お笑いコンビ ピースの又吉さんが文芸誌デビュー作「花火」で見事芥川賞を受賞しました。 ご存じ芥川賞は、1935年より直木三十五賞とともに創設され、純文学分野の新人に対して与えられる文学賞として最も名誉あるものでしょう。今回の受賞は、お笑い芸人出身初の快挙というだけではなく、純文学作品としては受賞前から異例の60万部以上のベストセラー作品が芥川候補となり且つ受賞した珍しいケースです。報道によると既に120万部を超える勢いで、購入者も通常多くない10代、20代の若い世代に多く、長く出版不況に喘いでいた業界にとっては待ち望んでいた救世主と言えるかも知れません。
‘読書離れ’といえば、昨年行われた文化庁の調査によると、マンガや雑誌を除く1カ月の読書量は、「1、2冊」と回答したのが34・5%、「3、4冊」は10・9%、「5、6冊」は3・4%、「7冊以上」が3・6%だったのに対し、「一冊も読まない」との回答が最も多く、47・5%に上っています。3年前の調査に比べても「読まない」のポイントは増加しており、年代別では高齢者ほどその割合は高く、必ずしも若者だけの活字離れとは言えないようです。勿論、インターネットの普及とともに、読書数の減少は世界共通の傾向ではあります。韓国出版研究所の調査では、韓国人の一カ月平均読書量は1.5~1.8冊で日本と同様の結果で、やはり4人に一人は一冊も読まないと回答しています。ただ日本以上にネット依存度が高い韓国では今後さらに減少する可能性は高いだけに、国内の読者だけではなく海外でも広く読まれる本、作家の登場が出版社や文学を志す人にとっては切望されるところです。しかし出版の世界ではK-popや韓流ドラマが日本を発端に世界中に浸透したことに比べると真逆といってよい現状です。ここ数年、韓国で出版される日本の翻訳書が年間800冊以上なのに対し、日本で紹介される韓国の本は20冊程度です。この出版格差がそのまま両国の文学力の差を反映するものではありませんが、存在を知られなければ魅力が伝わるわけもありません。より遅れる前に韓国も文学の韓流普及にも目を向ける必要があるでしょう。
韓国で直木、芥川賞に該当する文学賞を挙げるなら、東仁文学賞や李箱文学賞でしょうか。先日読み始めた本は、2009年にこの李箱文学賞を受賞したキム・ヨンス氏の「世界の果て、彼女」(新しい韓国の文学シリーズ10、株式会社クオンCUON)です。あとがきで著者はこう書いています。「僕たちは多くの場合他者を誤解している。僕たちは努力しなければ互いを理解できない。そして他社の為に努力するという行為そのものが、人生を生きるに値ものにしてくれる。」