映画を観た。
★スカイ・クロラ
The Sky Crawlers
監督:押井 守
音楽:川井 憲次
声の出演:加藤浩次、テリー伊藤、菊地凛子、加瀬亮、谷原章介、他
2008/日本
原作「スカイ・クロラ」シリーズは、
地上の人間臭さやしがらみを嫌い、空を舞い、ただただ戦う瞬間に生を燃やす「キルドレ」たちの刹那感や焦燥感、そして爽快感が語られ、「生きる意味」を繰り返し繰り返し、謎のように問いかけている。地上での物語の説明はできるだけ簡潔にして、空での飛行戦に多くの文章を費やしている。
このメビウスの輪のような物語を、
監督押井さんは、1作目の「スカイ・クロラ」の物語をある程度忠実に追いかけながらも、かなり解り易く人間くさいドラマに仕上げた。誰でもが感情移入しやすい地上のドラマの部分を再編することによって、ちょっとメロドラマ風にしてしまった。脚本チームは行定勲さんチームである。
映画の物語展開はかなり原作を追いかけているが、ドラマの再編にあたっての方向は「人間臭さ」という情緒面の強化である。そのためのいくつかの作戦が実施された。
1・整備士の笹倉を女性にしたこと。これは意味がある。キルドレを見守る母性愛を演出し、情緒の強化。
2・主題の「愛と生と死」というコピーを全面に押し出し、メロドラマ仕立てにしてしまった。その結果、地上の物語の鬱具合が増した。原作とは逆の方向に向った。
3・カンナミ:加瀬亮、クサナギ:菊地凛子、トキノ:谷原章介はこの映画の物語にはドンピシャ。特に、クサナギの声に菊池凛子さんの声の表情がばっちり合い、人間臭くて情緒の濃いそしてどこか子供っぽいクサナギが生れた。
4・舞台をヨーロッパ北西部の海岸地帯に限定したことで、物語に潤いを与えた。ケルトの文様の石碑などが描かれていたので、アイルランドなどの湿気の多い海岸地帯だろうか?
5・戦闘の3Dと地上の物語の線画を上手く使い分け、世界観の均衡を保っている。3Dの部分はほんとに美しい映像であるが、線画の部分はもう一工夫あっても良かったのではという物足りなさを感じた。
などなどかな。
テーマを絞り、非常に解りやすい(感情移入しやすい)映画だった。
不特定多数の観客に訴えるようにした戦略は成功である。
劇場でも男女を問わず年代を問わず、いろんな層の人たちがいた。
外国人も数グループいた。
原作のシリーズを読んでいるので、物語の展開の先は読めている。
アニメをどのように仕上げたかというところに関心いくのは仕方がない。
観てから読むのか、読んでから観るのか。
映画を先に観るほうが、新鮮な驚き、感動が高くて愉しめそうな気がする。
一番美しい所は、白い線が微妙に揺れながら、飛行場に着陸する場面。
白い線と黄緑の原野の対比が美しく、緩やかな間が心地よかった。
穏やかな間。
生と死の穏やかな間。