180425 専門分野とは <専門医、新制度 各学会の認定基準統一>を読みながら
いろいろと国家資格がありますが、それぞれその分野の専門資格ということなんですが、その資格の持ち主も多くなると、というか技術や経験が深まると、専門分野が生まれ、それがさらに細分化されることになるというのは、どの分野でもありますね。
税理士だと、相続税、不動産税、法人税、消費税など税目によって専門性の高い人がいるでしょうね。行政書士だと、これまた農業、林業、漁業、風営法、廃棄物処理などなど、事業形態に応じた専門性があるでしょうね。弁護士もどんどん専門分化していますが、いずれもあまり確立した専門性の基準がないように思うのです。
この点、医師の世界はその技術・知見の進歩が急速ですから、トップランナーの一つかもしれません。
とはいえ、いろいろな専門医に分かれていることは承知していても、疾病をかかえた患者側の立場としては、そもそも自分の疾病がどの専門医に診てもらうのかわからないことも少なくないですし、専門医の力量もそれだけではなかなか判断できません。そのようなことも一つの理由になって、いろいろな医師、病院を渡り歩く人もいるでしょう。
ま、私もその一人だったかもしれません。いまようやく落ち着いて特定の医師に委ねることができました。
さて毎日朝刊記事では<読み解きワード専門医、新制度 各学会の認定基準統一>の見出しで、4月にスタートした新「専門医」制度を紹介しています。
専門医制度はかなり以前に(調べていませんが戦前からだと思います)普及していますが、
毎日紙面だと、これまでは各学会が研修や認定をしてきて、その種類は、100以上存在しているとのことで、すごいですね。そのうち半数程度が専門医の看板を掲げることができるとのこと。
そこで問題が生じたのです。
<学会ごとに認定基準が統一されておらず質にばらつきがあり、患者には分かりにくい面もあった。>ということです。
<そこで、厚労省の検討会の提言を受け、専門医認定や養成プログラムの評価・認定などを一手に担う一般社団法人「日本専門医機構」が2014年に設立された。>
この専門医というのは、患者側としても必要とされ、さらにその専門性の適正さも要求されることは確かでしょう。
この点、弁護士についても、利用者から専門性を求められることが多い分けですが、わが国ではなかなか専門性の客観的な評価基準が確立しないためか、○○専門弁護士と名乗ることが難しいですね。刑事弁護とか労働弁護とか、企業法務とか、離婚とか、専門性を標榜している場合がありますが、弁護士会などが認定する制度がないので、裏付けに乏しいでしょうね。それこそ相談して信頼できるかを判別するしかないでしょう。自分の経験をホームページに掲載しているような場合は、医師の症例には及ばないとしても、それなりに信頼できるのではと思います。
弁護士会でもさまざまな専門分野の研修を行って、その分野の担い手を育成していますが、まだ制度的に確立したとはいえないでしょうね。
その点、医師の場合、新制度は、次に引用のとおり、弁護士に比べていっそう整備されてきたかと思います。
<専門医になれるのは、大学の医学部卒業者で医師国家試験に合格後、実地訓練として必修化されている臨床研修(2年以上)を終えた医師。内科や小児科、産婦人科など19の基本領域から一つを選び、専門医を目指す「専攻医」として各地の病院・診療所で3~5年の研修を受ける。認定試験をパスすると晴れて「専門医」になれる。機構は「患者から信頼される標準的な医療を提供できるとともに、先端的な医療を理解し情報を提供できる医師」と定義する。>
さらに医学的知見や技術の進歩を身につけないといけませんから、期間限定にしています。医療過誤裁判では最新の医学知見が判断基準になるわけですので、当然と言えば当然かもしれません。これまでもたいていの医師は日々研修なり新しい知見を学んできたと思います。
<専門医の資格更新は原則5年おきで、診療や学会発表などの実績を基に認定を受けなければならない。これまでの学会ごとの専門医は、資格の更新時期に新制度での認定に切り替わる。>
ところで、今回の新制度は、新設された<「総合診療」>が注目されています。ある意味、専門性に逆行する制度のようにも見えますが、私は適正に運用されれば、かえって本来の専門医に的確に導かれたり、重畳的に専門医が機能するように、有機的な連携が縦横に進むのではと期待したいと思います。
<総合診療医は、患者を診察して初期対応をするとともに、より専門的な検査や治療を受けるべきだと思った場合は、他の専門医に相談・紹介する。また、高齢者を介護サービスにつなぐこともある。医療の「入り口」としての役目があることから、「プライマリーケア」と呼ばれる。定義や概念は違うが、日本医師会などが普及を進める、総合的な能力を持つ身近な「かかりつけ医」も、そうした能力のある医師とも言える。>というのです。
ただ、新専門医制度にも課題があり、専攻医を研修する施設が都市部の大学病医に集中する懸念があり、そのための対策として、<東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の5都府県で、基幹施設で受け入れ登録する専攻医数が、過去5年間の各診療科の採用実績の平均人数を超えないようにする上限を設けた>のですが、専攻医が都市部に集中する流れはこれだけでは抑えられないでしょうね。
どうやら専攻医は都道府県ごとに登録されるようですが、登録された管内でのみ働くのではないということです。<専門医制度は専攻医が地域の複数の病院や診療所を回って経験を積むよう義務づけている>ので、順次地方にも勤務することで、地方に専攻医がいないといった偏在を防ごうとしているようです。
これで地方に専攻医がいないとか、少ないということにならない不安は解消しないと思いますが、それには地方の魅力や専攻医の見識に期待するのでしょうか。
今日はこれにておしまい。また明日。