180421 脱引きこもりへの挑戦 <秋田県藤里町 ひきこもり、働く力>を読みながら
早朝、一筆啓上つかまつり候・・・と窓の外からリズミカルに何度も聞こえてきます。ヒノキの穂先なので、30m以上、50mくらいあるのでしょうか、スズメくらいのちっちゃな野鳥が止まって、しきりに高らかと鳴いています。でも私の視力ではメガネをかけても判別できません。
久しぶりに100倍ズームのビデオカメラを取り出し、その素顔をアップしました。やはりホオジロでした。古いカメラなので画素数も小さく、粗くしか見えませんが、それでも輪郭ははっきりしていますので、いくら私でも識別OKでした。しきりに体を動かして鳴き続けています。かわいいですね。
ただそのときすぐにホオジロの名前が浮かばなかったのです。だいたい頬が白いといえるのでしょうかと思ってしまいます。白い箇所は頬というより嘴の左右に縞状に延びているというのが形状だと思うのです。むしろ頬は黒ではないかと言いたくなります。ですから、マスクマンみたいに目の付近を含め黒色の縞模様の方が目立つのです。いつもホオジロと思い直すのに一呼吸必要です。ま、こんなど素人のような弁解は、バードウォッチャーはしないでしょうけど。40年くらい前から野鳥観察を始めたのに、一向に知識・理解が進まないのは素直さが足りないのか、イギリス紳士に学ばないといけないのか・・・
ところでものの見方は、固定観念を抱いていると、世の中の真相を理解できないままとなるでしょうね。とか、人間の世はいつも変わりつつあるのですから、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」といった風に、いつの間にか自分が見ている世界が違っていることに気づかないということもあるでしょうね。
秋田・藤里町はたしか白神山地を訪れたとき立ち寄ったと思うのですが、どうも記憶が残っていません。そこが今朝の毎日記事<縮む日本の先に地方はいま/7 秋田県藤里町 ひきこもり、働く力>で登場しました。
ひきこもりが増えている、それも高齢化している実態と、そのことを可視化、顕在化して、その原因を探り、解消に取り組む動きを追っています。
<10年近く前、秋田県藤里町の社会福祉協議会に勤め、高齢者宅を戸別訪問していた菊池まゆみさん(62)は、仕事をせず、昼から家で過ごす人々に気付いた。多くは男性。昨年度まで国が調査してきた「ひきこもり」は15~39歳だが、状態が長期化したのか、中年世代も目立つ。>と。
そこで<「外に出ませんか」。ショックを受けた菊池さんらはレクリエーションなどを企画したがうまくいかない。>そう簡単にいかないでしょうね。
<職につけない状態が長引き、結果的に孤立する人が多いことに気付いた。必要なのは交流の場より、きちんとした役割ではないか。>
たしかに職を得て収入を得る場をえることは大事でしょう。社会で生きているという意識を持つことができやすいのではと思うのです。他方で、交流自体もやり方に工夫があれば相当効果があるように思うのです。交流がだめで仕事場の提供といった選択にはならないと思うのです。でも菊池さんの積極的な対応策は次に述べるとおり功を奏したようです。
<さっそく、就労の情報提供として、ホームヘルパー2級の資格を取る研修のチラシを113人の家に投げ込んだところ、かつて外へ連れ出そうとした小玉栄さんが研修会場に現れた。>
<社協は2010年に自立支援施設「こみっと」を開設し、孤立した人々の家庭訪問を始めた。狙いは一人一人の力を最大限に引き出すこと。まずは社協運営の食堂で働くなどして、地域住民と交流。生活リズムを取り戻した後、町内や近隣の職場を紹介する取り組みだ。小玉さんも接客を学んだ後、社協でパートとして働くように。取り組みは成功し、113人は大半が新たな仕事を見つけた。>
私もいま、関係する人が自立支援施設で働いていて、その施設長の人から誘いを受けて、一度覗かせてくださいと話しているのですが、なかなか腰が重くて、訪問していません。むろん別の同様の施設を訪問して、その仕事ぶりなどはまったく知らないわけではないのですが、施設に応じて特徴が有るでしょうから、より多くを学ぶ必要があると感じつつも、実践が伴っていません。
他方で、藤里町の社協では、<対応が一段落すると、社協は全町民を対象にした人材派遣事業「プラチナバンク」を始めた。「個々の力を最大限に」というコンセプトは同じで、住民の1割近い約320人が登録。ほとんどが高齢者だ。メンバーは自ら採取した山菜でアイデア商品を生み出し、東京で販売することも決まった。70代男性は「形になれば更に頑張れる。今ではライフワーク」と話す。>
シルバー人材センターは昔からありますが、このプラチナバンクは高齢者の頭脳・経験を生かして起業家になることを支援するようなイメージですね。それ自体は面白い内容ですが、事業家のノウハウ、経営管理、資金や販売管理など、こういった分野に、社協がどのような支援ができるのでしょう。私も社協のお手伝いを長くやっていましたが、そのようなノウハウを持つ人材がいるとは思えないといっては失礼ですが、その当たり他の外部機関との連携が必要な印象です。社協の職員はまじめで優秀で、他の関連する機関との協議も頻繁にやっている印象です。他方で、事業化となるとちょっと分野違いの印象を受けるのは、私が固定観念に固執している問題かもしれません。
<「意欲や希望さえあれば誰もが生涯現役」と話す菊池さん。一連の取り組みは注目され、視察が絶えない。小松田儀貞・秋田県立大准教授(社会学)は「厳しい人口減の中で、潜在的な人材の能力を引き出し、地方創生につなげた。マイナスをプラスにする事例が興味深い」と高く評価する。>
さらに<3月下旬、こみっとの関連施設に香ばしいにおいが漂う。小玉さんら113人の一部も関わったフランスの郷土料理・キッシュ作りだ。町特産のマイタケ入りで、売り上げも順調。いまや町を代表する名物料理となった。メンバーが巣立ったいま、その製造を高齢者へ引き継ぐことは小玉さんの大切な仕事だ。>
そうですね、シルバー派遣といった、ちょっと手助けもいいですが、高齢者の潜在能力はもっと高いと思うのです。それを引き出す仕掛け、工夫は、社協に限らず、自治体行政としても、本気で取り組む必要があるのではないかと思うのです。
趣味や芸事もいいでしょうけど、葉っぱビジネスで収入を得るために嬉々としている高齢女性たちの姿を見ていると(徳島・上勝町)、事業の提供もあれば、高齢者一人ひとりに、その隠れた知恵やひらめきを事業化できるような場の提供も考えていい時代ではないかと思うのです。認知症防止とか、医療費負担の軽減とか、マイナス面からの発想ではなく、もっとプラス思考で、地域の多様な資産の掘り起こしと、高齢者の生活の知恵、経験知を生かしてもらいたいと思うのです。
翻って、ひきこもり問題は、幼い頃からの家庭・学校での対応が重要であると思うのですが、それに十分意識的に対応できないまま、大人になり、年を重ねていった人に対しては、さらなる工夫が必要でしょう。
ユマニチュードで学んだことですが、常に人間として対応することは、一人ひとりに課せられた課題ですが、自治体行政としては、ひきこもりにある、あるいはそれに近い状態にある人を、<見る・話す・触れる・立つ>という基本的アプローチをひきこもり人に応じたあり方でケアする必要があるように思うのです。
ひきこもりといわれている人も、認知症とい言われている人も、ほんとはそのようなサービスを待ち焦がれるのではと思うのです。
<「ひきこもっていたと言われると違和感があります」。現在48歳になった小玉さんは振り返る。113人は知人らと交流がある人も多く、社協の取り組みに反発する親も少なくなかったが、新たな希望を見いだすようになったことは間違いない。「誰かに必要とされている感覚。悪くないですよ」。小玉さんはそう話した。>という小玉さんの話は意味深長です。
今日はこれにておしまい。また明日。