非婚時代
先日 日本に住まわれている韓国人の患者さんに、「先生も結婚するとき、鍵3個もらったの?」と突然聞かれ、一瞬何のことかと戸惑いました。確かに以前、韓国では、医者の婿を迎えるには、鍵が三つは必要だと言われていたのを聞いたことがあります。つまり、マンションの鍵、病院の鍵、車の鍵のことらしいですが・・・そのぐらいしないと、医者の婿は来ないし、医者の方でもそのぐらい期待するということだったのでしょう。つまり、金持ちの嫁を貰うというのが、人生の勝ちパターンと信じていた時代があったということです。先ほどの患者さんも年頃の娘さんがいて、医者のところに嫁にやりたいけど、大変そうだと心配顔でした。医者の婿が良いか、悪いかわからないけど、少なくとも私は自転車の鍵も貰ってないし、今ではそんなことないのではと言うと、少し安心したようです。
とにかく、結婚というと、当人以上に親、親戚が関わって、そこに、先ほどのようないい婿には貢物(みつぎもの)意識が一部残っているため、結婚を否定的に考える女性が増えた原因の一つでしょうか。それがまた、よく伝えられる、韓国の独身率、離婚率の増加に影響しているかも知れません。勿論、個の時代、人生の中で結婚、家族に対する意識、価値観が、変化してきていることは先進国を中心に世界的な傾向とも言えますが、資源が少なく人が財産という国にとっては、急激な出生率の減少は大問題です。韓国の2008年度出生率は1.19と再び減少し、不況の中1.0を切る可能性も出てきました。
アメリカ高齢化協会(AGE)理事のポール・ヒューイット博士が韓国春川で開かれた講演「高齢化社会の懸念と課題」で韓国がこのまま出生率が低下し続けると、2100年には人口が三分の一に、2200年には僅か140万人まで減ってしまうと警告しました。極端な予想とはいえ、笑って見過ごせないのも事実です。
結婚といえば、遅婚、非婚もそうですが、せっかく結婚してもすぐに離婚してしまうのも、最近の傾向のようです。合わない相手ならお互いダメージが少ないうちにとは、ある意味合理的ですが、理想の相手が、条件だけで見つかるものでしょうか。最も離婚率の低い日本の村に取材したレポートで、夫婦円満の秘訣は?と聞かれ「忍耐と寛容」と答えた老夫婦の答えが印象的でした。
『東洋経済日報 2009.4.24掲載』