アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

1万人の第9演奏会

2016-12-25 10:00:00 | 音楽/芸術

今年は色々な都合が重なり、第九演奏会には行かなかった。毎年この時期には一度は聴きに行っていた演奏会ではあったが、今年は音楽鑑賞についても、この歳になって新たな発見や想いもあり、初めからチケットは予約せずに来てしまった。今までにも第九演奏会(実演)を聴かずに年越ししたことはあるが、その分自室のCDで楽しむ第九も、まあこれはこれで良いものだ。これまで朝比奈/新日本フィルの第九(FOCD9045/7)を10往復くらいしたか。朝比奈と言えば、当然大阪フィルとなるが、今回の新日本フィル盤もアントンKのお気に入りの一つ。N響盤と並んで、大フィル以外のオケを指揮した時の朝比奈の執念とも採れる音づくりが好きだ。大フィルの時には、自分の身体の一部のようなものだから、言葉にしなくても、意思疎通は限りなく測れるが、在京オケとの演奏は、出来不出来が顕著となり、それはそれでスリリングな体験を伴い気が置けないのだ。そんな中、この新日本フィルを振った第九演奏は、重厚な響きの中、指揮者朝比奈の個性丸出しの内容で、個人的にはポイントは高い。昨年の上岡氏の第九のような演奏が許容される時代で、世の中も様変わりしているが、こういった20世紀を代表するようなベートーヴェンは、これからも絶えることはないだろう。少なくとも、アントンKには、生涯の友と成りうる。

さて、毎年恒例となっている、1万人の第九演奏会。大阪城ホールにて行われている。アントンKは、この手のイベント意識の強い演奏会には極力出向かないが、実体験として一度は聴きたいという気持ちもある。マーラーの8番を「1000人」の交響曲というように、プレーヤーを1万人数えて演奏している訳ではないだろうが、そのくらい大勢で第九を歌おうというものだろう。会場自体、クラシック音楽を鑑賞するという場所ではないだろうし、昔普門館でベルリン・フィルを聴いた時のような、どこか注意散漫な音楽になってはしないかと想像に難しくないが、芸術性を求めず、その大きな音楽の空間に身を置くということで、また別な想いが生まれるのかもしれない。何と言っても、大勢の合唱団の生きた声が、どれだけのエネルギーを教授してくれるのかは理解しているつもりだ。人間の心のこもった歌声は、楽器演奏よりはるかに叙情的と考えられるからだ。しかし一人の指揮者が、これだけのプレーヤーをまとめることは困難極まり、演奏内容云々より、無事演奏を終える事だけに終始しそうな内容だろうか。聴いているさなか、そんな事を考えさせられてしまうかもと思うと中々楽しめないだろう。聴いてもいない段階で想像するのは危険だが、指揮者の佐渡裕氏とは今まで縁のないアントンKだから仕方がないことだ。