦場でのロシア人・・・あまりにもの乖離に世界中の人々は「ロシア人とは距離を置くべし」となったのではないか。“蜃気楼”森喜朗、“アベノミス”安倍晋三・・・プーチンに寄り添って皆裏切られた。
ソ連帝国復興を目指しているプーチンもロシア正教会を大いに利用している。独裁者と邪教のタダレタ関係・・・自由民主圏ではあり得ないが、ロシアではそれが常態だ。WSJ2022/5/26「戦争支持するロシア正教会、プーチン氏と深い絆 キリル総主教は元KGB工作員とみられている」から。
<4月初めの日曜日、モスクワ郊外のロシア軍大聖堂内にロシア正教会の最高指導者が立ち、プーチン大統領の戦争を支持する講話を行った。ロシア軍がウクライナの首都キーウ(キエフ)郊外の町ブチャでウクライナ市民を大量虐殺したとの報道を受け、西側の指導者らが非難したのと同じ日だった。
「ファシズムを打ち破ったのはわれわれだ。もしロシアがいなければ、世界を征服していただろう」。モスクワ総主教キリル1世(75)は、第2次世界大戦でナチスの侵攻にロシアが勝利したことを記念する壮大な建物の中でこう語った。その脇で軍服を着た多くのロシア兵が聴き入っていた。「神は今回もわれわれを助けてくださるだろう」・・・>
BS-TBS「報道1930」2022/4/22もこう報じている。
<ソ連時代弾圧され資産も奪われ崩壊寸前だったロシア正教は、ソ連崩壊の後、息を吹き返す。一方、2000年に大統領に就任したプーチン氏は、共産党の代わりに人心を掌握するために宗教は有効であると考え、ロシア正教をバックアップした。
2010年、プーチン政権はソ連が没収していた正教会の資産を教会に返還。教会はこれで膨大な不動産を所有する。その前年に総主教に就いていたキリル氏は、いうなれば突然大富豪になったことになる。さらにロシアの大富豪たちオリガルヒの資金も教会に入ることになるが、教会の資産の内容に関しては専門家でも、触れることのできない闇となっているという。
その頃から正教会の政治色が強まり、キリル総主教とプーチン大統領の蜜月が始まる。アメリカとの関係が悪くなる中で、国内をまとめる宗教の重要性を高めるプーチン大統領。政権の意向に沿うことで、知的なブレーンがいくら離れようが地位を絶対的なものとしたキリル総主教。
政治と宗教の深いつながりを象徴する建物がある、と小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師は言う。
「(第2次世界大戦の勝利を記念して)2020年にできたロシア軍主聖堂は象徴的だと思う。これはドイツ軍からぶん捕った武器や勲章を溶かして作った鉄骨で建てられている。場所もロシア軍が所有する“愛国者公園”の中に建てた。ここでロシア軍のための祈りをささげる。
正教会はもともと政治色があったが、それが政治の領域だけでなく軍事や安全保障の領域まで全面的に関与するようになった。つまりこれ以降、教会がプーチン政権の軍事政策のバックアップに回ったといってよい」
“侵攻”を推し進めるプーチン大統領と“信仰”の象徴であるキリル総主教のウインウインの関係。一説には、キリル総主教の腕には200万円の腕時計が光り、ヨットも所有するという・・・>
キリルは2009年、英紙「タイムズ」が「ミハイロフというコードネームを持つKGBのエージェントだった」と報じている(Tony Halpin,The Times, 2009/1/26.“Russian Orthodox Church choses between‘ex KGB candidates’as Patriarch”Kirill, 62, was alleged to be an agent codenamed Mikhailov)。
プーチンもKGB出身だが、職業に貴賎なし、職業選択の自由とは言え、宗教のトップや幹部が諜報、謀略、暗殺のプロだった、しかも権力者とベッタリというのは・・・ま、ロシア、中共など共産主義国は「政治と距離を置く」ことを許さないから、宗教も経済も、さらに文学、芸術、スポーツも、何から何まで「アカ」に染まっているか、あるいは「アカ」に有効か、という価値観で政策が決まるということだ。
それは露中北など共産主義独裁国のジョーシキだろうが、国民の忍耐を越えるような圧政、階級格差、食糧不足、戦争などが続けば、国民や軍隊による政権転覆の革命、内戦、紛争、騒擾は免れないのではないか。ロシアがこければドミノで中共、北なども統治が大きく揺らぐ。
西側諸国が露中北への包囲網を敷き、反体制派に武器などを支援すれば独裁政権転覆の可能性は高まることをウクライナ・ロシア戦争は教えてくれた。今年から来年あたりに世界史は大転換を迎えるだろうが、その波にうまく乗った者、つまり勝者が、21世紀の
覇権国家になる。日本のビジョン、西側諸国のビジョンを構築すべきだろう。
・・・・・・・・・・・・・・
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
https://note.com/gifted_hawk281/n/n9b3c7f4231f9
まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」47/通算479 2022/5/27/金】今朝は台風みたいな風雨、春の嵐というのか、雨降って地固まる?か・・・運を天に任すのではなく、固める努力をしないと何事も進まないということだ。這ってでも前進、死ぬまで前進、なかなかヨサゲである。
保守派論客の西尾幹二先生は、小生がアカの残滓をきれいに掃除する上でとてもお世話になった。先生は1935年生まれ、御年86歳だが、久し振りに産経「正論」に寄稿、切れ味は相変わらず抜群だった。その全文が「西尾幹二のインターネット日録」にあったのでキモを転載する。「領土欲の露骨なロシアの時代遅れ」(令和4/2022/5/24)から。
<ロシアのウクライナ侵攻から日本人が得た最大の教訓は何だろうか。重要な教訓は単純な形をしているのが常だ。もし日本が侵攻されたら、日本人はウクライナ人のように勇猛果敢に戦えるだろうか。そのような疑問が私の心を離れない。
【「平和主義」を振りかざすだけ】5月1日のNHK朝の各党党首出演の政治討論会を聴いていて驚いた。自民党から共産党までまったく同じ論調なのである。日本列島がウクライナのようになったらどうしようという国民が抱いたに違いない不安を予感させる言葉はだれの口からも出てこない。
それどころか日本は輝かしい平和主義の国、平和主義を振りかざしていれば無敵、不安なし、平和主義こそが強さの根拠、と居並ぶ各党党首が口を揃えてそう語っているのだ。
私は心底たまげた。ここまで口裏を合わせたかのような一本調子の同一論調、ロシアが再び北海道侵攻を言い出している時代だというのに、首相以下我が国を代表する政治家たちのこんな無防備、不用意な討論会を公共放送が放映する必要があるのだろうか。
雑誌や新聞にロシアに好意的な見方が予想外に数多く見られることにも驚いている。北大西洋条約機構(NATO)が壁をつくったことにも責任があり、ロシアの反発もやむを得ないという同情論である。たしかに孤立したロシアを一方的に追い込むのは危険だという指摘はジョージ・ケナンやキッシンジャーの警告でもあり、人類が歴史に学ぶことがいかに少ないかの例証の一つではある。
けれども現在のロシアが旧ソ連とどれほど違った新しい国に生まれ変わったかにはむしろ大きな疑問がある。スターリンとヒトラーは気脈を通じ合った同時代人であった。ネオナチは今のロシアを指す言葉だと言った方がいい。
【19世紀型植民地帝国主義】今度の侵略で目立つのはロシアの領土欲である。クリミアを手始めに露骨だった。同じことは公海に囲いをつくった中国にも言える。この両国は体制の転換期(1990年前後)に何も学習していない。
世界の覇権には軍事力と経済力以外に独自の文明の力を必要とする。科学技術や人文社会系の学問に秀で、映画など娯楽やスポーツ、農業生産力でも世界をリードすることが求められる。アメリカはそれをやってのけた。戦後世界を支配したのは当然である。
今、覇権の交替を求めている中国には世界を納得させる新しい文明の型を打ち出す力はない。核大国・為替の支配・宇宙進出などアメリカの模倣である。ロシアはそれにさえ及ばない。かくて共産主義の過去に呪われた両国は今では「領土」にこだわる。19世紀型植民地帝国主義を再び演出する以外に手はないようだ。
勿論アメリカの独自路線も少しずつ後退し、誇らしかった月面初到達も今や昔話だ。そして地球の問題を決めるのに少しずつ国際的民主化が進んでいる。
【いわれのない妄想捨てよ】民主化は良いことのようにみえるが、それは自由の幅を広げ、その分だけ不決断ないし無秩序が広がることを意味する。だからバイデン大統領はプーチン大統領が核に一寸でも手をつけたら、アメリカは断固モスクワを核攻撃しますよ、とは決して明言しない。ただ独裁国家の悪を道徳的に非難するばかりで、ロシアへの経済制裁とウクライナへの追加支援を積み重ねていくばかりである。
誰しもが全体の状況を読み切れず一般的不安の中にいる。もし大戦争に拡大したら「貴方がこうすれば私もこうします」とはっきり言わないアメリカ大統領に半ば以上の責任がある。世界の政治はだんだん日本の政治に似てきている。「バイデン」は「岸田」に似てきている。
日本は被爆国であるからこそ同じ体験を二度と味わわないためにハリネズミのように外敵が手を出したら直ちに同程度の報復をする準備体制を完備することがノーモア・ヒロシマの意味ではないか。今のままでいけば日本が3度目の被爆をする可能性は決して小さくはない>
・・・・・・・・・・・
「人気次第で任期が決まる」政治家はTV視聴者に嫌われないように当たり障りのないことを言わざるを得ない、それは西尾先生も承知していながらあえて「こいつらバカか」と嘆いてみせたのは、「すでに有事、危機の時代だ、国民にきちんと説明し、覚悟を促せ」と政治家のケツを蹴飛ばしたということだ。
この論稿が掲載された産経に最新の産経・FNN合同世論調査(そこそこ信頼できそうなRDD方式)があったが、国民は「落選」を恐れるボンクラ政治家よりも「戦争」に危機感を持っているようだ。「敵基地攻撃能力『必要』64% 防衛費6割が増額要求」(2022/5/24)から。
<産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は21、22両日に合同世論調査を実施した。政府が検討を進める敵基地攻撃能力の保有の是非を尋ねたところ「必要」とする回答が64.7%に上った。自民党が提言する防衛費の国内総生産(GDP)比2%以上への引き上げに関しては「2%以上に増やすべきだ」(15.1%)と「2%以上でなくてよいが増やすべきだ」(46.9%)の増額を求める回答が6割以上となった。
ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮の相次ぐミサイル発射による安全保障環境の深刻さが背景にあるとみられる。
岸田文雄内閣の支持率は、前回調査(4月16、17両日)比3.0ポイント増の68.9%で昨年10月の政権発足後最高となった。60%台の支持率は政権発足後8カ月連続。政府の新型コロナウイルス対策やウクライナ危機への対応についていずれも6割以上が評価していることが要因に挙げられる。
対露制裁について日本経済や国民の生活に影響が出る場合も行うべきかを聞いたところ、「行うべきだ」が73.6%に上り、「行わなくてよい」は20.0%だった。
夏の参院選比例代表の投票先を尋ねたところ、自民党39.2%▽立憲民主党7.1%▽日本維新の会5.7%▽公明党3.2%▽国民民主党2.0%▽共産党3.2%-などが続いた。「わからない・言えない」は35.4%だった>
小生の偏見では、立民=革マル中心の新左翼系と日共を合わせると有権者の10%ほどがリベラルを装うアカ≒共産主義独裁の「露中北支持派」である。Japan In-depth 2022/5/25に「清谷信一(防衛ジャーナリスト)安倍元総理の軍拡に対する反論」があり、以下の冒頭を読んでがっかりした。
<・自衛隊の継戦能力の欠如は自衛隊、安倍元首相、自民党政権の当事者意識の欠如が招いたもの。・高コスト組織の予算を増やしても濫費するだけ。NATO諸国、中国は経済成長にあわせ、国防費を増額している。・「借金による軍拡」は自ら危機を招く自殺行為。アベノミクスの失敗を糊塗して国民の目をそらすためではないか>
アベノミクス云々以前に「アベニクシ」、読む気が失せた。調べたら「清谷信一(きよたに しんいち、1962年 - )はジャーナリスト、仮想戦記作家。日本ペンクラブ会員」とあった。日本ペンクラブと言えば似非リベラル≒アカモドキのようだが、まだ生きていたのか!? 日本ペンクラブ2022/4/4から。
<3月20日に行われた日本ペンクラブ主催のシンポジウムに副会長の沼野充義さん(ロシア・スラブ文化専門家/日本ペンクラブ副会長)から貴重なメッセージが寄せられた。沼野氏は現在、病気療養中のためメッセージ「ウクライナで、ロシアで、何が起きているのか?」はロシア文学者の沼野恭子さんに(以下)代読いただいた。
・・・・・・・・
人間を虐殺することは恐ろしいことだが、私にとってもっと恐ろしく思えるのは、今回の戦争を正当化しようとするためにプーチンの発している言葉が最初から最後までほとんどすべてウソだということだ。
相手に批判されるとそれを相手に返す、相手の責任になすりつける。つまり言葉そのものが虐殺されているということである。これは「ロシア文学が大事にしてきた言葉」を殺すということであり、ロシア文学に長らくたずさわってきた者として私はとても悲しい。
ウソの言葉の中でもひどいのは、ウクライナのことを執拗に「ファシスト政権」だの「ネオナチ」だのといった言葉で呼んでいること、ネオナチから解放してやるんだというとんでもないウソをつき続けていることだ。
なぜこうした言葉が繰り返されるのかというと、歴史的な背景があるので、私たちはそれを知っておくべきである。
ソ連は、第二次世界大戦で甚大な被害をこうむり、大変な犠牲を払って戦争を勝利に導いたが、そのことを、歴史的な貢献であり人類の救済であるとして非常に誇りに思っている。だから「ファシスト」「ナチ」というのは最大級の罵り言葉であり、他の国には見られない特別な罵詈雑言である。
そうした言葉を執拗に持ち出してウクライナを攻撃しているのである。ウクライナにもネオナチがまったくいないわけではないが、プーチンは自分のやっていることを棚に上げて、ありもしない罪を人になすりつけている。・・・・
今回の侵攻はプーチンが悪いのは明らかであるが、これはロシアのすべてが悪いということを意味するものではないということを強調しておきたい。ロシア文学は、こういった逆境のなかで、圧政にもかかわらず書かれてきたものである。
プーチンを一つの極端な「極」であるとするなら、本当のロシアというのはロシアの文化や文学であり、こういう機会だからこそ、そうした本当のよき文化・文学を深く理解するべきではないだろうか。ロシア語を学び、ロシア芸術の素晴らしさを認識すべきである。
ここは議論の分かれるところだが、ひょっとしたら、プーチンはロシアではないのではないか。ロシアが生みだした怪物にすぎないのではなかろうか。ロシアのまともな人の中にはプーチン批判をする人がたくさんいる。
選挙でプーチンを選び長く独裁を許してきたのはロシアの国民ではないかという人もいるし、ウクライナ人の中にもそう考える人がいることはたしかだ。しかしこれは簡単に判断できる問題ではないし、日本も選挙で選んだ政権がずっと長く続いていることに国民の責任があると考えられる。
プーチン個人がどの範囲まで悪いのかはここでは深入りして詮索するのを控えるが、少なくとも、そうしたプーチンの蛮行を見れば見るほど、その対極にある文化・芸術・文学の素晴らしさが浮き彫りになってくる。ロシア文学はずっと、野蛮なロシア・暴虐のロシアのもとにあるにもかかわらず生まれ書かれてきたのである>
・・・・・・・・・・・
ロシア文学、芸術、ボリショイサーカス、ロシア人は素晴らしい、悪いのはプーチン一派だ、彼らは自民党と一緒だ、プーチン、安倍晋三、それを支持した両方の国民にも責任がある・・・ということか?
小生は共産主義独裁が諸悪の根源と思っているし、ソ連とヒトラー・ナチスの独ソ不可侵条約(秘密協定)が第二次世界大戦を招いたと解釈しているが・・・自由のないソ連がなぜ「ロシア文学、芸術、ボリショイサーカス」を世界で広めたか、ソ連の宣伝に有効だからだ。「沼野先生、あなたもスターリン・ソ連、プーチン・ロシアのプロパガンダに利用されてきたんですよ」と言いたい。
2000年にプーチンがなぜ、ソ連独裁下で収容所送りとなったソルジェニーツィンに会いに行ったのか? 小生はソルジェニーツィンの代表作「イワン・デニーソヴィチの一日」をしばしば読むのだが、どんな逆境にあっても抵抗しないという「諦観」だけは理解できなかった。
最近、小生が分かったのは、「1940年代に入ると、独ソ戦におけるドイツの侵攻に対して国民の士気を鼓舞する必要に駆られたスターリンは、それまでの物理的破壊を伴った正教会への迫害を方向転換して教会活動の一定の復興を認めた」(WIKI)ということ。
スターリン・ソ連は「運命を従容として受け入れる」ロシア正教会を人民統治に利用してきた。だからソルジェニーツィンも“祖国”の過酷な仕打ちを憎み、恨むことがなかったわけだ。
ロシア人の多くは洗脳されてズブズブ、あるいは普段は羊を装い、戦場では強盗殺人強姦魔。文学の中のロシア人、戦場でのロシア人・・・あまりにもの乖離に世界中の人々は「ロシア人とは距離を置くべし」となったのではないか。“蜃気楼”森喜朗、“アベノミス”安倍晋三・・・プーチンに寄り添って皆裏切られた。
ソ連帝国復興を目指しているプーチンもロシア正教会を大いに利用している。独裁者と邪教のタダレタ関係・・・自由民主圏ではあり得ないが、ロシアではそれが常態だ。WSJ2022/5/26「戦争支持するロシア正教会、プーチン氏と深い絆 キリル総主教は元KGB工作員とみられている」から。
<4月初めの日曜日、モスクワ郊外のロシア軍大聖堂内にロシア正教会の最高指導者が立ち、プーチン大統領の戦争を支持する講話を行った。ロシア軍がウクライナの首都キーウ(キエフ)郊外の町ブチャでウクライナ市民を大量虐殺したとの報道を受け、西側の指導者らが非難したのと同じ日だった。
「ファシズムを打ち破ったのはわれわれだ。もしロシアがいなければ、世界を征服していただろう」。モスクワ総主教キリル1世(75)は、第2次世界大戦でナチスの侵攻にロシアが勝利したことを記念する壮大な建物の中でこう語った。その脇で軍服を着た多くのロシア兵が聴き入っていた。「神は今回もわれわれを助けてくださるだろう」・・・>
BS-TBS「報道1930」2022/4/22もこう報じている。
<ソ連時代弾圧され資産も奪われ崩壊寸前だったロシア正教は、ソ連崩壊の後、息を吹き返す。一方、2000年に大統領に就任したプーチン氏は、共産党の代わりに人心を掌握するために宗教は有効であると考え、ロシア正教をバックアップした。
2010年、プーチン政権はソ連が没収していた正教会の資産を教会に返還。教会はこれで膨大な不動産を所有する。その前年に総主教に就いていたキリル氏は、いうなれば突然大富豪になったことになる。さらにロシアの大富豪たちオリガルヒの資金も教会に入ることになるが、教会の資産の内容に関しては専門家でも、触れることのできない闇となっているという。
その頃から正教会の政治色が強まり、キリル総主教とプーチン大統領の蜜月が始まる。アメリカとの関係が悪くなる中で、国内をまとめる宗教の重要性を高めるプーチン大統領。政権の意向に沿うことで、知的なブレーンがいくら離れようが地位を絶対的なものとしたキリル総主教。
政治と宗教の深いつながりを象徴する建物がある、と小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師は言う。
「(第2次世界大戦の勝利を記念して)2020年にできたロシア軍主聖堂は象徴的だと思う。これはドイツ軍からぶん捕った武器や勲章を溶かして作った鉄骨で建てられている。場所もロシア軍が所有する“愛国者公園”の中に建てた。ここでロシア軍のための祈りをささげる。
正教会はもともと政治色があったが、それが政治の領域だけでなく軍事や安全保障の領域まで全面的に関与するようになった。つまりこれ以降、教会がプーチン政権の軍事政策のバックアップに回ったといってよい」
“侵攻”を推し進めるプーチン大統領と“信仰”の象徴であるキリル総主教のウインウインの関係。一説には、キリル総主教の腕には200万円の腕時計が光り、ヨットも所有するという・・・>
キリルは2009年、英紙「タイムズ」が「ミハイロフというコードネームを持つKGBのエージェントだった」と報じている(Tony Halpin,The Times, 2009/1/26.“Russian Orthodox Church choses between‘ex KGB candidates’as Patriarch”Kirill, 62, was alleged to be an agent codenamed Mikhailov)。
プーチンもKGB出身だが、職業に貴賎なし、職業選択の自由とは言え、宗教のトップや幹部が諜報、謀略、暗殺のプロだった、しかも権力者とベッタリというのは・・・ま、ロシア、中共など共産主義国は「政治と距離を置く」ことを許さないから、宗教も経済も、さらに文学、芸術、スポーツも、何から何まで「アカ」に染まっているか、あるいは「アカ」に有効か、という価値観で政策が決まるということだ。
それは露中北など共産主義独裁国のジョーシキだろうが、国民の忍耐を越えるような圧政、階級格差、食糧不足、戦争などが続けば、国民や軍隊による政権転覆の革命、内戦、紛争、騒擾は免れないのではないか。ロシアがこければドミノで中共、北なども統治が大きく揺らぐ。
西側諸国が露中北への包囲網を敷き、反体制派に武器などを支援すれば独裁政権転覆の可能性は高まることをウクライナ・ロシア戦争は教えてくれた。今年から来年あたりに世界史は大転換を迎えるだろうが、その波にうまく乗った者、つまり勝者が、21世紀の
覇権国家になる。日本のビジョン、西側諸国のビジョンを構築すべきだろう。
・・・・・・・・・・・・・・
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
https://note.com/gifted_hawk281/n/n9b3c7f4231f9
まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」