美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

刑罰と更生と

2015-09-25 11:34:37 | Weblog

昨年7月、長崎県 佐世保市で起きた高1女子生徒殺害事件の加害者少女に対し、長崎家裁は「第3種(旧・医療)少年院」送致とする保護処分を決定しました。家裁送致時、長崎地検側は「刑事処分が相当」との意見でしたが、最終的に裁判長は「少女の特性からは、刑罰による抑止は効果がなく、治療教育の実施が望ましい」と判断したものです。未成年者であるという以上に、今でも殺人欲求を持ち続けていると伝えられる加害者の精神的特殊性を加味した場合、通常の刑務所での拘留は症状を悪化させるだけかも知れません。刑罰としての意味も与えられず、反省や贖罪の気持ちも生まれない留置生活より、医療少年院での治療による更生の可能性に裁判所は賭けたのでしょう。一方、大切な命を奪われた被害者の家族にとっては、刑罰ではなく更生の為の治療という判断は、事件の内容や加害者の情報公開も一切制限されてしまい納得できるものとは言い難いでしょう。さらに医療少年院の収容期間が最長でも26歳未満までで、その後の社会復帰の問題も国全体の考える課題となります。

紀元前4世紀から3世紀初め遼河流域に存在したとされる古朝鮮には「八条禁法」が定められていました。これによると、人を殺した者は直ちに死刑に処し、人に傷害を加えた者は穀物で賠償しなければなりませんでした。また、他人のものを盗んだ者は奴隷にしたが、許しを請うためには50万銭を払うことになっています。この法律のおかげで、人民は泥棒の心配がいらず門を閉める必要もなく、すべての女性は貞節を守って、淫乱やひねくれたところがなかったと。禁法を通して古朝鮮の社会が一定の法律のもとに統治されていたと伝えられています。社会が存在し、人類が初めて社会という集団体制の中で法を定めたとき、罰は法を犯したものに対する懲らしめや報復でした。ハンムラビ法典や八条法禁も被害者や家族が直接‘かたき’を討てない時に国や社会が代わって刑罰を与えることで、民衆を納得させ秩序を維持させたわけです。やがて近代になり、刑罰の意味に加えて、矯正の意識が生まれてきます。特に人間的に未成熟と見做される未成年者に対しての少年法の理念はまさに更生手段としての考え方にあります。

韓国の少年犯出身の3人に2人は成人犯に発展するというデータがあります。韓国だけでなく、日本を含めた先進国が試行錯誤を繰り返しながらも少年法のあり方や更生プログラムに力を入れているのは、罰よりも矯正することが社会にとって最も効率的であると感じているからでしょう。しかし、仇討を禁じた以上、被害者とその家族に対しての精神的ケア―や補償システムも決しても社会全体で進めていかなければ片手落ちです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿