海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

新住基カード発行の問題

2008-12-21 11:16:27 | 住基ネット・監視社会
 12月13日付読売新聞電子判によれば、〈住民基本台帳カード(住基カード)の偽造・変造事件が2007年度、70件に上ったことから、総務省は来年4月、カードの集積回路(IC)チップに顔写真などを暗号化して記録し、特殊インクでロゴマークを入れた新カード導入を決めた〉という。
 利用機会が少なくて住基カードの普及が進まないなか総務省は、顔写真入りの住基カードは身分証明にも利用できる、と宣伝してきた。そのため、運天免許証の無い人やお年寄りなどが身分証明書代わりに住基カードを作ったりしている。そこで顔写真を偽造して、なりすまし詐欺が起こったり、住基カードでサラ金や闇金から借金させるなどの事件が発生していて、それが2007年度は70件あったから新カードを導入するというのだ。しかし、一見犯罪対策を進めるかのようなこの記事は、よく注意して読まなければならない。 新カードの導入にともなってカードの発行機や読み取り機の交換が行われるとすれば、全国の自治体に設置されている機器の交換に莫大な予算がかかるだろう。それによって住基カード関連業者は大きな利益を得ることになる。それだけでなく、総務省は読み取り機の民間への拡大も行おうとしているのである。
 〈新カードもプライバシー保護のため、これらの領域の情報は住民票発行など公的な領域に限定されるが、本人確認専用の領域を金融機関など民間企業も専用機で読み取りできるようにする。これに伴い、読みとり機(1台約5000円)の導入を金融機関や携帯電話会社に働きかけ、本人確認要領域を読み取る専用ソフトを無償配布する〉ということだ。
 現在は自治体に配置されているだけの住基カードの読みとり機が、民間の金融機関や携帯電話会社にまで配置されるようになれば、全国でいったいどれだけの数になるのか。金融機関とはもちろん銀行に限らない。一台約5000円といっても莫大な利益が生み出され、新たな住基ネット利権となる。
 住基カードの偽造・変造事件が70件に上ったから新住基カードに切り替えると、あたかも犯罪対策を進めるかのように言いながら、本人確認専用とはいえ読み取り機を民間に大量にばらまくというのだ。そうやって大量に出回る読みとり機や無償配布される専用ソフトの管理・掌握は不可能であり、いずれ様々な犯罪に利用されるのは間違いない。闇金業者や暴力団、詐欺グループはこの記事を読んで大喜びしたことだろう。
 総務省の官僚からすれば、住基カードの犯罪防止など二の次であり、民間利用拡大の好機と捉えているのだろう。そうやって住基ネット利権を巨大化し、将来の天下り先を確保するという、総務省官僚の思惑が透けて見える。ダム建設などの公共工事が難しくなる中で、住基ネットが新たな公共工事として利権の温床となるというのは、住基ネット稼働前から指摘されていることなのだ。
 今回の総務省の方針が、住基カードの民間利用拡大を推進していく一環であるのは言うまでもない。それによって今後どのような問題が生じるのか。そこまでメディアは検証すべきだし、住基ネットを扱う自治体や業者の実態がどうなっているのか、その問題点も検証すべきだろう。

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