たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

新税による新森林管理 <「森林環境税」>と<林業経営体>を少し考えてみる

2018-04-28 | 農林業のあり方

180428 新税による新森林管理 <「森林環境税」>と<林業経営体>を少し考えてみる

 

増税というと消費税論議が注目されますが、現時点では額は小さいものの今後増大する見込みの「森林環境税」を少し考えてみたいと思います。

 

森林環境税といっても、広義と狭義があり、広義では狭義の森林環境税と森林譲与税があります。

 

林野庁の冊子でしょうか<森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)の創設>というタイトルで特集を組んでいます。

 

この新税の背景は多様ですので、詳細は上記を読んでいただき、次のような観点で新設されたことが指摘されています。

 

<① パリ協定の枠組みの下におけるわが国の温室効果ガス排出削減目標の達成、災害防止を図るための森林整備等の地方財源を安定的に確保する観点から、

森林現場の課題に対応するため、現場に最も近い市町村が主体となって森林を集積するとともに、自然条件が悪い森林について市町村自らが管理を行う「新たな森林管理システム」を創設すること>

 

特徴は、市町村が主体になる管理システムです。そういえば、以前からそのような制度化がなんどか行われたように思いますが、計画倒れに終わった記憶です。でも今度は新税が投入されるのですし、きっと実効的な制度になる、と期待したいところです。

 

さてその税の中身ですが、

まず、狭義の森林環境税は<個人住民税の均等割の納税者の皆様から、国税として1人年額1,000円を上乗せして市町村に徴収していただきます。税収については、市町村から国の交付税及び譲与税特別会計に入ります。>その税の規模は600億円くらい。東日本大震災後の防災対策の税率引き上げが平成35年度で終わるため、平成36年度からとのこと。

 

他方で、<森林環境譲与税(仮称)は、国に一旦集められた税の全額を、間伐などを実施する市町村やそれを支援する都道府県に客観的な基準で譲与(配分)します。森林環境譲与税(仮称)は、森林現場の課題に早期に対応する観点から、後述する「新たな森林管理システ

ム」の施行と合わせ、課税に先行して、平成31年度から開始されます。>と来年から先行して課税されるのです。

 

それでこの森林環境譲与税の使途が注目されるわけです。①がメインともいえますが、②③ができていないと森林現場は動きませんので、①から③のいずれも欠くことができませんね。

<①間伐や路網といった森林整備  

人材育成・担い手の確保

木材利用の促進や普及啓発>

 

しかし、こういった施策は、これまでも繰り返し次々と名前を変えながらもやってきたのではないかと、昔の名前ででていますにならないか、少し心配になります。市町村が主体になるから大丈夫ともいかないでしょうね。というのは現在多くの市町村は、森林管理が遠ざかっているのが実態ですから、果たして適切かつ有効に管理できる組織・人材を配置できるか、市町村の今後も問われることになるでしょうね。

 

譲与基準も一定の考慮がされています。

<市町村と都道府県の譲与割合は9:1となりますが、制度発足初期は、市町村の支援を行う都道府県の役割が大きいと考えられることから、経過措置として市町村:都道府県=8:2でスタートし、市町村への譲与割合を徐々に高める、という設計となっています。>最初の段階では、現在になっている都道府県がサポートする形のようですね。

 

 次に<譲与基準は、5/10を私有林人工林面積で、2/10を林業就業者数で、3/10

を人口で譲与することとされています。>

しかも<私有林人工林面積については、それぞれの市町村の林野率で面積を補正することとしています。>条件不利地に対する考慮ということのようです。

 

興味深いのは<使途の公表>です。

これは実効的に行うことができれば、有効でしょうね。ただ、使途の明細を数値的に算定し、検証できるスタッフがいないと、これまた危ういことになりかねませんが、そこは住民がしっかり監視の目を向けることで、緊張感をもってやれるかもしれません。

 

今回の目玉と言っていいのが<新たな森林管理システム>ではないかと思います。

 

それはこれまでいくら林野庁が森林整備の施策を展開しても、現状はあまり変わらず、<森林現場には、森林所有者の経営意欲の低下等の課題があり、森林の手入れや木材生産が十分になされていない状況です。>といったことはよく言われることです。

 

それで、まず<① 森林所有者に適切な森林管理を促すため、適時に伐採、造林、保育を実施するという森林所有者の責務を明確化し、>とまるで農地所有者の責務強化の動向を反映しています。

 

次がその目玉となっています。

<② 森林所有者自らが森林管理できない場合には、その森林を市町村に委ねていただき、

経済ベースにのる森林については、意欲と能力のある林業経営者に経営を再委託するとともに、

自然的条件から見て経済ベースでの森林管理を行うことが困難な森林等については、市町村が公的に管理を行うこととしています。>

 

要は、やる気のないというか、放置している森林所有者に代わって、市町村が主体になって、民間の林業経営体に再委託、あるいは公的管理するということでしょう。

 

後者はどんなことを考えているのかまだわかりませんが、前者は一定の基準で適切な林業経営体に委ねるということは、理解できる制度と思います。

 

ところで、その林業経営体について、本年26日付け林野庁長官の都道府県知事宛の「林業経営体の育成について」と題する通知で、その育成を図るために、その判断基準の設定や選定、登録などを指示しており、全国的にすでに動きつつあるようです。たとえば静岡県の<意欲と能力のある林業経営体」へと育成を図る林業経営体の選定(移行措置)

 

他方で、市町村は主体的な管理組織をどのように作ろうとしているのか、まだその動きがつかめません。頑張ってほしいものです。他方で、林業経営体なるものが実効性ある経営体になるには、はっぱをかけるだけでなく、周辺の環境整備も必要でしょう。

 

今後の動きを注視してみたいと思うのです。

 

ちょうど一時間となりました。このへんでおしまい。また明日。