美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

科学の貢献

2016-01-21 14:48:51 | Weblog

今年のノーベル医学賞は、南米やアフリカ、アジアなどの地域でのマラリアや寄生虫感染症の薬剤発見、開発に寄与した3名に贈られました。残念ながら韓国の研究者は含まれていませんが、2名は中国、日本の学者であり、この分野での東アジアの貢献度高さが示されたことは誇らくあります。近年では先進諸国を中心に、高齢化に伴い罹患者も増加してきた癌、アルツハイマーや肥満、高血圧、糖尿病などに関係する治療薬、そして次世代の医療と見做される再生医学や遺伝子治療に注目が集まりがちです。大手製薬会社が研究開発費を投じるにあたって得られる利益を考えると当然の方向かも知れません。しかし、南米、アフリカ、南アジアでの5歳未満児の死亡率は圧倒的に高く、原因の40%以上が細菌、寄生虫によるものです。また、戦後 日本人、韓国人の平均寿命が急激に伸びに影響を与えた要因をあげるとしたら栄養の改善とともに医学分野ならば感染症対策でしょう。

 受賞者の一人、中国中医学院の屠ユウユウ研究員は東晋時代の古代薬学書『肘後備急方』からヒントを得、青蒿(セイコウ:和名 クソニンジンArtemisia annua)というキク科の薬草から分離された成分アルテミシニンがマラリアに有効である事を発見しました。マラリアはWHOをはじめ国際社会が取り組むべき三大感染症対策の一つに挙げられ、今でも年間 患者数は2億5千万、死亡者はおよそ80万人にのぼります。屠氏は中国本土出身で海外留学の経験もなく、中国文化大革命のさなか徒手空拳で研究を続けてきました。さらに

アルテミシニンは西洋医学ではなく、「伝統薬から開発された医薬品としては、20世紀後半における最大の業績」と称えられだけに、今回の栄誉にたいする中国での反響は当然です。一方、米国ドリュー大学のウィリアム・キャンベル博士と北里大学の大村智・特別栄誉教授は寄生虫に対する抗生物質「エバーメクチン」を発見した功績で受賞しました。この薬は重症化すると失明を引き起こすオンコセルカ感染症やリンパ系フィラリア症(象皮症)の予防に劇的な効果を発揮し、「アフリカを中心に2億人を失明から救った」といわれます。異色の研究者という意味では、大村教授も中国の屠氏に引けを取りません。山梨大学自然科学科の学生時代はスキー・クロスカントリーに打ち込み、「県内に敵なし」というほどの腕前で国体にも出場、卒業後は教師を志し教員採用試験を受け定時制高校で化学と体育を教えます。定時制ということで同年代の生徒相手の授業がうまく進められず、「学び直す」必要を感じ大学院に入ったのが研究者としてのスタートだと述べています。

 その後、紆余曲折を経て米国留学した大村教授が、米国化学会の大物教授に認められた理由は「研究だけではなく学生の指導ができた」為でした。また。スキー選手時代に「レベルの高い環境に身を置く大切さ。人まねはしないで努力を重ねることの重要さを学んだ」と述べています。異色の経歴はけっして無駄ではなかったようです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする