新入りの朝顔葛を追ひ払う 楽蜂
近所の空き地の崖を外来性のマルバアメリカアサガオがすっかり覆い尽している(上の写真)。今までは葛(クズ)がこの場所を優占していたが、おそらく誰かがそれを除去した後に、この朝顔が急激にはびこったものだろう。この朝顔は日本古来の朝顔と花はよく似ているが、葉っぱが厚くて広く遠慮会釈もなく増えるので、まったく趣がない。おまけに花季が長く、遅いものでは12月になっても咲いていたりする。花色はやぼったい濃い紫である。インターネット情報では、これが一部の農地に侵入して被害をもたらしているそうだ。
日本伝来の朝顔は、俳句で夏の季語として、さわやかさ、すずしさ、しずかさ、せつなさを表す代表的な夏季の風物であった。筆者の好きな朝顔の俳句五句。
朝顔に我は飯食ふ男かな 芭蕉
あさがほの花はぢけたりはなひとつ 暁台
朝顔や一輪深き淵の色 蕪村
朝貎や咲いた許りの命かな 漱石
朝顔の紺の彼方の月日かな 波郷
この外来種の朝顔ではとてもこんな句を作る気にならない。日本の自然はどんどん外来の侵入種のために変化してきたが、最近の花屋の店頭に並ぶ花もほとんど外国産のものだ。野外フィールドだけでなく、感覚フィールドでの侵入種による撹乱も「日本人の遺伝子」にとっては問題である。