無竆花(ムグンファ)と 桜
日本の国花は?というと桜がと考える人が多いと思います。しかし、国技と言われる相撲と同じように、日本では国花、国技を正式に定めてはいないようです。ただ、慣習的には桜と菊を 国の花として親しんできました。そもそも国花とは、長く国民に愛され、その象徴として考えられた花(植物、木)のことですから、その民族の意識や価値観を表現するものもあります。ちなみに中国は牡丹、台湾は梅です。
韓国の国花は、無竆花(ムグンファ、むくげ)です。学名はHibiscus synacusでハイビスカスの仲間のようですが、南国的なイメージはなく、むしろ東洋的で、白、紫、淡赤などの可憐な花びらをもった美しい花です。無竆花は、古代中国では、朝咲き夕方にはしぼむ花の短さから、瞬時の花として‘舜’と呼ばれていたようです。一方 昔から朝鮮では、一つ一つの花は短命でも、遅い春から夏をへて、秋まで次々と長く咲き続けることから‘無竆花’と呼ばれました。このように深く韓国で愛されてきた無竆花ですが、日本の植民地時代には、国の受難と共に試練の時代がありました。その当時、正式に制定されたものではなかったにせよ、民族の花として意識されてきた無竆花に対して、朝鮮民族・文化の日本化政策のなか、日本の統治政府は、独立運動の象徴として弾圧しました。全国に無竆花の植樹を禁止し、代わりに桜を植えさせ、また、無竆花を「目に血花」と呼んで見るだけで目が充血するとか、「おでき花」と呼んで、触るとおできができるなどの噂を流すなど、かなり執拗な花攻撃があったと言います。しかし、そのような悲遇のなか、無竆花はその名の通り、長く、しぶとく咲き続けたのです。
桜に日本人が感じる美意識には、あでやかに咲いたあとパッと散る潔さ、儚さというものがあるかも知れません。一方、無窮花には、一日々繰り返し、咲き変わり咲き続けるたくましさに民族の未来を映したのでしょう。