今年も第九演奏会に行ってきた。
昨年と同じ小林研一郎指揮の日本フィルハーモニーの演奏。ホールも昨年と同じ池袋の芸劇だった。ここ数年、第九は、コバケンの演奏を聴いている。毎年聴くと少し暑苦しくも思えてくるが、かと言って別の指揮者で聴く気にもなれず、このペアが自分のなかでは定番となりつつある。毎年のことだが、このコバケンは、この暮れに来て集中的に第九を取り上げるが、4人のソリストは変わらずも、合唱団は2種類あり、音大生中心の合唱団と、もうひとつは、この第九を唄うために組成した、いわば臨時の第九合唱団。昨年は、この第九のための合唱団で聴いたが、今年は学生中心に組まれた合唱団。やはり随分と印象が違ってくる。好みの問題ではあると思うが、明らかに今年の演奏には、そういった若い要素も含んだ上での前進性が楽曲を支配し、特に、第4楽章からの合唱を含む以降の解釈は、昨年からはかなり変わってきていた。個々に綴ると長くなるので書かないが、今年は、4人のソリストたちが絶好調のようで、多分、指揮者コバケンの支持だと思われるが、各声部が手にとるように明確に表現されていた。それは、緩急自在な解釈により、よりいっそう際立っていて素晴らしく、過去に例をみない演奏のように思う。それに加えて、先ほど述べた合唱団の生き生きとしたハーモニーが素晴らしく、時に優しく、時に厳しく豹変する歌心は賛美に値する。
情熱的な演奏の終演後、この長いエスカレーターに乗らされ、地上に降りる頃には、嫌でも現実に引き戻されてしまうのである。大ホールは、音響が素晴らしいだけに、このエスカレーターだけは、如何ともしがたく、アントンKをこのホールから遠ざけている理由の一つなのだ。
J.S.バッハ G線上のアリア
J.S.バッハ トッカータとフーガ二短調 BWV.565
ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調「合唱付き」 OP125
指揮 小林研一郎
日本フィルハーモニー交響楽団
Og 長井浩美
Sp 市原 愛
Al 清水 華澄
Te 錦織 健
Br 青戸 知
Ch 東京音楽大学