先週 DNA検査で血縁関係がないと鑑別された場合、法律上の父子関係を取り消すことができるか否かの判断が日本の最高裁判所によって下されました。判決がなされたのは3件のケースで、2件は妻側から、1件は夫側からの訴えでした。いずれに対しても最高裁判所はDNA鑑別という新しい科学的手法にたいする特例を認めず、「科学的証明を根拠に法的な父子関係は取り消せない」として従来の民法第772条「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する(摘出推定)」の原則をそのまま適応しました。3件の裁判のうち一件は、既に夫婦関係は解消し、元妻は血縁上の父親と再婚、子供も引き取られた状況でありながら、父子関係を失いたくないという夫の願いが通じたもので特に注目されました。しかし、子供にとっては実の父親と生活しながら、法律上の別の父が存在するということになります。判決は5人の裁判官中賛成3、反対2というなかでの多数決によるものでしたから、難しい判断であったことは想像できます
民法の摘出推定は、百数十年前の明治時代に当時の「家」制度を基につくられたもので、当然DNA鑑定などは想定していません。家族関係も多様化し、価値観も変化している今日にあっているかどうか議論の余地がありそうです。家族制度と言えば韓国では2005年3月に従来の「戸主制度」の全面廃止という民法の画期的な大改正が行われました。そもそも韓国の戸主制度は、植民地下にあった韓国で日本の民法を土台として、儒教的韓国の封建的な家族の考え方に、日本の戸籍が合体してつくられたものだといわれます。戸主制度の下では、結婚すると妻は夫の戸籍に入り、戸主の継承は、夫、息子、男性の孫の順で、男性がいない場合のみ娘、その次が妻となります。子どもは父親の姓を名乗り、両親が離婚しても子どもは父親の戸籍に残されます。母親に親権が移り、母親が再婚したとしても子供の姓は前夫のままで、一家族で皆異なる姓を持つわけです。男尊女卑というだけでなく、現代の道徳観念に照らしても多くが不自然と感じるのは当然です。この法改正も男の子を産みやすくする漢方薬を求める女性の相談メールが逆に、インターネット上で戸主制の不合理意見を集約することになり法改正運動に繋がったと言われますから、何とも新旧混在の韓国らしいですね。
一方手軽になったDNA鑑定ですが、妻の浮気を疑った夫からの依頼が多いようです。結果に関わらず信頼が破綻することもあり夫婦関係が壊れるだけでなく、結局傷つくのは子供であることを思えば今回の最高裁判所の判断は、親子や人間関係の意味に対する警告とも受け取れます。