インバウンド医療観光について
インバウンド(inbound)という言葉をご存知でしょうか?これは「外から内に入ってくる。」という意味で、観光の世界では、訪日外国人旅行者のことで、その逆はアウトバウンド(outbound)日本人の海外旅行者を指します。日本は、アウトバウンドに比べ、インバウンド観光の比率が低く、外国人旅行者受け入れ数は、国際ランキングは32位に留まっています。(世界観光機関2005年統計)
そこで日本政府は、観光立国の実現のため、2009年10月‘観光庁’を設置して、2010年までに海外旅行客1000万人到達を目標にあげました。その目玉の一つとして注目を浴びているのが医療観光です。同様に観光を国の主幹産業として育成させようと考えて来たインド、シンガポール、タイ、韓国などでは既に国を挙げて、この医療観光に取り組んでいますので、日本はやや出遅れた観があります。観光庁は、まずアジアでの日本の医療技術に対する信頼性、安全性また、高度な医療機器、そして温泉などの地域的な特徴を生かして、中国などの富裕層を招致すべく、実証事業のプロジェクトを始めました。私のクリニックは、東大病院の事業推進委員の推薦から、美容医療パートでテストクリニックとして参加、協力することになり、この一ヶ月、その対応に追われています。(文頭で偉そうにインバウンド云々と解説しましたが、私もそれまで初耳だったのです・・・)
少し前までは、強い円を懐に、礼儀正しく文句は少ないということで、世界の有名ホテルのアンケートにおいて望ましいお客の第一に選ばれる日本人観光客でしたが、その地位も中国に奪われるのも時間の問題。受け入れる側となると、様々な文化、習慣を持ち、コストパフォーマンスに敏感な外国人に対する柔軟な対応が必要です。ましてや医療となると、言語の問題、医療文化の違い、医療ビザの必要性、現行の国内保険医療制度との区別など観光庁だけでは、どうしようもない部分があります。それでも、歯の治療はA国、胃の手術はB国、人間ドッグはC国でという 時代は、もうすぐそこまで来ているのかも知れません。