現代では、団体臨時列車そのものが減少し、効率化からか、そういった時世なのか、個々で移動する手段が目についてしまう。決して旅行者が減少しているわけではなく、移動手段が変化した結果なのだろう。昔は、滅多に見られない列車や、普段通らない路線を行く列車など、意外性や希少性がアントンKの写欲を掻き立てていた。もちろん、写真を記録として最大限に生かす方法として撮影していた。がしかし、今では随分とその感情も変わった。意外性や希少性よりも、日常の記録や光景の方が、親しみが沸き、思い入れやあるいは個人的執着に繋がっていく。どこか自分だけの世界が、その1枚に表されているとしたら最高なのだが。そんな納得できる1枚は、容易いものではない。
恵比寿ビールの倉庫前を行く、EF5870けん引団体列車。長い12系客車を牽いている。おそらく東海道線からの継承で品川から山手貨物線に入り、北に向かう列車だろう。前にも紹介したが、当時の山手貨物線は、こういった臨時列車がよくあり、これも当時は日常の光景だった。あの頃を思えば、ゴハチの12系なんて、なんの希少性もなかったはず。しかし長い月日が経過した現在、改めて眺めると、こういった日常こそ懐かしく心に響く。背後の倉庫も懐かしく、一時はビアガーデンに変貌していた時期もあったが、現在はそんな跡形も無くなっている。
1978-10-15 9101ㇾ EF5870 12系 山手貨物線:恵比寿付近にて