先日 患者さんから洗うだけで肌が白くなり、シミやしわが消える石鹸の広告に関して質問されました。
その商品を紹介しているサイトを見てみると確かに洗うだけで漂白効果?があるとうたっています。説明にはメラニン濃度が35%以上の肌(この表現も意味不明ですが・・・)にだけ反応し、シミ、くすみを洗い流し、白い肌になれるとあります。さらにパリコレ常連のトップモデルであるという黒人女性が使用し白い肌になったというコメントと共に、女性の手の甲部分の写真が掲載されていました。明らかに皮膚の一部のメラニン細胞が何らかの原因で減少、消失してしまい皮膚の色が白く抜けてしまう病気である白斑症(一般的に‘しろなまず’と言われるもの)の写真です。先天性、遺伝性のものと後天性の白斑症あり、後天性では、ストレス、薬剤、化学物質、自己免疫疾患、感染症など様々な原因があり、年に9万人以上報告され決して少ないものではありません。また、治療法も状態や原因によって選択されますが、まだ完全ではなく悩んでいる人が多いのも事実です。それだけに、このような広告に利用されることは決して許されるものではないでしょう。
もちろん、少しでも医学的知識があればこのようなニセ情報に惑わされることはないでしょうが、今回の美白石鹸?に限らず、いかにも最新の研究成果であるように思わせる表現は巧みです。医学用語っぽい単語を並べ、外国や国内の研究機関名をちらつかせ信じさせようとします。また、有名人や海外のセレブが使っているとか、匿名の体験談を載せる、また情報源のはっきりしない統計結果やグラフ、アンケートなどをそれらしく説明しているのも多いようです。特にシミ、ニキビ、しわ、薄毛、ダイエット、健康サプリメントなど関心が高い悩みで、手軽さやお小遣いで何とかかえるネット販売は、そのようなニセ美容医学のターゲットになりやすいかもしれません。
モノの真偽を見極めることはどんな分野でも簡単ではありませんが、少なくても痩せる、細くなる、毛が生える、白くなる、しわが無くなる等々、簡単に体や皮膚が変化することは医学的に容易い変化ではないのです。簡単に、飲むだけで、塗るだけでそれが可能になる化粧品や栄養剤、サプリメントは存在しないと考えて間違いありません。
アジアン美容クリニック 院長 帝京大学医学部 形成外科 美容外科講師 鄭 憲