先々週大韓形成外科学会に招待され参加してきました。臨床発表の中でも特に美容手術の分野では、日本よりも症例数も豊富で、手術手技的にも進んでいる分野も多く、興味深いものでしたが、それ以上に招待いただいた大韓形成外科学会の金容培理事長はじめ、学会の理事の先生方と韓日の形成外科の現状や問題点について話す機会を持つことが何よりも今回の最大の目的であり、その意味では非常に貴重な時間でした。韓日両国の形成外科医は多くの相似点を持っている反面、開業医となった場合の両者の診療スタイルや治療内容の違いは、両国の医療制度、保険制度の違いによるところが大きいと感じました。
日本の場合、国民皆保険制度が様々な疾患に対して広範囲で適応されているため、形成外科医も多くの治療を保険内で行うことができる反面、保険適応されない自費となる治療との併用つまり‘混合診療’は禁止されています。一方、韓国でも国民皆保険はありますが、日本より適応範囲が広くなく、その面 混合診療が認められています。その為、韓国の形成外科医は、特に個人的な開業となると保険診療だけでは経営的に病院を維持することは難しく、自費診療が中心となる美容外科を選択する比率が高くなります。韓国の形成外科医がほぼ美容外科をメインとして開業するのはその為だといえます。勿論韓国内での美容外科需要が高いこともこの傾向を後押ししている要因ではありますが、多くの形成外科専門医が美容外科診療の道を選択したことが逆に需要を増加させたとも考えられます。
大韓形成外科学会理事の一人で大学の大先輩である教授と話しているとき、ちょうど通りがかった別の医師を大学時代の部下で非常に‘凄腕’スタッフだということで紹介されました。その教授の意味ありげな笑顔と、照れ臭そうに挨拶をするその先生の態度が気になり、彼が去った後に尋ねると、笑いながらその先生にまつわる昔の武勇伝を話してくれました。当時、大学病院内で形成外科と口腔外科の間で、患者の取り合いが頻繁にあり、医局同士で非常に険悪な、いわゆる一触即発状態になっていたそうです。そんなある日、口腔外科の医師二人がその医師のもとにまさに‘殴り込み’にきたところを‘返り討ち?’にしたうえ、事後処理も上手く行い、医局同士の抗争?を解決した伝説の男だということでした。その先生も今は開業し、その手腕からか非常に繁盛しているようです。朴教授は冗談交じりに話ながらも、現行の医療制度に関してはまだまだ改善点が必要だと話してくれました。
医師の能力としては、当然医学的な専門性が基本ですが、実際の診療の場では、それと同じくらい患者さんはもとより周囲のスタッフとのコミュニケーっション能力が重要だと感じることは多くあります。しかしさらに‘腕っぷし’となると私も明日から道場通いですね。