指揮者アーノンクールが亡くなってはや半年が過ぎようとしている。(1929-2016 86歳没)
この訃報を耳にする前から、アーノンクールがベートーヴェンの交響曲の録音を開始したらしいとの情報があったが、全集を完成させることもなく天に召されてしまった。アントンKは、あまりこの指揮者については良く知らないし、実演もとうとう一度も聴くことなく終わってしまった。ただ、数々の実演のライブ演奏や、CDに触れ、とにかく一筋縄ではいかないあくの強い個性的な解釈の指揮者という印象をもっていた。
アーノンクールが、昔ウィーン・フィルを引きつれて来日し、その時のライブをテレビで見たことがある。確かモーツァルトの35番と、ブルックナーの5番だったと記憶しているが、その個性的な演奏にテレビにくぎ付けになってしまったことを思い出す。モーツァルトにおいて、譜面の改変、そしてアタックの多様。これは凄い指揮者だと直感したものだ。一時は色々と録音をあさって聞きかじったこともあるが、どうもアントンKには、指揮者アーノンクールのワザとらしさとでもいうのか、作為的な解釈が鼻につき(耳につきか?)飽きてしまう感覚になった。実演も聴かずして結論づけるのも良くないが、実演を聴くことでその印象も変わったのではないかと思うと残念に思えてならないのだ。
今回の話題にあげるCDは、そんなアーノンクールの生涯最後とされる録音。ベートーヴェンの第4と第5だ。
やはり期待に違わず、相変わらずの個性的な演奏が繰り広げられている。そしてどちらも無機質でクール。作曲者ベートーヴェンの「心の叫び」は聴き取れなかった。実に表面的で、突然のフォルツァンドも、意味のないピアニッシモも、浅く気持ちが通わない。そしてマニアの間では話題となった、第5の終楽章のコーダのテンポ。どういう意図があるのだろうか。素人のアントンKには全く判らない。こういう演奏を聴くと、譜面を信じて忠実に演奏することを常に心がけた朝比奈隆の演奏が懐かしく思えてならない。そんなに効果を意図しなくても、どれだけ心から感動できただろうか。変に難しく考えることで、本来楽曲の持っている大きさが殺がれてしまっているように思えてならない。だから、音楽は面白いとも言えるのだが・・・
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンセルト・ムジークス
ベートーヴェン 交響曲第4番 変ロ長調 OP60
交響曲第5番 ハ短調 OP67