Diana Krall - White Christmas
『他人には嘘をつかないのに、どうして自分に嘘をつき続けるの?』
随分と時を隔てて、偶然に逢った人。その夜酔いも程よく回り、カラオケの雑踏の中、手相の話しに。
手を左親指を上に組み、腕は右が上。手の平を見たとたん、
「こんなワガママに人みたことない。こんなウソツキみたことがない。」
そうその人は叫んだ。そう、叫んだ。
苦笑いしかでてこなかった。酔いがさめそうだった。さらに酔いが回りそうだった。
一瞬にして、心の中を見透かされたような気がして、そのまま笑ってごまかした。手が触れ合ったまま。
「同じニオイ、ヒネタ心のニオイ。」
そう小さく呟いた、その人の言葉も聞き逃さなかった。
「何なんだよぉ。その同じニオイって。どんなニオイなんだよ。」
いたずらっ子のように笑ったその人の目は、少しだけ寂しさを浮かべていた。
それから数日後、突然送られてきたメールには、優しい言葉も誘いの言葉もなく、
『どうして自分に嘘をつき続けるの?』
だった。
人には嘘をつかない。誠実であることがせめてもの自分の慰めである。そんなこと誰にも言ったことはない。理解されることもないから。
人に誠実でありつづけることは、自分に嘘をつき続けることだった。自分に嘘をつき続けること、そんなウソツキは自分以外に出遭ったことはない。少なくとも今のいままでは。
「いったい何があったんだよ。」
肩に寄せた私の髪をなぜながら、あなたは相変わらずのぶっきらぼうな言い方で、まるで独り言のように言った。
「何をそんな我慢してんだよ。」
さっきよりも少しだけ優しく、でも、やっぱりぶっきらぼうな独り言をつぶやいた。
ただ、肩が触れ合っているそれだけのことで、自分が優しくなっていくような気がした。
その人の心の棘が、どんなものなのか何もしらないけれど、私の心の棘がどんなものなのか、
その人は知る由もないけれど、それでも互いの心の棘が、静かにそれぞれの体内の中でゆっくりと溶けていくような気がした。
甘えるのではない。そう、誰に許しを求めるのでもなく、自分自身を許すことが出来るそんな感覚をつかんでいた。
何もないから、その人に向かう。何かがあったなら、その出来事に向かう。正面から。
何もないということは、自分の心に向かうこと。自分に向かっていくことは闘い続けること。
闘い続けることは苦しくて、辛くて、そこから逃げるには自分に嘘をつく。
ひとつついた嘘は、次の嘘を産み、また次の嘘をつく。永遠のスパイラルのように抜け道のない嘘をつく。誰にも悟られないように。
泣く場所をさがしているのだろうか。ふとそう思うときがある。
心と突っ張っていきてきた。そうしないと前に向かえないから。
今まで一度も、誰かの胸で、誰かの肩で、誰かの背中で泣いたことはない。
泣かないと嘘をついていきてきたから。
『他人には嘘をつかないのに、どうして自分に嘘をつき続けるの?』
随分と時を隔てて、偶然に逢った人。その夜酔いも程よく回り、カラオケの雑踏の中、手相の話しに。
手を左親指を上に組み、腕は右が上。手の平を見たとたん、
「こんなワガママに人みたことない。こんなウソツキみたことがない。」
そうその人は叫んだ。そう、叫んだ。
苦笑いしかでてこなかった。酔いがさめそうだった。さらに酔いが回りそうだった。
一瞬にして、心の中を見透かされたような気がして、そのまま笑ってごまかした。手が触れ合ったまま。
「同じニオイ、ヒネタ心のニオイ。」
そう小さく呟いた、その人の言葉も聞き逃さなかった。
「何なんだよぉ。その同じニオイって。どんなニオイなんだよ。」
いたずらっ子のように笑ったその人の目は、少しだけ寂しさを浮かべていた。
それから数日後、突然送られてきたメールには、優しい言葉も誘いの言葉もなく、
『どうして自分に嘘をつき続けるの?』
だった。
人には嘘をつかない。誠実であることがせめてもの自分の慰めである。そんなこと誰にも言ったことはない。理解されることもないから。
人に誠実でありつづけることは、自分に嘘をつき続けることだった。自分に嘘をつき続けること、そんなウソツキは自分以外に出遭ったことはない。少なくとも今のいままでは。
「いったい何があったんだよ。」
肩に寄せた私の髪をなぜながら、あなたは相変わらずのぶっきらぼうな言い方で、まるで独り言のように言った。
「何をそんな我慢してんだよ。」
さっきよりも少しだけ優しく、でも、やっぱりぶっきらぼうな独り言をつぶやいた。
ただ、肩が触れ合っているそれだけのことで、自分が優しくなっていくような気がした。
その人の心の棘が、どんなものなのか何もしらないけれど、私の心の棘がどんなものなのか、
その人は知る由もないけれど、それでも互いの心の棘が、静かにそれぞれの体内の中でゆっくりと溶けていくような気がした。
甘えるのではない。そう、誰に許しを求めるのでもなく、自分自身を許すことが出来るそんな感覚をつかんでいた。
何もないから、その人に向かう。何かがあったなら、その出来事に向かう。正面から。
何もないということは、自分の心に向かうこと。自分に向かっていくことは闘い続けること。
闘い続けることは苦しくて、辛くて、そこから逃げるには自分に嘘をつく。
ひとつついた嘘は、次の嘘を産み、また次の嘘をつく。永遠のスパイラルのように抜け道のない嘘をつく。誰にも悟られないように。
泣く場所をさがしているのだろうか。ふとそう思うときがある。
心と突っ張っていきてきた。そうしないと前に向かえないから。
今まで一度も、誰かの胸で、誰かの肩で、誰かの背中で泣いたことはない。
泣かないと嘘をついていきてきたから。
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