全国にある色々な機関車が、大好きな客車を牽いているところを撮影したい。こんな欲望が昔は写欲の中心にあったことが多かったアントンK。10系寝台客車に始まり、61系お座敷編成やグリーン車の編成。20系客車を始めとするブルートレイン用の客車編成。これらの気に入った客車たちが、全国各地に配置されている機関車にけん引されているシーンを撮影することだ。だから、常にその被写体は臨時列車とは限らず、定期列車でも、自分の好きな客車編成であればいつも注目していたのだ。
10系寝台車やお座敷編成は、今から考えると早々に引退して次のジョイフルトレインと呼ばれる客車たちにバトンを渡しているから、思うようには撮影は出来なかった現実がある。しかしアントンKの次なるターゲットは自然と20系客車へと移行していった。定期列車や多客臨をも含めて20系使用の列車も残存していた時代だったが、この後、老朽化のためか一部の団臨用を残して急速に消えてしまうことになるのだ。当時は20系使用列車と言えば、東海道線の急行「銀河」が代表格であり、宮原機関区のEF58 に牽かれて東上する列車はいつも魅力的だったが、とうとう東京区のEF5861がけん引した実績は無かったように思う。季節臨で保管された51号~52号にはよく姿を現したものだが、こちらは14系座席車であり、あまり面白みが無かったのである。こうなると、怖いもの見たさということは無いが、滅多に見られないロクイチ+20系という被写体を撮りたくなるのが鉄チャンの限りなき欲望というもの。そのチャンスを静かに待っていたことを思い出す。そしてついにその時が到来するのである。20系客車の疎開回送列車がEF5861けん引に抜擢され、いかにも泣き出しそうな空模様中、根府川を通過していった。確かに茶色いゴハチが20系を牽いてきたことは間違いないが、カマ次位のカニ21+カニ21が気に入らず、ドボンしたことをこの画像を見て鮮明に思い出してしまった。こんな小さなエピソードも、今となっては良き思い出に変わっている。
1982-11-16 回7111ㇾ EF5861 20系10両 東海道本線:根府川にて