朝焼けを見るために

神様からの贈り物。一瞬の時。

夢かなう時

2007-06-06 18:43:24 | 流水子
誰もいない店に一人佇む。今、夢がひとつ叶おうとしている。絶対に負けるものか、そう思い続けてきた。
ドロップアウトした12年前を思い出す。先が見えない不安と、あいつは・・そう影で言われる声が悔しかった。夢を追いかけようとしただけだった。夢を掴めると信じていた。夢を叶えるために、何を捨てたのだろう。学歴、友情、仲間、そして夢を追いかけることだけに夢中になった。必死に受験勉強に勤しむ学友。そんな中、たった一人向かう夢が違っただけだった。何も後悔はしていない、しないでいよう、そう心に誓った日がまるで昨日のことのように鮮やかに思い出された。

全てがそろった店内。出来る限りの想いを込めた。壁の色一つ、ソファーの手触り一つ、間接照明の色合い、揃える数々の酒の種類、そしてグラス一つ一つにまで、こだわりにこだわり、妥協はしなかった。
ここに一つの夢を叶えるために。
確かに負けないできた。走り続けてきた。チャンスは逃がすものかとどこかで焦っていた。時間が流れるたびに、自分の道が見えてきた。その道が正道なのか、今もまだわからない。でも、自分の前に引かれたレールに乗っていこうと決めたのは、誰でもない自分自身だ。
このままでもそう思い出した頃、同世代の仲間が、一人、また一人と同じ水の中で勝負をかけていく。平静を装いながら、心ざわめく自分が見えた。取り残されていくような感覚を覚えた。


あと数時間で、夢が叶う。
準備は万端整った。落ち度なない。信頼のおけるスタッフもいる。また一つの夢を求めて、勝負が始まる。

卸し立てのスーツ、ネクタイの結び目に手をやる。



ネームをかけなおした鉄の扉が開いた。
今日、この日を祝福してくれるスタンドがまた一つ、そしてまた一つと狭い踊り場に並ぶ。

楽しもう、今を。全ての想いを楽しもう。
心ゆくまで、時間を忘れて楽しんでいただくために。
たった一人の男から、オーナーの顔に、この夢を叶える箱で別の一人を演じきろう。


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