たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

非薬物的介入原則 <認知症高齢患者の幻覚や妄想 向精神薬、効果は限定的>などを読みながら

2018-04-29 | 医療・介護・後見

180429 非薬物的介入原則 <認知症高齢患者の幻覚や妄想 向精神薬、効果は限定的>などを読みながら

 

今朝も上天気です。野鳥の鳴き声が音楽を聞いているような感じにしてくれます。窓の外を眺めるとツバメが見事に飛翔しています。さっとわが家の方向から緑色した美しい羽根をもった鳥が向かいにあるヒノキの梢に留まりました。あれはなんだろう、オオルリかな、ルリビタキかな、イソヒヨドリとは違うなとかいろいろ考えているうちに、さっと飛んでいきました。

 

こんどはまた軽やかに歌声を響かせる、はっきりはいえませんが、ホオジロらしき姿がヒノキの梢に。そうかと思うと、庭先にはマヒワが一羽、ひょいと垣根に泊まり、しばらくしてさっと飛び立ちました。マヒワは集団で動くことが多いように思うのですが、はぐれてしまったのかしらなんて、つい思います。それにしても五月の季節を迎え、鳥たちもいっそう元気が出て活動的です。繁殖の季節でしょうか。

 

近くのさまざまな木々も、遠くの高野の峰峰も、新緑が鮮やかで、すがすがしい快晴の朝です。こういう自然の宴を体感していると、もしかして認知症にならない?、いや認知症になっても進行がすすまないのではとふと思ってしまいます。聴覚がさまざまな音に反応していると、脳の働きも活発になるでしょう。耳からの情報はとても新鮮で、ビビッドに感じます。脳神経も敏感に反応して、ますます活発になるのではないかとつい思ってしまいます。

 

視覚も大事ですね。自然の営みは日々刻々と変わっていきます。それを繊細に識別して感応することができれば、それだけで脳細胞は衰えを知らないのではなんて思うのです。

 

そんなことを考えたのも、今朝の毎日記事<賢い選択価値の低い医療/上 認知症高齢患者の幻覚や妄想 向精神薬、効果は限定的>を読んだことも影響しているかもしれません。

 

後見人の仕事をしていると、有料老人ホームや介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどに訪れる機会がありますが、施設で過ごされている高齢者で元気に話をしているような方を見かけたことがほとんどないのです。多くのこういった施設は、自然環境の豊かな場所に設置されていて、窓からは様々な木々が間近にあったり、潮騒の音が聞こえてくるところであったり、自然を楽しめるはずなのですが、そういう様子は見かけたことはあまりないのです。

 

それだけ元気なら自宅介護で、デイケアを利用するでしょうというのかもしれません。はたしてそうでしょうかとふと考えてしまいます。

 

記事に戻ります。認知症高齢者は増えていますね。

<認知症を患うお年寄りが増えている。厚生労働省の研究班によると、2012年の患者数は462万人。25年には700万人、5人に1人になると推計されている。>5人に一人とは驚きです。私も時間の問題かとふと思ってしまいます。ま、このブログを書いている間は大丈夫か?なんても。

 

その認知症高齢者を介護する立場から問題が提起されています。

<認知症患者の介護で家族や介護者の大きな負担になっているのが「行動・心理症状」(BPSD)だ。幻覚や妄想、抑うつ、不安、不眠など症状はさまざま。認知症の進行によって9割以上の患者に何らかの症状が出るとされ、人によって表れ方はまるで違う。>

 

私の母についていえば、幻覚や妄想はかなり前からありました。まだ私のことがわかる段階でしたので、その妄想なりを電話でしきりに話すのですね。最初はいろいろ説明したりしていましたが、納得しません。

 

私が当時(20年くらい前)、妻に財布を盗まれたとか、息子の嫁が勝手に通帳から現金を下ろしたとか、いくつかの相談を母と同年代くらいの方から相談を受けていて、一生懸命その立場になって家の中を探したり、家族などからヒアリングしたり、あるいは銀行に行って払い戻ししたときの申込書の写しを出してもらったり(本人署名を確認)して、ご本人は納得しませんが、ご家族に話して、心療内科・精神科などの医師に診断を仰いで対応してもらったりしたことが何度かありました。

 

そんなことも経験していく中で、母も認知症になりつつあるなと感じていました。90歳を過ぎる頃には私のことがわからなくなりましたが、妄想や幻覚を言うこともなくなったように思います。むろんこの間そういった向精神薬も服用していなかったと思います。母はいまも耳も目もよく、人の話には耳をそばだて、口出しします。自分で食事もできます。100歳まで生きるかどうかはわかりませんが、そんな勢いで元気です。入所されている高齢者の方に比べて、とても元気なのです。

 

脱線しましたが、記事では<BPSDを治めようと、抗精神病薬や抗不安薬など向精神薬を使うケースは少なくない。だが、効果は限定的で、東京慈恵会医大の繁田雅弘教授(精神医学)は「薬を使わず、まずはBPSDの原因を突き止めて解決することが重要だ」と強調する。>

 

記事で紹介されているものと同じかどうかわかりませんが、<かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン>は<対応の第一選択は非薬物的介入が原則>と明確に断定しています。

 

このガイドラインの冒頭に挙げている原則は重要と思いますので、そのまま引用します。

<○BPSD には認知症者にみられる言動・行動のすべてが含まれる。

BPSD の発現には身体的およびあるいは環境要因が関与することもあり、対応の第一選択は非薬物的介入が原則である。

BPSD の治療では抗精神病薬の使用は適応外使用になる。基本的には使用しないという姿勢が必要。

向精神薬、特に抗精神病薬については処方に際し十分な説明を行い同意を本人およびあるいは代諾者より得るようにする>

 

はたしてこのガイドラインは、多くの医療関係者や患者家族に理解されているでしょうか。いや、介護施設関係者においてはとくに確認しておきたい気持ちです。

 

とんでもない、このガイドラインは、かかりつけ医に対するものであって、介護施設においては、適用外だというのでしょうか。いやいや、施設長たる医師がこのガイドラインの趣旨にそって対応しているというのでしょうか。実態を知りたいものです。

 

 

しかもこのガイドラインでは薬物使用の前提条件として、まず一定の環境要因などがないことについて<条件を満た>すことを求めた上、<薬物療法を検討する場合には、必要に応じ認知症疾患医療センター等の専門的な医療機関と連携をとるようにする>としています。

 

実際に服用治療を始める場合にも、当然ながら<その症状/ 行動を薬物で治療することは妥当か、それはなぜか。>など基本条件を<事前に確認し、開始後は下記のチェックポイントに従ってモニタリングするようにする>と厳格な手続を求めています。

 

BPSD(Behavioral and Psychological symptoms of Dementia: 認知症の行動・心理症状)>の症状に応じた適切な薬物の選択が必要なのはもとより<低用量で開始し症状をみながら漸増する>ことが基本です。

 

しかも<薬物療法開始前後の状態のチェックポイント>としては、これも長くなりますが、全部引用します。

<○日中の過ごし方の変化の有無

○夜間の睡眠状態(就床時間、起床時間、夜間の排尿回数など)の変化

○服薬状況(介護者/ 家族がどの程度服薬を確認しているかなど)の確認

○特に制限を必要としない限り水分の摂取状況(食事で摂れる水分量を含めて体重(kg)×(30 35)/日 ml が標準)

○食事の摂取状況

○パーキンソン症状の有無(寡動、前傾姿勢、小刻み/ すり足歩行、振戦、仮面用顔貌、筋強剛など)

○転倒しやすくなったか

○減量・中止できないか検討する。減量は漸減を基本とする。

○昼間の覚醒度や眠気の程度>

 

私はこの薬物療法の開始前の基本的検討がどこまでなされているのか、また開始前後の状態のチェックがどこまでなされているのか、介護施設内での状況に少し懸念しています。私自身が、あまり実態を知らないから過大な懸念をもっているのであればいいのですが、単なる杞憂に終わることを望んでいます。

 

監督官庁が定期的に監督しているから大丈夫というかもしれませんが、こういった監督自体が文書報告とチェックが中心で、実態把握としては実効的に行われていないことは多くの分野でありますので、安心は禁物です。

 

記事でも、<特に注意すべきは、向精神薬を使う期間だ。日本老年精神医学会の研究チームによる認知症患者約1万人を対象にした調査によると、BPSDのため抗精神病薬を新たに服用した患者は、開始11~24週で死亡率が上がり、服用しなかった患者の3・9倍になった。「BPSDが非薬物療法で改善せず、向精神薬を使う場合でも、服用開始から3~4カ月で減量が可能か検討すべきだ」と水上教授。>ということですから、安易な使用例が相当あるように思えるのです。

 

代替案が提示される必要がある中で、記事で紹介されているその一つに、<東京都医学総合研究所のチームも、BPSDの頻度や重症度を数値やグラフで「見える化」するプログラムを開発した。訪問介護など45事業所の認知症の283人を対象に検証すると、プログラムを使ったグループは半年後に症状が大幅に改善したが、そうでないグループはほとんど変化しなかった。今年度、都内6区市町村でプログラムを導入する予定だ。>

 

そして<開発者の中西三春主席研究員(精神保健看護学)は「薬物療法も、患者の体を動かなくする身体拘束の一種。減薬につなげていくため、主治医らとの連携が重要だ」と指摘する。>この中西研究の言葉、<薬物療法も、患者の体を動かなくする身体拘束の一種>は正鵠を射た重い表現でしょう。

 

最後に一言。鳥の声を楽しみ、四季の移り変わりを愛で、仲間との会話を楽しめる、そういう高齢者の施設なり介護対応をめざしてもらいたいものです。ユマニチュードは私が一番学ばなければいけないものだと考えています。

 

今日はこれにておしまい。また明日。