アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

薄味に終わった大野和士のマーラー演奏

2023-04-15 12:00:00 | 音楽/芸術
今回は、40年来の親友のお誘いを受け都響の定演を聴いてきた。楽曲はマーラー一曲というアントンK好みのプログラムだったが、音楽監督の大野和士氏の作る音楽が過去の経験上あまり好きではなかったため、お誘いを受けなかったらスルーしていた演奏会だった。お互い年相応にか野暮用が増え、なかなか普段から会えなくなってしまったから、今回は再会が目的で鑑賞は二の次になっていたかも。少々不真面目な鑑賞となった。
 都響は相変わらず上手く、豪快でいて絢爛な音づくりだった。マーラーの第7と言えば、声楽こそないが舞台所狭しとなりフルオーケストラ音楽の中でも大掛かりな編成で、オケの醍醐味は存分に味わえる楽曲。冒頭から活躍するホルン群の雄弁さは、これぞマーラーと呼びたくなるくらいの迫力で我々を魅了していたように思う。その他の金管楽器群、木管楽器群もクライマックス時のパワーと響きの美しさは特質に値した。が反面、弦楽器群、特に1stVnやVlaが大事な箇所で響かず、拍子抜けしたのだ。この辺、指揮者大野氏の音楽作りと大いに関係しているはずだが、全奏時におけるオケの響きが、バランスに欠けていると感じた。テンポを大いに動かし、最後はオケを煽りまくって終結したが、どこか大野氏の冷静沈着な感情が音楽に融合されずに終わった感覚だった。そこには、人間のあらゆる感情、情念といった精神性は無く、かなり内容が薄味でさっぱりした物のように感じてしまったのである。
 滅多に生演奏に接することのできないマーラー第7だから、テンシュテットのライブやバルビローリ、都響で言えば、古くは若杉弘、そしてインバルのマーラーを描いて会場へと向かったが、予想通りというか、オケは素晴らしいのに演奏そのものは駄演に終わっていた。やはり音楽は理屈ではない。理攻めで楽譜を読み、そこから作曲者の想いを音にすることの意味、難しさを改めて考えさせられた。度々出てくる弦楽器ソロパートの貧弱な響き一つ採っても変に納得させられるのである。いつも指標にしているソロコンマスの崔文洙氏だったら、ここはどんな響きになるだろうと、鑑賞しながら考えてしまったくらい。やはり音楽とは深く尊いもの。天国もあれば地獄に落ちることもあるのだ。

東京都交響楽団 972回定期演奏会Bシリーズ
マーラー 交響曲第7番 ホ短調

指揮者   大野 和士
コンマス  山本 友重

2023年4月13日 東京サントリーホール



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