海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

星晴れの下で

2008-07-08 03:10:34 | 生活・文化
 昨夜は星晴れの空に流れる天の川を見上げてガラにもなく織姫と彦星を探し、以前、北朝鮮に行ったときに目にしたカササギの姿を思い出した。沖縄では見られない鳥なので、黒と白の姿を目にして、ああ、これがカササギか、てーげーまぎせーさー、と思ったものだ。
 七夕の夜ということで、省エネをかねて電気の明かりを消す取り組みが全国的に行われたようだが、こういうのもサミットがらみで政府に呼びかけられるとやる気が失せる。もっとも、今帰仁では呼びかけなどなくても、人工の光がほとんどなく、星々がくっきりと浮かび上がる場所があるのだが。
 砂浜に行って星を眺めると、波打ち際にはウミボタルの青い光が明滅する。運がよければ海亀が産卵するところも見られる。暗い浜ではピシ(干瀬=リーフ)で砕ける波が白い帯になって浮かび上がる。孵化した海亀は光のある方向に歩き出すのだが、人間が手を加えない本来の砂浜は、陸側にはアダンの茂みが闇を作り、海側にはピシの白波が白く浮かび上がる。人工の光がない浜に行けば、沖の白波がどれだけ明るく見えることか。ピシに限らず、砕ける波の白さが放つ光に導かれて、海亀の子らは海に向かうのではないだろうか。
 砂から這い出てきた海亀の子は、まわりを見回して光を見つけ、海に向かって砂浜を一散に進んでいく。途中で待ち受ける蟹にやられないように、早く海に入る必要があるのだ。子亀を狙っているのは他にもいる。十数年前に今帰仁の浜で海亀の産卵と孵化を観察していたとき、ある浜では三匹のマンタンバ(アカマタ)が、砂に潜って孵化した子亀を捕食していた。そのことを知ってから、砂浜に残った蛇の這った跡やとぐろを巻いた跡を探して、海亀の産卵場所を百発百中で見つけることができるようになった。
 捕食者が少ないから夜間に孵化するようになったのだろうが、子亀にとっては浜を下りるのも大変だし、海に入ってからも油断はならない。子亀が孵化する頃にはまた、それを狙って大型の魚も浜に寄ってくるという。その魚を狙って海に出る人も昔はいたと聞いた。星晴れの下で生き物は産み、生まれ、食い、食われる。生と死の営みの多さこそ自然の豊かさなのだ。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北海道洞爺湖サミットを前に | トップ | 合掌 »
最新の画像もっと見る

生活・文化」カテゴリの最新記事