1990年に韓国で上映されヒットした「将軍の息子」という映画がありました。公開時ソウルで友人と一緒に観ましたが、私にとっては初めての韓国任侠映画です。主人公は、実在の人物で、出生は朝鮮独立闘争の英雄 金佐鎮(キム・ジャジン)将軍の息子でありなが訳ああって浮浪者の街からジュモク(こぶし)一本で這い上がり、やがて一大勢力を作り上げて民衆の尊敬を受け、独立後政界にまで進出した金斗漢(キム・ドゥハン)の半生記を描いたものです。三部作で私は一部しか観ていませんが、1930~40年代の日本統治下で、昔のソウル(京城)を舞台に、抗争に明け暮れる内容で、お決まりの抗日的な部分もありましたが、適役の日本人もなかなかカッコよく、まさに 任侠ものとしての十分楽しめる作品だったと言えます。
日本でもやくざ映画は、昔ほどではないものの、北野武監督作品などで今でも取り上げられ、それなりの支持を受けています。ただ、世代は変わり昔の人情、仁義の世界での勧善懲悪的なストーリーから、暴力の美学と悲哀を描くものが増えてきているのは感じます。日本語の「やくざ」にあたる韓国語は「カンペ」でしょうか。ぺ(牌)は、徒党、集団、仲間を指しますし、カンは俗語で火薬、爆弾の雷管を表す俗語であり、いかにも危なっかしい人種を表していますね。また、ジュモク(こぶし)ぺとも言いますかが、こちらはさらにわかりやすい表現です。韓国では、刑事もの、サスペンスものでも、やくざ映画に劣らず激しくリアルな暴力シーンが暫し登場するのは、どこかに暴力的な強さへの畏敬やある意味あこがれがあり、そこにはもしかすると、軍隊生活の影響もあるのでしょうか。
世界的な名作の一つにあげられる「ゴットファーザー」もまさに裏社会を描いた作品です。マフィアとは、イタリアのシチリア島で結成された犯罪組織が起源とされていますが、マフィアという言葉の語源に関しては明確なものはありません。ただ、よく言われるのが13世紀、フランスの過酷な支配下にあったシチリア島民の反乱(シチリアの晩鍾事件、1281年)時の合言葉 「Morte alla Francia Italia anela(全てのフランス人に死を、これはイタリアの叫び)」の頭文字がMAFIA(マフィア)であるという説です。悪でありながら、時にドラマチックに描かれるのには、そんな民族の迫害と抵抗がある為でしょうか。