ダーウィンの進化論
今年は 進化論で知られるダーウィン生誕200年にあたるそうです。ダーウィンの生まれた1909年2月12日、16代アメリカ大統領のリンカーンもケンタッキー州で産声をあげました。進化論と奴隷解放の父が 奇しくも同じ日に生を受けたことになります。
ダーウィンがその著「種の起源」でいう進化論といえば言うまでもなく、生物が様々な環境の変化に直面したとき、突然変異などで少しづつ変化し、その環境に適合し順応できたものが、その種の中で生き残り、その他は自然淘汰されて行くというものです。学校の生物の時間などでも、よく取り上げられた内容として、私たちには比較的 理解しやすい理論です。遺伝学の発達もあり。科学的には受け入れられているこの理論ですが、社会的には 十分受け入れられていない面があります。特に宗教的な立場から創造論を唱える人々からは、進化論への多くの批判があるのも事実のようです。創造論は 創世記にあるように世界は神が7日間かけて世界、動植物、人間を創ったというものです。無神論者や信仰を持たないひとの多い日本では、奇異に感じるかもしれませんが、科学先進国のアメリカの幾つかの州では、1900年以降、進化論を学校で教えることを制限しようと訴える裁判が 何度か起こされていますし、リンカーンの生まれたケンタッキー州には進化論を否定する博物館まで建てられています。最近でも宇宙や生命を創造した偉大なる存在を認めようというインテリジェンス・デザイン説(I.D説)を公教育に取り入れようという動きがあり、実際に多数決で採決した州もあります。アメリカの保守派だけでなくイスラム原理主義を唱える人々の立場からも、進化論は否定されています。ダーウィン生誕200年は、あらためて世界には様々な価値観があることを再確認する機会かも知れません。
独学で世界最高峰のバイオリン作りになった在日1世の陳 昌鉉(チン・チャンヒョン)さんがガラパゴス諸島のダーウィン研究所を訪れた話を読んだことがあります。そこでは世界の少数民族の研究もしていて、在日韓国人の将来に関してはかなり悲観的な予測を聞いたとありました。アイデンティティーを強く持たない民族は自然淘汰の第一候補であると・・・「アイデンティティーを高めるため在日社会が次世代にもっともっと投資しなければいけない。」こう思うのは、陳さんだけではないでしょう。
『東洋経済日報 2009.2月掲載』