東西の美人画
韓国で「風の絵師」というドラマに続いて、「美人図」という映画が製作され話題になっています。李氏朝鮮後期の天才画家 申潤福を題材にした内容ですが、どちらも男装した女性画家として描いている点が興味深いところです。それだけにその生涯は謎が多く、代表作の「美人図」も当時の封建時代における儒教的価値観から画期的なものでした。それまで女性の人物画といえば、宮廷など上流社会の夫人像が多く、庶民を描く風俗画は特異といえるでしょう。その点、同時代である江戸の浮世絵がとは通じるものがあり、申潤福が日本に渡り 天才浮世絵画家 写楽になったとの説まで登場しました。(キム・ジェヒ著「色 写楽」) 源義経がジンギス・ハーンになったという説よりは信憑性があるでしょう。
世界的に有名な美人画といえば、ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」をあげる人が多いと思いますが、西洋絵画と東洋絵画の違いは明白です。この様な違いは、両文化の精神性の違いから来るもので、西洋は科学的に物を捉えようと写実的な部分に重点をおくのに対して、東洋はありのままより、その本性を表現しようとする美学が働いているように思います。特に人物画で、西洋においては唯一絶対である神が自分に似せて人間を創ったため、人は自然界の何者より美しく完璧でなければならず、それをいかに表現するかが問われます。一方 東洋では自然と人間は一体であり 中国の水墨画のように敢えて色を使わず、モノトーンの中に精神で感じるところを表現しています。
しかし、東洋画の中でも、個人を写実的に一個の生の人間として表現しようとする申潤福や写楽の絵の中に 中国中心の東洋画の流れから少し異なる独自の画風、価値観があるように思います。私も潤福、写楽同一人物説に韓日の親密な関係を期待しつつ、ロマンを感じたいです。
『東洋経済新聞2008.掲載』