朝焼けを見るために

神様からの贈り物。一瞬の時。

呼吸する水

2007-06-08 17:51:12 | 流水子
『ミズヲエタサカナ』
ネオンのように頭の中に突然点滅し始めた文字。数回繰り返されるまで、その点滅するカタカナの文字が意図することが分からなかった。
『ミズヲエタサカナ』
『みずをえたさかな』
・・・
『水を得た魚』
なんだ、水を得た魚か。そう思った瞬間に、布団を跳ね除けてベットの上に起き上がった。
ベットにやっと潜り込んだのは何時だっただろう。最後のお客さまが帰って、アルコールで重くなった体を、騙し騙し一人で片づけを始めたのは、薄っすらと東の空が明らむ頃だった。



「あの日、私は一人で泣いていたの。」
グラスを作る手を、止めそうになった。聞いているのに、聞こえないふりをした。
「貴方が、一番忙しかったあの日、私は一人で泣いていたの。」
「・・・」
スコッチをグラスに注ぎ・・
「割らないでね。」
お酒の呑み方は、その人の生き方と共通する部分がるのかもしれない。ふとそんなことを思う。
ミネラルウォーターを注ぎかけたその手を止めた。
「貴方の作るグラスの音を聞いていたの。聞こえるはずはない音を聞いていたの。ベットの上で眠れなくて・・・気が付いたら泣いていたのよ、私。」
カランとグラスのアイスを回し、スコッチを口に含むその人の少し伏せた目を見ていた。
いつも力強い光は、少しだけ緩んでいた。





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