皆さんは、最後の晩餐に何を食べたいか考えたことはありますか?何でも希望通りだとしたら、まだ食べたことがないような世界の珍味や、贅を尽くした豪華な料理を希望する人もいるでしょうが、多くは食べなれた好物であったり、子供の頃の懐かしい味ではないかと想像します。私の場合もやはり後者の方で、そのメニューの一つに「パジョン(파전)」があります。韓国風お好み焼きといった食べ物ですが、日本ではチヂミ(찌짐)と言う呼び方がより知られています。一般的に韓国では溶いた小麦粉などと混ぜて具を焼いたものを、プッチムゲ(부침개)またはジョン(전、煎)と言いますから、厳密に言えばネギ(파)を入れたものがパジョン(파전)、チヂミ(찌짐)はプッチムゲ(부침개)の慶尚南道地方の方言だと思えばよいでしょうか。
韓国を代表する料理として、キムチや焼肉と共に、パジョンなどの様々なプッチムゲ、ジョンがあります。その中でも緑豆を挽いた生地で作るピンデトック(빈대떡)はもちもちした触感から特に人気のメニューです。ピンデトックという名前の由来として、朝鮮時代に凶作の年は、首都ソウルにはいる城門の一つ、南大門の外には多くの流浪民が集まり、そんな時 当時の権力者がピンデトックを牛車に積んで持っていかせ「どこどこの家からの善行だ。」といいながら分け与えたと伝えら、ここから‘貧者の餅’(ピンジャトック)からビンデトックになったという説が有力です。この由来は別としても、庶民に愛されてきた味であることは間違いありません。
先日、韓国の患者さんとたまたまパジョンの話になって、「子供の頃は雨の日によく食べた。」と言われました。確かに韓国ではパジョンやピンデトックを雨の日に食べたくなる料理と表現されることがあります。昔は雨が降ると農作業、今は買い物が面倒になり家にある有り合わせの物で簡単に作れるからということがあるのでしょう。また、ピンデトックを油で焼くパチパチいう音が、雨の音ににているから余計食べたくなるという話もあります。原稿を書いている今も雨音が聞こえてきました。パジョンとマッコリで一杯やりますか!