美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

マスクの効用

2015-03-31 15:46:45 | Weblog

7~8年前から月に数回、某私立大学での美容外科指導の一環として学生実習にくる医学生の指導や講義を続けてきましたが、特にこの2~,3年気になることがあります。私が話をしている間もマスクをつけたままの学生が多く、特に女子学生の場合その割合が高いように感じます。大学病院内の実習ですから、衛生、予防面でとも考えますが、臨床現場で患者さんの相手をしているものでもなく、講義室での指導中の上、質問をしてもマスクはとる様子はあまりないようです。私に顔を覚えられたくないのか?などと邪推してしまいますが、勿論それは考え過ぎでしょう。ただ私の年代では年上や教師の前でマスクをとらないのは失礼という以前に(そもそもマスクなどあまりしませんでしたが・・)奇人扱いされたでしょうね。
他の国に比べ日本人のマスク使用率は世界的にも高いのは知られた事実です。勿論近年、黄砂やPM25などの大気汚染が深刻な中国の大都市圏、そしてその隣国として影響を受けざるを得ない韓国でもマスクの着用は増えてはいるでしょうが、それでも日本には及ばないでしょう。日本のある製薬会社の調査では、ほぼ毎日マスクを使用する人の割合はほぼ3人に1人です。もし欧米でマスクをして歩けば、特殊な病気の持ち主か、何か顔を見られたくない理由があるかで、周囲から奇異な目で見られるのがおちです。このように日本人のマスク使用の理由はどこにあるのでしょうか。考えられるのは日本人の衛生意識の高さに加えて、それを煽るようなマスコミによる花粉症やインフルエンザ、その他海外の感染事例の過度とも思える報道やニュースの影響です。勿論、花粉症の辛さは大変なものですが、マスクでどの程度緩和されるかは正直疑問です。そして、もうひとつは日本人の基本道徳である「人に迷惑をかけない」意識です。咳やくしゃみは勿論、風邪を他人に移してはいけないという思い、そして周囲も最低限のエチケットとしてマスクくらいはと無言で要求する雰囲気が存在します。こちらも、本来なら外出を控えた方が周りのためですが・・・では医学生たちのマスクの理由は?私なりに考えるとマスクのもう一つの目的、まさに顔を隠す効果
ではないかと。顔を半分隠すことで、ある意味気後れしないサングラスのような効果が心地よいのかも知れません。「他人の目を気にする社会」=ストレスに繋がるならば、現代日本人の些細な抵抗でしょうか。
マスクつまりお面と言えば、日本の能面は一種研ぎ澄まされた無表情を装っていますが、演者の動きに合わせて雄弁へと変化します。対照的に高麗時代末ごろに形成され河回村に伝承される「河回別神グッタルノリ」などの伝統芸能韓国の仮面はみるからに表情が豊かでユーモラスです。「切りあご」の形をとるお面は能の起源ともいわれますが、素顔を隠すマスクでさえ民族性が表れるのが不思議です。

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歴史の点と線、映画「国際市場で逢いましょう」

2015-03-24 12:21:01 | Weblog

海外のニュースで連日報道される内乱や戦争、テロ。映像から流れる悲惨な現状には誰もが胸を痛めます。ただ日本で暮らしている私たちにはどこか他人事と感じるのも事実でしょう。それに比べ、北朝鮮と未だ休戦状態にある韓国は徴兵制のもと軍は常に緊張状態にあります。しかし、そんな韓国の人々も実際の戦争を経験した人は年々減少し、戦乱後の復興や様々な貧困時代を知らない若者が社会の中心となっています。僅か70年ほど前の出来事、父親や祖父が懸命に生き抜いてきた時代、話しても理解されないことを知ってか語られずにきた過去が映画「国際市場で逢いましょう(原題 国際市場)」のテーマです。
昨年末に公開され観客動員1300万人以上という歴代2位の記録的ヒットとなった映画「国際市場で逢いましょう」の主人公は歴史上の英雄でも偉人でもない、ただ家族を守るために自らに鞭打って己の身を犠牲にして生きてきた父親たちの一人のです。映画の舞台となった釜山の国際市場。1945年日本の敗戦により韓国は独立、この地に居た日本人が立ち去る際に戦時統制物資を売り始め、当時は空き地であった場所に自然発生的に常設市場が生まれたのが始まりといわれます。そして1950年夏、朝鮮戦争が勃発し南下する人民軍によって瞬く間にソウルまで占領され、韓国軍はアメリカ軍の支援を受けて何とか釜山を臨時首都にして踏みとどりました。この時北部からの避難民が商売を始め、アメリカ軍の軍用物資を横流ししたものや釜山港を通して密輸したものなども売られる闇市的な市場として形成され、大きくなったとも言われます。避難中に離散した父に代わって子供の頃n家長として、母や弟妹を支え続けた主人公がベトナムに志願してでも守りたかった国際市場の小さな露店「コップニ(コップンの店)」。時代は現代となり再開発計画から周囲の店は立ち退く中、やはり頑なに一人古ぼけた店に執着する老いた彼は最後にその理由を妻に語ります。「未来志向の関係、過去に拘らないビジョン」そんなスローガンで通り過ぎるだけでは、本当の今そして未来が開かれるのではないことを私たちに気づかせてくれます。
話題の一つが東方神起のユンホ初の映画本格デビュー作でもあるとのこと。ベトナム戦争に技術者として遠征した主人公の命を救う海兵隊員役でなかなかですが、出演料は児童福祉機関に全額寄付と聞きさすがのナイスガイ振りです。日本では5月16日よりロードショーが決定ということです、是非「国際市場」で祖父母や両親が遺した今に逢いましょう!

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火病(ファッピョン)と対人恐怖症

2015-03-03 16:22:39 | Weblog

先日 韓国の中央日報で、韓国健康保険審査評価院の調査から「火病(鬱火病)」で診療を受けた患者が年間11万5000人に達するとの結果が出たとの記事を目にしました。その約1ヶ月前の記事では、某就職ポータル会社のアンケート調査によると韓国人サラリーマンの90%以上が「火病(鬱火病)にかかったことがある」と答えたとの結果も掲載されました。一般的には韓国人特有の精神症候と理解されているのが火病です。サラリーマンの90%で罹患経験があり、年間11万人以上が治療を受けているという内容だけだといかにも国民病の様に思えますが、果たして本当に韓国人だけの症状なのでしょうか?
アメリカの精神疾患診断マニュアルであるDSM-IVの巻末付録「文化的定式化の概説と文化に結び付いた症候群の用語集」では「火病」について以下のように記載されています。
【hwa-byung(wool-hwa-byungとしても知られている):韓国の民俗的症候群で、英語には“anger syndrome”(憤怒症候群)」と文字どおりに訳されており、怒りの抑制によるとされている。症候としては、不眠、疲労、パニック、切迫した死への恐怖、不快感情、消化不良、食欲不振、呼吸困難、動悸、全身の疼痛、心窩部に塊がある感覚などを呈する。】このように米国精神医学会で火病を「朝鮮民族特有の文化依存症候群の一つ」として扱い診断マニュアルにも紹介されるようになったのは在米韓国人医師Lin KMらの論文が1983年に"American Journal of Psychiatry"という権威ある精神科雑誌に載ったことが始まりです。文献によると火病患者は経済的弱者で地方在住の40代以上の女性に多いとされています。儒教的価値観が根強い、封建的社会で抑圧された女性へのストレスが原因と考えれば頷けるところもありますが、サラリーマンの90%云々となればまた異なる気がしますね。1960~70年代には韓国の主要大学医学部の卒業生の多くがアメリカに渡り医師として活動しましが、医学界での影響力もそれなりにあったかも知れません。火病という言葉が独り歩きして、無理やり社会特性や民族性に結び付け、韓国人は自己診断をする傾向があるのではないでしょうか。要はストレスを感じて身体的な不調を訴えるのは、どの国、どの社会にもあり得ることです。
日本もかつて「対人恐怖症」を集団の調和を重んじる日本文化特有の病として欧米に発信し、同様にDSM-IVに掲載されました。その後、欧米にも似た症状の患者がいることが確認されています。民族や特定な社会を特別視し過ぎるのは、時に優越性を強調し、逆に差別に繋がる可能性を潜んでいます。喜怒哀楽、古今東西、人間そんなに異なるもものではありません。

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