日本ではテレビの現地レポートなどで、ある場所の広大さを説明する場合、「およそ東京ドームの○個分です」といった表現を用います。確かに何となく広いということは感じますが、具体的な広さを認識するより漠然と聞き流しているだけです。東京に住んでいる人間ならば一度くらいは東京ドームに行ったことはあるでしょうし、一般的な野球場の大きさと考えればある程度のイメージは浮かびますが、日本全国で使う広さの尺度として適切であるかは正直疑問です。ただ、何平方メートル、何万ヘクタールと数字を並べられても正確に理解できるかと言われれば、何らかの具体的な‘ものさし’は必要です。
韓国で‘東京ドーム’にあたるものとして思い浮かぶのは「汝矣島(ヨウィド)」でしょうか。汝矣島はソウルの漢江(ハンガン)に浮かぶ中州の人工島で、国会議事堂、証券会社、放送局などがあり、ビジネスの中心地のひとつです。汝矣島の面積は約8.4㎢、東京ドームが46755m2=0.046755㎢ですから、汝矣島の広さは所謂 東京ドーム約180個分の大きさです。はてさて、尺度から見ると韓国人の方が日本人より180倍‘大気もの’なのか、単に‘おおざっぱ’なのかです。一方このような‘ものさし’は欧米にも存在するのでしょうか。少し調べてみると、アメリカでは、フットボール場(アメリカンフットボール球場、a football field)何個分という表現は時々使われるようです。その他、セントラルパーク、自由の女神なども時に登場するようですが一般的かどうかは定かではありません。その他、昔はエンパイアステートビル(empire state building)何個分なども暫し出てきました。欧州ではたまにニュースなどで聞かれるのがバチカン市国何個分の広さという表現です。勿論、地域ごとにいろいろあるでしょうが、使用頻度は東京ドームにはかなわないのではないでしょうか。(そういえば昔は、後楽園球場や霞が関ビル何個分でした!日本の伝統的なものさしとも言えますね。)
特定の人工物を‘ものさし’とするのは山地が多い国土で、世界に誇る建築物技術を持って国を整備してきた日本らしさの一つかも知れません。同じ人工物でも、広島原爆の何個分の破壊力などという表現は、未来永劫 ものさしには使われないように祈ります。