180424 林地管理の今後 <要間伐森林制度><林地台帳>など最近の制度改正の行方を考える
少し前の話ですが、ある土地が農地かどうかを調べるとき大変便利になったと感じる経験をしました。むろん、ネット上で検索できる登記情報で現在の登記上の地目を確認するようなことはもう10年以上前からできますね。現況がどうかは、Google Earthである程度わかりますね。法的にはやはり農地かどうかを判別する担当機関、農業委員会が管理する農地台帳となりますね。
でもわざわざ出かけるのは面倒といったとき、<全国農地ナビ>で探すとほぼ一筆の区画に近い形で(中には曖昧なところもあり、厳密ではないですが)、農地かどうかがわかるようになっていますし、かなりのスピードで更新されていて、アップツーデートされている印象です。これはなかなか使えます。法的にこれをそのまま使えるかというと?ですが、ネット検索できる点、航空写真に当てはめていますので、わかりやすいです。
さて、農地では耕作放棄地40万ha(農地の約10%に近い)が問題になっているように、林地も手入れされていない、いわゆる森林荒廃状態が全国で相当の割合になっています。この識別と面積は、なかなか把握しきれないかもしれません。
では林地台帳の公開はどうなっているのでしょう。林野庁も取り組んではいますが、<林地台帳の概要>では<公表は、市町村の事務所等の窓口での閲覧>にとどまっています。不便ですね。民間ベースではソフト開発の動きがあるようですが、どこかにその動きを押しとどめる圧力があるのでしょうね。
むろん、農地と異なり、外国人が投資目的などで購入するリスクを法的には防御することができない(森林法は農地法と異なり許可制となっていない)ため、安易な公表には注意をしないといけないと思います。しかし、現在の公表制度でも、所有者の住所・氏名を対象から外すのですから、ウェブ情報としてアップすることに支障がないと思うのです。
平成28年森林法改正で設けられた公表制度、<施行日は平成29年4月1日としているが、林地台帳の整備にあたっては、十分な準備期間を確保する必要があることから、平成31年3月末まで経過措置を設定>となかなかスピード感が感じられません。
というより、ほんとに平成30年度中に実施できるのでしょうか、あまりその林地台帳整備に向かった積極的な動きがつかめません。というのは現在の林地台帳では、所有者の確定や筆界の確定がされていないところが少なくない状態で、相当なスピードで進めないと間に合わないように思うのです。
林地台帳がきちんと整備されないと、林業政策を含む森林政策が実効性のある形でなかなか進行できないと思うのです。
むろん林野庁も努力していろいろな制度を新設してきましたが、机上の空論と言ったらそれは失礼に当たりますものの、どこまでそういった新制度が有効に機能するか心配になります。
その新制度をいくつか林野庁のウェブサイトから引用して紹介したいと思います。制度自体は評価されてしかるべきと思っています。
まず<要間伐森林制度>です。
<要間伐森林制度は、市町村長が、間伐又は保育が適正に実施されていない森林であってこれらを早急に実施する必要のあるものを要間伐森林とし、当該要間伐森林の森林所有者等に対し、実施すべき間伐等の方法及び時期を通知し、施業の実施に係る勧告等を行うことで、その実施を促す仕組みです。>
従前の制度も、間伐がされていないそういった森林を対象に補助事業が行われてきたわけですが、この制度は特定の所有者を名宛て人にして、最後は法的に代替して実施することまで考えています。空き家問題でも、各地の自治体が条例で対応し、政府も重い腰を挙げてようやく空き家対策特別措置法を成立施行し、各地で実効例がでてきましたね。ある意味、似たような法的システムです。
勧告だけだと効果がないので、所有者に代わって、間伐を実施するわけですね。<森林所有者が市町村長による勧告等に従わない場合、都道府県知事の調停を経て、その裁定により、施業代行を希望する者は、間伐等を実施することができます。また、当該森林の所有者を確知することができない場合にも、都道府県知事の裁定により、施業代行者が間伐等を行うことが可能です。>
こういった場合、誰がこの制度を動かせるかといった問題がいつも起こります。行政が積極的にやると、一方的なものと映る危険がありますね。行政職員もいやがるでしょう。
そこでさらにその点に配慮した改正が行われたのです。
<、平成28年5月の森林法改正により、要間伐森林において間伐等が実施されないことにより影響を受ける者(利害関係者)が、市町村長に対して要間伐森林の通知をすべき旨の申出ができることとなりました。>
この利害関係者の判断が狭いか広いかで違ってくるので、運用を注目したいと思います。というのは、森林経営計画では対象地が広大な面積を求められていて、わが国のように小規模林地所有者が大半の場合、要間伐状態にあっても一人が反対すると、そこを省いてできればいいのですが、できないようなケースでは結局計画を作れません。そういった場合にこの制度が使えると実効性が高まると思うわけです。
それに所有者不明の場合も少なくないわけですが、こういうケースではとくに活用できるのではと思うのです。
次に、<共有者不確知森林制度>も一定の効果をもたらすと思います。
わが国の森林は、とくに里山的なところでは、元々村々の入会利用として、芝山、草山、薪山、篠山などと呼称され、農地と一体に利用されてきたと思うのです。それが近代化の中で所有権制度を導入し、単独所有、共有という形に無理矢理のような状態で、区分されてきた歴史の一端があると思うのです。
その結果、単独所有といっても、山全体を機械的に区分し、村構成員に分配したり、あるいは共有にしたりとなったケースが一般的ではなかったかと思います(東日本は維新政府の支配下にはいったケースが少なくない、その結果藩閥などが広大な面積を単独所有していますね)。
ですので、共有といっても、村人同士だったりすると、何代も経つと、村から出たり、村秩序が崩壊したりで、連帯感もなくなり、連絡先もわからない状態は当然あるでしょう。それに輪をかけ、新民法の共同相続制度もさらに共有状態が普遍的になったかもしれません。
この制度で、共有者が不確知の場合、他の共有者にその所有権を移転したり、使用権を設定したりして、共有地の間伐などに支障を来さないように配慮しています。公告手続を経て、知事裁定で行うわけですが、立木伐採を実施できるようにして、その補償金の供託については、その代金などまかなうことができるのでしょう。
次の制度は平成23年の森林法改正で生まれているのですが、あまり知られていないようい思うのです。
<森林の土地の所有者届出制度>って聞いたことがありますかね。
<平成24年4月以降、森林の土地の所有者となった方は市町村長への事後届出が必要になりました。>
しかも届け出対象者は<個人、法人を問わず、売買や相続等により森林の土地を新たに取得した方は、面積に関わらず届出をしなければなりません。>ということで、たいへんな内容です。でも届け出している割合はどうでしょうか?
届出事項は次の通りです。
<届出書には、届出者と前所有者の住所氏名、所有者となった年月日、所有権移転の原因、土地の所在場所及び面積とともに、土地の用途等を記載します。添付書類として、登記事項証明書(写しも可)又は土地売買契約書など権利を取得したことが分かる書類の写し、土地の位置を示す図面が必要です。>これは面倒と思うかもしれません。でもこの制度を知っている人はどのくらいいるでしょうか。
この届け出をきちんと履行してもらえば、林地台帳作成や整備には有効ですね。
今日は森林整備に関わる最近の制度を簡潔に紹介しました。いずれまたもう少し中身の濃い話ができればいいのですが・・・
一時間を経過したようですので、この辺でおしまい。また明日。