N の 祝祭日

映画、読書などのメモ

成瀬は信じた道をゆく

2024-02-14 | 

 

★成瀬は信じた道をゆく
著者:宮島 未奈
出版社:新潮社


一作目の破天荒な世界観、想像を絶する成瀬の人物像に魅了され、
二作目も本屋さんで購入。
そして一気読み。
成瀬、再び降臨かと思ったが、
それほど刺激的でもなかった。
それは何故か。

無理やり続編?
付け足し感?

物語全体がちょっと説明的になった?

とはいえ、滋賀県のみなさんは大喜びでしょう。
僕もそれなりに愉しんだ。

 

この春はミシガンのスケッチに行く予定。

 

 

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猫を棄てる 父親について語るとき

2023-08-13 | 

 

★猫を棄てる 父親について語るとき
村上春樹
文春文庫


猫を棄てるとは何事だ!
と思い読んでみた文庫本。

今まで語られてこなかった自らの幼い体験。
父親との忘れられない記憶の断片。

そうか、村上さんはお寺さんの関係者?だったのか
と初めて知りました。
それもあの京都の有名なお寺の。

淡々とした語り口が何となく切なかったです。
イラストレーションも何となくノスタルジア。

何となくというのは便利な言葉だなぁ。

 

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名画を見る眼 カラー版 1、2(岩波新書 新赤版)

2023-07-22 | 

 

★名画を見る眼 カラー版 1 油彩画誕生からマネまで (岩波新書 新赤版)
★名画を見る眼 カラー版 2 印象派からピカソまで (岩波新書 新赤版)
高階 秀爾
岩波新書

 

カラー版として再登場。
猛暑の一日
涼しい部屋に閉じこもってゆっくり読んだ。
久しぶりに高階 秀爾さんの文章を読んだ。
忘れていた若いころの感覚が少し蘇ってきた。
こういう本読みもいいかもしれない。

 

 

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成瀬は天下を取りにいく

2023-06-08 | 

 

★成瀬は天下を取りにいく
宮島 未奈
新潮社


これはこれは痛快でした。
西武大津店には少しばかり思い出がありますので
このお話は少々身に迫る。

閉塞感漂うこの世間ですが、
こんな若者たちに未来を託したいなぁ。

 

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運命の絵

2022-03-09 | 

 

★運命の絵
著者:中野京子
文春文庫

 


表紙は
マネが描いた
『フォリー・ベルジェールのバー』

この絵をこんな解説付きで観たことはなかった。
見え方が違ってくる。


だんだんと好奇心が刺激される。


特に「おお!」「へえ〜」と感じたのは
ブリューゲル 「雪中の狩人」の巻。

もう逃れられない。
一気読みでした。

 

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元彼の遺言状

2022-01-23 | 

 

★元彼の遺言状
新川帆立
宝島社文庫


第19回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。
奇妙な遺言状をめぐる遺産相続ミステリー。
勢いのある筆力が心地よく、
一気読み。


遺産相続の話としてミステリーは展開するが、
実は男の哀しいかなプライドの話。
女からみれば不可解ではあるが可愛い男のプライド。
随所にその「不可解な可愛いプライド」が散りばめられ、
物語進行のキーワードになる。
女からみた男たちの一断面。
爽快でした。
次作も読んでみたい。


笑、笑、苦笑いの連続。


男の人ってなんでこう、自分の輝かしい過去のアレコレを切り取って話したがるのだろう。しかも自分からではなく、誰かに話してほしいと乞われたから仕方なくという体をとって。本当に面倒だ。

 

男の人ってどうして、自分の過去をアレコレを大袈裟に膨らませて、いかに自分が葛藤を抱えたのかとか、傷を負ったとか、そんな話を吹聴するのだろう。

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追懐のコヨーテ

2022-01-12 | 

 

★追懐のコヨーテ
森博嗣
講談社文庫 The cream of the notes


森博嗣さんの小説は数冊読んだが
このようなエッセイを読むのは初めて。
森さん自身はある程度定期的に出しているようです。


コロナ禍の時代、
森博嗣さんはどのように考えどのように生活しているのか。
興味があって購入。


まぁ、森さんらしいというか
孤独が好きなんだなと。
静かにお暮らしのようでした。

「仕事」というのは、つまり罰ゲームである。
「全力を尽くすな」が親父の教えの一つだった。
・・・・・
などなど、共感できる視点。
対人感覚、社会感覚は僕とよく似ているなぁ。
タイトルの付け方の上手い人だなぁとつくづく感心。

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君は永遠にそいつらより若い

2021-12-05 | 

 

★君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫)
津村記久子
ちくま文庫

作者名は知らなかったが
このタイトルは永遠に魅力的だ。
本屋でつい手を出し購入。

作者のデビュー作だという。
ということは、作者のエッセンスの全てが
詰まってる、凝縮されているということ。


けっこうグダグダ話が展開する。
気だるさ、無力感などもさらり。
現代の若者らしいユーモア、誠実さを伝え、
不器用だが前向きに生きている若者たちの姿。

 

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線は、僕を描く

2021-11-27 | 

 

★線は、僕を描く
著者:砥上 裕將
講談社文庫

 


水墨画の世界をちょっと覗かせていただいた。
著者自身が水墨画作家ということで、
自分の想いや、制作スタイルなどを
物語の中に落としこんでいるので、
最後まで興味深く読んだ。


水墨画家を何人か登場させているが、
それぞれに個性があって
彼らの作品の雰囲気が伝わるのが
筆者の筆力。


湖山先生の
「絵は絵空事だよ」

僕は最後までこの言葉に拘りました。
達観した表現ですが、
意味ある言葉だなと思っています。

希望や光明を紡ぐ物語。
ポジティーブな世界観でした。 

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死神の浮力

2020-04-15 | 

 

★死神の浮力
著者:伊坂幸太郎
出版社:文藝春秋 

もし、自分の大切な家族や人が突然いなくなったら
たとえば、もし我が子が、凶悪な犯罪の犠牲になったら、
と、想像するだけでも耐え難いこと。
もし可能ならば、できるだけの反撃を加えたいと正直に想う。
物語はそんな人間の心情を題材に、ユーモアを交えて、恐怖や不安や希望を描いている。

死神千葉の再登場。
彼の任務は、対象となる人間と7日間行動をともにし、
その人物を死なせてもいいか否かを判断するということ。
前回よりもかなりハードでドライになっていると感じたが、
ハートフルな死神であることことに変わりはない。
前作映画《死神の精度》の金城武さんの姿や台詞回しが頭から離れず。
読書中もちらちら。

面白く読んだが、
ガチで感想をを言うならば、
《もうすこしテンポ良く》を期待したい。
いろいろコネタを挿入して無理矢理引き延ばしているのでは。
でも7日間の猶予があるんでしかたないか。
そこがこの物語のキモでもあるし。
いろいろ伏線を貼付けるのが、
伊坂さんの特徴でもあるし。

 

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なぞの転校生

2019-11-20 | 

 

 

★なぞの転校生
著者:眉村 卓
出版社:講談社


追悼 眉村 卓さん

 

SF作家眉村 卓さんの作品を紹介します。
「なぞの転校生」
50年ほど前の作品。
60年代の危機感が色濃く反映されている。
当時は東西冷戦の時代である。
キューバ危機、そして、ベトナム戦争など、
第二次世界大戦後の不安定さが最もヒートアップした時代であり、
特に核戦争への不安は極限的に増幅された時代である。
《なぞの転校生》はその核への不安を題材に、
次元放浪民という聞きなれない人々を登場させている。
タイムマシンによる過去未来を行き来するのではなく、
並列的に存在する幾つかの世界(次元)を移動する人という設定。
60年代のSF物語とはいえ、
半世紀後の現在にも通じるような物語であることに、
新鮮さと衝撃を感じた。


話は変わるが、
以前は《反核》は日本の目指す方向だったと想う。
核兵器に関する非核三原則は国是であり、
平和利用としての核エネルギーに関しても相当な慎重スタイルだったと思う。
しかし何時頃からか、
その姿勢が怪しくなる。
そしてついに不感症になる。
果ては、行け行けドンドン式になった。
核への不安と不信は全く解消されたわけではないのに、
全くの不感症。

2度の被曝と最大のメルトダウンを経験したのは世界で日本だけ。
しかしへこたれずに不感症。
富を求めて核エネルギーにすがる。

核の傘の下で平和を叫ぶことは偽善である。
私たちの社会は不感症と偽善に満ち溢れている。

 

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わたしを離さないで

2019-10-04 | 

サー・カズオ・イシグロさん作品。
ノーベル文学賞作家です。
淡々とした語り口に引きこまれます。

 

 


★わたしを離さないで
著者:カズオ・イシグロ
訳者:土屋政雄
出版社: 早川書房

 

2011年に公開(日本)されたイギリス映画《わたしを離さないで》の原作。
公開当時はかなりの衝撃作として、
また注目の若手俳優の共演ということでも話題になりました、


物語はさもありふれた日常だったかのように淡々と過去が語られています。
しかし、若者たちの日常は、読み進むに連れ《不気味感が増幅》してゆきます。
それでもなお、抑制を効かせ、一層《美しい青春物語》かのように記憶が語られます。
(映画のシーンより)

 

 

彼らは、《クローン人間》です。
《臓器提供者》として作られ、
大人になるまでの一定期間隔離された施設で
何不自由なく育つことになります。
施設での他愛のない平和的な日常が淡々と語られ、
そして、その後、施設を出、
《提供期間》の絶望と希望も、抗議するでなく、
またもや淡々と語られます。
その際立った抑制された文章がむしろ異様なくらいです。
そして異様な世界だからこそ、
《人間本質》みたいなものをさらりと描いています。


作者カズオ・イシグロが書き込みたかったものは何でしょうか?
単に、《人間生命の倫理観》だけとは思えません。
過去の記憶が余りにも美しく描かれ、
登場人物たちの《過去への記憶の浄化作用》は尋常ではないような気がします。
せめて《生きた過去》を《美しいものだった》と無理やり思いたいような行動。
それは《記憶の捏造》とも言えるような気がします。
《記憶の捏造》こそ、人間の本質そのもの。
彼の関心はそこでしょうか?
浅学なる私の勝手な憶測。


数十年前ですが、《クローン羊》の誕生がイギリスで話題になりました。
クローン技術の哺乳類での成功は、我々人類にも適用できるということです。
SF世界では、戦闘要員や特殊工作員など、いろいろ物語が作られ、
最近では、テレビでも度々ドラマ化されます。
しかし、
《臓器提供》というまさに《生命の倫理観》に関わる物語は
やはり心穏やかでない世界です。

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八月の六日間

2019-08-03 | 

 

★八月の六日間
著者:北村薫
出版社: KADOKAWA/角川書店

 


本屋でたまたま眼に止めた本。
以前、新聞書評欄で好評だったのを思い出した。
ページをめくると、
かって若いころ登ったコースの地図が載っている。
おつ、これは!
自分の思い出をたどりつつ読んでみよう。

 


神々しい山のことが書いてあるかと思ったが
こそばゆいくらいのファンタジーな山の小説だった。
ちょっと危なっかしい山の小説だった。
作者の北村さんは、
実際に山に上った体験を書いているわけではない。
というか、
まったく上らずに、山のことを描いている。
作者の取材力は凄い。
読みながら自分も山の気分を味わった。

いろいろ小ネタを散りばめて飽きさせず、
ラストまで気持よく読ませてもらった。

《あずさ2号》問題のウンチクは面白かった。
男は別れた女に思いを残したりする。
だが女は、思い出を美化などしない
それはそれとして取っておこうーなんて考えないらしい。

 

しかし、この本の主人公は、その思い出に囚われ、
忘れるために仕事をし、
時間をリセットするために、
一人山に上る。

読みながら、
自分の登った山の道や、眺めた山の姿を思い出した。
蝶、常念、燕コースがなかなかの臨場感溢れる文章。

山へ行きたいなぁ。

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移動祝祭日

2019-08-03 | 

 

★移動祝祭日
著者:アーネスト・ヘミングウェイ
訳者:高見浩
出版社:新潮社

1920年代、パリでの創作?の日々を回想したもの。
ヘミングウェイの死後に発表されたので、
事実上の遺作といわれています。

内容は、ヘミングウェイの芸術論が時々展開されますが、
ほとんどは、パリでの放蕩生活の回想録みたいなもの。
何ぶん、年代が年代なので、ぴーんとくる感覚は少ないですが
青春ものはやはり気持ちがいい。

映画、《ミッドナイト・イン・パリ》を思いだしました。
映像がいろいろ浮かんできます。
また観たくなりました。 

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ウォールフラワー

2019-07-10 | 

 

★ウォールフラワー(文庫本)
著者:スティーブン・チョボスキー
訳者:田内志文
出版社:集英社

1999年にアメリカで刊行された
《The Perks of Being a Wallflower》の全訳である。
以前にも翻訳され刊行されているようだが
(小西未来訳、アーティストハウス)
今回は、新訳となる。

アメリカでは、青春小説のベストセラーとして、
サリンジャーの《ライ麦畑でつかまえて》と比較されているようだ。
ある学校では必読書として推薦され、
またある学校では禁書として扱われる問題作といわれるとか。

 


読んでみた。
15歳高校一年生チャーリーが見知らぬ誰かに手紙を書きながら、
なかなか人に言えぬ感情を発散させるというスタイル。
書簡体小説にしたことによって、
この年令の少年が抱くナイーブな心情が一層引き出されていた。
手紙というより、日記みたい。

主人公は幼い頃に性的虐待を受け、
それがもとで精神の問題を抱え、
幻覚に悩まされている。
そしてさらに、友人の自殺などもあり、孤独な日々。
高校生になっても、誰にも相手にされない日々。
パーティに行っても、仲間に入れず、
まさに《ウォールフラワー》(壁の花という意味)
そんなチャーリーを仲間として受け入れたのは、
やはり心の中に問題を抱えるパトリックとサム。
小説はこの3人の物語。
日付は、1991年8月25日から、翌年の8月23日まで。


車、喫煙、薬物の乱用、同性愛、セックスなど
ティーンエイジャーの関心事が盛りだくさん。
アメリカの高校生の実態はほとんど知らないので、
日本の高校生とははずいぶんと違う、
そのことにびっくりする。
アメリカ高校生の実態を写すものならば、
かなりショッキングな内容だと思う。


体験の苦しさ、傷の重さに比例するかのように、
人への優しさ、理解の感情が育っていく。
繊細な感情の語り口は、
小説全体に優しさを与えていた。

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