海賊という職業
ソマリアにおける韓国海軍の船員救出作戦は、海外からも高く評価されているようです。重傷を負った船長も医師たちが懸命の治療をおこなっており、一日でも早い回復を願うばかりです。今回 救出に出動した軍艦「崔瑩」は高麗末期に倭寇を掃討した将軍の名からとったもので、まさにその名に恥じぬ活躍をしたと言えるでしょう。
2010年、世界各地での海賊事件は、445件にあがり、そのうち最多の139件がソマリア沖で発生しています。その数は年々増加しており、地中海とインド洋を往来する年間2万艘の及ぶ船舶にとってはまさに脅威であり、各国もその対策に頭を悩ましています。ソマリアはアフリカ大陸の東北端にある国で、イタリアとイギリスの植民地でした。1960年の独立後は6つの部族間で内戦状態が続き、1991年アイディード将軍率いる最大勢力が首都を制圧し内戦は治まるかに見えましたが、派内の内部抗争から、内乱は全土に広がり、無政府状態に突入しました。内乱が続く中、治安は荒れ放題で、国民は困窮し、武装した民兵は略奪を繰り返しました。海賊が出没し始めたのもこの頃からです。海賊はこうして組織された武装勢力に加え、ソマリアの軍部が勝手に、外国に漁業権を売ったり、放射性廃棄物を海に投棄させる権利を渡したりした為、国内漁民は廃業せざるを得なくなり、海賊に加わるものもいるとされます。国内は、いまだ内戦が絶えず、平均寿命は49歳、国民の半数は飢餓状態にあると言います。このような環境で、海賊は一部の人間には、手っ取り早く金を手に入れられる職業という意識があるかも知れません。さらに、彼らを利用する海外のブローカーや、麻薬組織、武装テロ集団まで関与していると言われ、アフリカの幾つかの旧植民地諸国がそうであるように、その根は深く、複雑です。
映画、小説で海賊というと、7つの海を又にかけて冒険する自由人として、少年たちの憧れの対象として多く描かれてきました。日本人を母に持つ鄭成功などは、海賊の首領から台湾の支配者になり「国姓爺」と呼ばれる人物です。しかし、実際の海賊は、国政が乱れ、ただ生きる術として海に糧を求めたというのが現実です。
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