朝焼けを見るために

神様からの贈り物。一瞬の時。

溶けてしまうまで

2010-02-16 17:19:50 | 流水子
「どうして溜まっていくの?」
久しぶりの電話は、いつもと変わらない軽やかな声だった。
なのに、何かをぶつけてくるようなそんな響きを含んでいた。


小さな祈り~P.S.アイラヴユー / 徳永英明



「なぜなのかわからないけれど、どんどんたまっていくのよ。寂しさと悲しさが。不満のある生活じゃないわ。前にも言ったけど。どちらかと言うと幸せなのよ。ほんの少しだけ、人から羨ましいと思われる生活が出来ているわ。なのに、胸の中にたまっていくものは、大きくなって重たくなって、決して溶けていかないの。」
何を言ったらいいのだろうか、言葉はいらない。慰めのことばも、励ましの言葉も彼女は求めてはいない。そのことは、誰よりもよく知っている。
彼女が18の頃から、ずっと見てきた。恋するたびに、傷つくたびに、ただ黙って見て来た。彼女の気持ちが、落ち着くまで。

「眠れない夜が続くの。お酒には呑まれないわ、大人だから。でも、お酒の力をかりて、ベットにもぐりこむの。部屋の電気はいつもの通り真っ暗にするの。テレビの電源の小さな明かりまでも消して。出窓のカーテンだけは、レースのままに。こぼれてくる、お月様の灯だけが、ベットにもぐりこむ私を優しく包むの。でもね、眠ることのできない夜は、その優しい灯さえも怖い。」
夜が好きだった。そう、夜が。闇の中に身を置くと、不思議に落ち着くのだといつだったか彼女は言った。
お酒を教え込んだのは、誰でもない。俺たちだった。まだ、18の彼女を連れて歩いて、一端の大人の顔をして、『男』って奴を語ったのは、あの頃の俺たちだった。

「其処にいるのに、ここにいないの?」
酔っているのだろうか?そんなことはない。昼間だ。
















もういいや。書かない。


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